マクロ経済と金融市場
1日の米NY株式市場では、ダウ平均株価は前日比280ドル(0.9%)安と4日続落となった。ジャクソンホール会議でのパウエル議長の発言以降、これを補強するFRB高官のタカ派発言が相次ぎ、金融引き締めの長期化とリセッション(景気後退)リスクへの懸念が強まっている。
9月も金融政策判断に影響を及ぼす重要指標が目白押しであるが、中でも2日の21時30分(日本時間)に控える米雇用統計をはじめ、13日のCPI(米消費者物価指数)、21日(日本時間22日)の米連邦公開市場委員会(FOMC)発表は市場関係者の注目度も高い。
仮想通貨市況
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは前日比1.19%安の20,100ドルに。
軟調な金融市場を反映して冴えない動きであり、イーサリアム(ETH)も前日比2.39%安の1,555ドルと下落した。
大型アップグレードのThe Merge(ザ・マージ)を控え下値を買われる動きこそ見られるも、いかんせん金融マーケットの地合いの影響を色濃く受けており、改善しつつあった投資家心理はジャクソンホール会議を境に大幅悪化した。
それを裏付けるデータの一つが、デリバティブ(金融派生商品)市場における定量分析だ。
Arcane Researchが8月30日に掲載した月次レポートでは、暗号資産(仮想通貨)市場の先物取引がバックワーデーション(期近物が期先物に比べて高い逆鞘状態)で取引されており、Funding Rate(資金調達率)が2週間マイナス圏で推移する。
永久先物の建玉数やインバース型ビットコインETF(上場投資信託)の出来高も過去最高に達した。マクロ環境の悪化に伴いヘッジ需要が急速に高まっていることを示唆する。
ただし、中期目線では、Three Arrows Capital(3AC)やCelsius Network(セルシウス)の破綻で混乱に陥っていたレンディング市場の正常化を指摘。「仮想通貨特有の市場リスクは、今のところ解決されている」とも評した。
長期目線では、ジャクソンホール会議におけるジェローム・パウエル議長の発言要旨などから、来年にかけてもマクロ経済の逆風が吹くことを想定している。
その一方で、21億ドルの資産を運用するGalaxy Digitalの28日のレポートを引用し、再び200週移動平均線(200W MA)と実現価格を下回ったことを指摘。
「テクニカル分析、及びファンダメンタルズの観点から、中長期のビットコイン投資家にとって、積み立て投資(ドルコスト平均法)で保有量を増やすには絶好の押し目となり得ることが歴史的に証明されている」との見解を共有した。
関連:即実践できる、相場に左右されない積立投資|ドルコスト平均法とは
ビットコインはすでに、昨年11月の過去最高値(ATH)69,000ドルからおよそ-75%ものドローダウンを記録している。
BTC価格が200週移動平均線を下回った時期は、2015年の弱気相場をはじめ、2018年〜2019年のバブル崩壊相場の大底圏、2020年3月のコロナ・ショック、および2022年6月から現在までの数回しか事例がない。
Galaxyのレポートでは下値目処について、サイクルの安値(17,708ドル)と300W MA(17,256ドル)をサポートラインに挙げ、短期および中期の上値目標としては、実現価格 (21,652ドル)、60日移動平均線の(22,016ドル)、および25,000ドル(レンジ上限)を列挙した。
Galaxyは総括として、「持続的なインフレ及びドル高による金融政策の引き締めと相まって、世界経済が崩壊すればビットコインのようなリスク資産を圧迫する」と警鐘を鳴らしつつ、「これまでのような過剰なレバレッジの解消やビットコインマイナー(採掘業者)による保有残高減少(売り圧力低下)など、BTC/USDに影響を与える内因性要因はおそらくピークに達しており、これ以上のダウンサイドリスクは限定的」との見方を示した。
ETHのステーキング
なお、イーサリアムネットワークでステークされたETH量は、前年比2倍以上増加し、総供給量の11%以上を占める。
関心の高まりに伴い、ETHをステーキングした場合のAPR(年換算利回り)は約4%まで低下しているが、一方でネットワークにすでに数十万のバリデーターが存在する中で、大部分のETHがステークされておらず、成長途上であることを示している。
マージ直後にはステーキングの出金はできず、半年〜1年ほどの猶予期間があることが想定される。
関連:2部構成のイーサリアムマージ|9月6日予定の「Bellatrix」アップグレードとは
過去に掲載したマーケットレポート一覧はこちら