はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

東京地裁判決「ハードフォークで生じた新たな仮想通貨は顧客に付与する義務はなし」

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

分裂後の新仮想通貨は付与する義務はないとする判決

東京地裁の判決で、「仮想通貨(暗号資産)のハードフォーク(大規模アップデート)で生じた新しい仮想通貨を顧客に付与する義務はない」との判決が下されたことがわかった。2020年5月1日号の「金融・商事判例」の書籍に記載されている。

bitFlyer Blockchain代表取締役の加納裕三氏が言及した。 加納氏は、以下のように判決内容の要点および論点を整理している。

  • 取引所は、顧客とHFコイン(ハードフォーク後の新コイン)を付与することに合意していない
  • 利用規約に「付与する」とは書いていない
  • HFコインはハードフォーク時点の取引履歴が複製されただけで、売買の現実取引に基づいていない
  • 開発は、リプレイアタック対策やハッキング対策など簡単ではない
  • 交換業登録取り消しの恐れがあるにも関わらず、HFコインを扱う事前届け出は出されていない
  • 他のHFコインを上場していることは関係ない
  • 他のHFコインを金銭で返していることも取引所の個別判断で関係ない
  • 取引所はHFコインの会計処理を行っておらず、経済的利益はない

ユーザーを含め、賛否両論意見が分かれた今回の事例だが、裁判所の判例として重要な判決結果となりそうだ。(控訴中とあるため、高裁の判決にも注目)

ハードフォークと通貨分裂については、取引所の新規リスティング(上場)の問題から、replay-protection等技術的な問題が生じる可能性もある。また、分裂も小規模なものから大規模なものまで様々な状況が考えられることから、全てのハードフォークに取引所が対応することは現実的に厳しいとの見方もあった。

一方で、このような前提のもとで、日本の取引所がハードフォークに対応しないと決まったわけではない。加納氏も、「義務はなくても、リプレイアタックやセキュリティー対応の技術力があり、顧客保護のための諸々の手続きをしっかり行ってHFコインを付与する方針の取引所が選ばれる」と連続したツイートで述べている。

しかし、その一方で顧客側の不安についての指摘もある。

仮想通貨ハードフォークでチェーンが分岐した場合も、どちらのチェーンが”主要チェーン”として決定するかは非中央集権下で決定するため、当事者同士がメインチェーン通貨だと考えていたとしても、取引所側の採択次第で機会損失が生じる可能性や、取得ができない事例がユーザーの懸念点となることが予想されるためだ。

一定規模の通貨分裂となれば、オリジナル通貨に対して相応の価格がつくものもあり、依然として取引所側の明確な対応方針が求められていることに変わりはないだろう。

もちろん、個人のウォレットで管理し、ハードフォークの通貨に対応することも可能であるが、専門知識やセキュリティの懸念などを踏まえると、日本の取引所に預けたいといったニーズは多くある。そういった意味でも、加納氏が語る所定の手続きを行い、HFコインを付与する方針の取引所が選ばれるといったことは、今後より重要性が増すことが予想される。

これらの内容に関して、HashHubの平野淳也氏は以下のような見解を示している。

ビットコインキャッシュのハードフォークと通貨分裂の事例

2018年11月には、ビットコインキャッシュ(BCH)の敵対的ハードフォークに伴う2陣営によるハッシュ戦争の影響で、仮想通貨市場が暴落するなど大きな混乱を招いた。結果的に、アップデート内容について対立していた「Bitcoin ABC」と「Bitcoin SV」が別々のチェーンに分裂している。

通常のハードフォークはブロックチェーンのアップデートを指すが、この件のハードフォークではアップデート内容に関して双方の意見が対立したために、半強制的にチェーン・スプリットが発生し、HFコインが誕生した背景がある。

国内外の仮想通貨取引所やウォレットサービスでは対応方針が別れるなど、各国の法規制に基づき関連企業の苦悩を浮き彫りにした。多くの取引所はハードフォーク後のチェーン状況のリスクを危惧し、取引および売買や入出金は、ネットワークの安定が見られてから再開すると発表していた。

関連:BCHハードフォーク:新通貨付与に関する「仮想通貨取引所」対応一覧表

2019年3月には、国内大手取引所bitbankが取り扱い仮想通貨に係る「新通貨付与」の対応方針を発表。HFコインが付与されない事例について明記した。

ハードフォークで発生した新たな仮想通貨(トークン)に関しては、アップデートハードフォークに伴い、コミュニティが分裂し、ハッシュレートが別れる事で複数のブロックチェーンが両立する場合や、エアドロップなどによって保有ユーザーに対して新通貨が付与されるパターンなど複数の事例が存在する。

bitbankの新仮想通貨の付与判断に関しては、ハードフォークによって複数の新仮想通貨が発生した場合は、各新仮想通貨に関して、条件を満たしているか否かで付与の要否を判断することを明記した。

新仮想通貨について、replay-protection等、第三者による不正な移転を防止する措置が講じられている、又は講じることが可能であること

新仮想通貨に顧客資産を侵害する仕組みが講じられていないこと

新仮想通貨の有する機能が不法、不正な行為を誘引するものではないこと

取引の重複をリプレイ、または二重支払いと言い、そのリプレイが起きないために、プロテクトすることを「リプレイプロテクション」と呼ぶ。分岐したチェーンが相互に作用しないための重要なシステムだ。これが実装されていない状況では、通貨分裂した場合、不正送金(リプレイアタック)が行われるリスクを孕むことになる。

したがって、取引所によっては、ハードフォーク後の新通貨の開発状況(リプレイプロテクションの実装、独自のアドレスフォーマットの実装等)の実装を「通貨分岐」の明確な基準としており、関連通貨の取引再開基準としている。

bitbankでは、付与・取扱が困難であると判断した場合など「新仮想通貨の付与を行わない」事例もあるとしている。

国内で上場されていない「新仮想通貨」の取り扱いに関しては、金融庁の判断を仰ぐ必要もあることから「社内審査を通して取り扱いを決定、売買等のサービスを開始する場合は、付与または措置を講じた後に行う」とする。

HFコインの税区分

HFコインの税金がかかるタイミングについては、仮想通貨専門税理士・公認会計士 齋藤雄史氏のCoinPost寄稿記事で、以下のように整理された。

  • 付与された(分岐・分裂した)時点では、取引相場が存しておらず、同時点ではコインは価値を有していなかったと考えられる。つまり、付与時の時価は0だと捉えている。したがって、この時点では所得は発生しない。
  • 売却時:売却額全額について課税対象(HF後に買い増ししていたら取得価額は移動平均法を用いるのが相当)
  • 分裂後に当該コインを売却等した場合には、売却時価―取得価額(0円)という計算になるので、売却価額が全額課税対象になる。

関連:仮想通貨の税金がかかるタイミングと税金対策について解説

なお、地方裁判所の判決であるため、管轄を有する高等裁判所に上訴し、再審理を求めることができる。高裁や最高裁で覆る可能性があるという点には留意したい。

厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
05/18 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、企業のETH大量購入やアーサー・ヘイズのBTC100万ドル到達予測など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
12:49
UPCXが2025 Tokyo E-Prixスポンサーに 次世代決済とFanlinkの可能性を解説
UPCXが「2025 Tokyo E-Prix」のスポンサー契約を発表。世界標準決済を目指すブロックチェーンプラットフォーム「UPCX」と、ファン支援サービス「Fanlink」の特徴をCEO中野誠氏が解説した。秒間10万件の処理能力やグローバル展開の展望とは?
11:00
週刊仮想通貨ニュース|メタプラネット株価1340円到達の可能性に高い関心
今週は、仮想通貨ビットコインの専門家アダム・バック氏によるメタプラネットの株価試算、資産運用会社によるイーサリアム価格急騰の要因分析、空売り投資家ジム・チェイノス氏の投資戦略に関するニュースが最も関心を集めた。
05/17 土曜日
14:00
アブダビ政府系ファンド、ビットコインETF買い増しで保有額750億円突破
アブダビのムバダラ・インベストメントが第1四半期にブラックロックのビットコインETFを49万株追加購入。ゴールドマン・サックスは最大保有者として3000万株を保有。
13:05
ビットコインETFフェイクニュース事件、犯人に懲役14か月の判決
米SEC公式Xアカウントを乗っ取り、ビットコインETFについてのフェイクニュースを流した26歳の被告に懲役14か月の判決が下りた。偽情報で仮想通貨市場を混乱させたことが重大視された。
12:43
史上最高値を試すのは時間の問題か、米中貿易緩和も上値トライ失敗|bitbankアナリスト寄稿
米中関税115%引き下げ合意やインフレ指標下振れもビットコイン上値を抑える展開。アリゾナ州知事の暗号資産準備金法案への拒否権行使も影響。短期筋による損切り送金増加で売りをこなした可能性。史上最高値トライは時間の問題か。bitbank長谷川アナリストが週次相場分析を解説。
11:00
ビットコイン長期保有数1437万BTCに到達も、利確売り強まる=アナリスト分析
ビットコインの長期保有者が3月から5月にかけて利益確定を加速。支出利益率は71%増加し227%の平均リターンを記録。長期保有量は1437万BTCに達するも、市場サイクルの分配フェーズへの移行を示唆。
10:10
トランプ家のWLFI、民主党議員による調査要請を正式拒否
トランプ一族の金融企業WLFIが上院による調査を拒否した。政治的動機と批判し、同社は説明責任や米ドル優位性を指針としていると主張。倫理規定違反の疑惑なども否定している。
09:02
ETH・BTC比率が5年ぶり急騰、アルトシーズンの到来示唆か
イーサリアム/ビットコイン(ETH・BTC)価格比率が過去5年最低水準から38%急反発。ETFによる買い増し、取引所流入減少などの指標から需要増加・売却圧力低下が鮮明に。「極端な過小評価ゾーン」からの回復が示すアルトコインシーズン到来の可能性を分析。
07:50
ビットコインで利回り獲得、Solvがアバランチ基盤の新トークン発表
仮想通貨ビットコインの保有者にRWAの利回り獲得手段を提供するため、Solv Protocolはアバランチ上にSolvBTC.AVAXをローンチ。ローンチの目的や仕組みを説明した。
07:30
10億ドルのビットコイン投資を検討、米上場のシンガポール医療企業
シンガポールの医療企業バーゼル・メディカル・グループが10億ドル規模のビットコイン投資に関する交渉を開始。ストラテジー社に続く大規模企業BTC投資の新事例として注目される中、「革新的な株式交換契約」を通じてアジア医療企業最強の財務体質構築を目指す。
06:45
米裁判所、SECとリップルの和解案を「手続き上不適切」として却下 再申請へ
米連邦地裁がSECとリップルの和解申請を「手続き上不適切」として却下。民事訴訟規則違反が原因で、両者は適切な手続きでの再申請を迫られる状況に。
06:25
イーロン・マスクの『Kekius Maximus』切り替えでミームコインが2倍以上急騰
イーロン・マスク氏がツイッターのプロフィール画像とユーザー名をミームトークン「Kekius Maximus」に変更し、関連トークンが2倍以上急騰。昨年の900%上昇・急落事例に続くマスク氏のSNS活動による仮想通貨市場への影響力を示す展開に。
06:05
サウジ中央銀行、15億円相当のストラテジー株保有でビットコインに間接投資
サウジ中央銀行がセイラーのストラテジー社の株を25656株取得し仮想通貨ビットコインへの間接投資を開始したことが確認された。
05/16 金曜日
17:00
マスクネットワークとは?仮想通貨MASKの買い方・取引所まで徹底解説
Mask NetworkはSNS×Web3をシームレスに接続するSocial-Fiプラットフォーム。本記事では特徴とMASKトークンの買い方を初心者向けに解説します。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧