- 相殺決済ブロックチェーンサービスCLSNetが発表
- 世界的なFX決済サービスを手掛けるCLSがIBMと共同でブロックチェーン基盤の(相殺決済)ネッティングサービスを提供するCLSNetを公表した。
- 拡まるブロックチェーン技術の普及
- IBMは、IBM Food Trust、we.tradeに続き、今年3つ目のブロックチェーン関連サービスの発表となる。今後、さらに多くの企業がこの技術を採用していき、あらゆる分野に波及していくことが期待される。
- 相殺決済(ネッティング)とは
- 複数機関の間における債務・債権を整理し、複雑化されている決済を簡略化する決済である。例えば、A社とB社の間で、複数の債権・債務が発生していた場合、それらを整理し、差額を求めることで、どちらか一方から他方に対する債務、または、債権としてまとめることができる。
CLSがIBMと共同でCLSNetを発表
世界最高峰のFX決済サービスを提供するCLSグループは、IBMと共に2年以上に渡って開発してきたブロックチェーン基盤の相殺決済(ネッティング)サービスCLSNetを公開、ゴールドマンサックスやモルガン・スタンレーを始めとする複数の有名金融機関がそのシステムの使用に踏み切ったことが明らかになった。
このCLSNetはIBMの技術的支援を得て、Linux FoundationのHyperledger Favricブロックチェーン上に構築されている。
CLSおよびIBMは、決済サービスに着目した2002年から提携を行い、FX市場における決済リスクを減少させる目的の元、15年以上も取り組み続けていた。今回のCLSNetの発表は、まさに念願のサービスが実現したことになり、その実現に至るために、ブロックチェーン技術が使われていることになる。
このプロジェクトが発表された2017年9月時点では、既述のゴールドマンサックス、モルガン・スタンレーに加え、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン、三菱東京UFJ銀行、シティバンクなどの有名金融機関が参画企業として名を連ねており、FX市場における大プロジェクトであったことがわかる。
業界内の問題解決へ
CLSの戦略および開発部門責任者を務めるAlan Marquard氏(以下、Marquard氏)は、今回の発表に対し、以下のように述べている。
私たちは、同分野の中でも初の試みとなる、分散型台帳技術プラットフォーム上で運営されるサービスCLSNetを公開できることに喜びを感じている。
そして、私たちが、FX市場において信頼性のあり、独特なポジションを確立し、業界内の問題を解決することに注力していることを象徴している。
当事者間で定期的に相殺決済を行っている企業も存在しているものの、一般的にそのプロセスは自動化されていなく、手動で全てのプロセスを行う必要があり、コスト面などからも相殺決済を使用していない企業も多く存在しているのが現状だ。採用をしていない企業は、主に新興国通貨との決済リスクや日中の需要流動性の上昇に繋がってしまうといった指摘もされていた。
そのような背景からも、今回発表されたCLSNetは、120以上の法定通貨に対応し、為替相場における相殺決済のレベルを向上させ、標準化させることを目的としていることから、企業の相殺決済への参入促進につながると考えられている。
Marquard氏は、このネッティングプロセスの標準化や自動化こそがコスト削減、効率化、ビジネスの成長に直接的する重要な動きとなる、と言及している。
普及しつつあるブロックチェーン技術
今回CLSNetの開発を担ったIBMは、サプライチェーンの透明化を進めることを目的として10月に開始されたIBM Food Trust、国際間取引の効率化を目的として7月に開始されたwe.tradeに続き、CLSNetが第三のブロックチェーン関連プロジェクトになる。
また、CLSNetに参画しているモルガン・スタンレーもビットコインのデリバティブ商品を提供する取引デスクを設置することを今年発表している。
ブロックチェーン技術を使用した消費者向けのサービスが台頭してきているのはもちろんのこと、IBMが提供するサービスのように企業を対象としたブロックチェーンソリューションが台頭してきていることは特筆すべきことであると言えるだろう。
実際、IBM Food Trustはフランスの大手小売企業Carrefourなど、金融以外の業界から企業がブロックチェーンを採用することにつながっている。
ブロックチェーン企業ClovyrのCEOを務めるAmber Baldet氏が述べたように、IT黎明期であった1990年代と同様、現状では、IBMのような企業に高いコンサルティング料を払える企業を中心として、ブロックチェーン技術が普及してきている。
そして、Baldet氏の言う通り、今後IT同様、中小企業や個人ビジネスに限らず、あらゆる分野への普及が期待される。
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