
短期的な価格モメンタムは弱化
オンチェーンデータ分析企業CryptoQuantは14日、最新の週間市場レポートを発表。10日のトランプ・ショック後、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)の短期的な価格の勢いは構造的に弱まっているが、大口投資家による買い増しがビットコインを支えていると分析した。
トレーダーのオンチェーン実現価格(短期保有者が最後にビットコインを取得したときの平均価格)である(11万5,000ドル)を継続的に上回れば、市場は力強さを取り戻し、上昇トレンドが再開する可能性が示されると述べる。
先週の状況については、過去最大級のレバレッジ解消イベントが発生し、ビットコインとイーサリアム(ETH)の建玉が210億ドル(約3兆円)減少したと指摘。米中貿易摩擦の懸念を受けて急激な清算が起こり、ビットコインは7%、イーサリアムは12%下落したと続けた。

出典:CryptoQuant
また、ビットコインの需要指標は、30日間で11万1,000BTCの減少を示しており、4月以来最大の減少幅になっている。CryptoQuantによるブルベア市場サイクル指標は弱気相場に転じており、価格上昇の勢いが弱まっていることを裏付けているとも述べた。
なお、ブルベア市場サイクル指標は市場参加者の含み損益の状況を数値化したP&LインデックスとP&Lインデックスの365日移動平均から相場の強気・弱気を判断するものである。
一方で、プラス面としては、ステーブルコイン流動性の増加とクジラ(大口投資家)による買い増しが引き続き堅調であることを挙げている。
ステーブルコインの流動性は拡大を続けており、USDTの時価総額は過去60日間で149億ドル(約2兆円)増加した。CryptoQuantは、これは1月以来の最速ペースであり、将来の市場回復を支える新たな資本余力をもたらすことが考えられるとしている。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
また、オンチェーンデータからは、10月8日より大口投資家による買い増しのペースが、過去1年間の平均的な増加量よりも高くなっていることが示唆されると指摘。クジラによる新たな買い増しを示し、歴史的には強気な構造的要因になると分析した。
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記事執筆時点では、ビットコインは10万9,000ドル付近で推移しているところだ。
これは、CryptoQuantが上昇再開の水準とみる11万5,000ドルを下回っている。また、Glassnodeは15日のレポートで、10万8,000ドルを継続的に下回る場合は、構造的な弱さを示す警告シグナルになるとの見解を示していた。
Glassnodeの提示した水準に近付いているところであり、今後の展開に注意したい。
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出典:CoinMarketCap
今週に入ってからビットコインETF(上場投資信託)は流出超過となっている。Glassnodeは、ETFへの流入が弱含みのまま推移する場合、ビットコインの上昇を支えてきた原動力の一つを損なうことになるとも分析していた。
CryptoQuantのプラットフォームでは16日、Arab Chainがビットコイン・マイニング企業の動きを報告。10月9日以降、マイナーはバイナンスに合計51,000ビットコインを入金しており、その価値は57億ドル(約8,600億円)を超えていると指摘する。
この一部が売却されるとみており、マイナーの行動がビットコイン保有から売却へと移行したことを示すと述べた。
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