ASIC業界の再編成
BitMEXの最新リサーチは16日、仮想通貨(暗号資産)ビットコインのハイスペック採掘マシンASICを製造する業界全体が再編する可能性を指摘した。
業界再編における主な理由として、数社に限られた競争や長くなるリターンの周期、経営問題などを挙げており、ASIC製造企業は最終的に2、3社だけが生き残るとの見通しを示している。
ASICの時代へ
ビットコイン採掘の黎明期では一般的なパソコンを含めたCPUやGPUが主なマイニング手段となってきたが、2013年にCanaanが世界初のASIC機器をリリースしたことを機に、マイニング専用の機械を中心とした専門分野として台頭してきた。現在では、GPUなどの機器は、ビットコインマイニングにおいて、淘汰されてきている。
ASICの誕生によって、2014年以降のハッシュレートにおける電力の消費量が指数関数的に低下し、計算力の能率は劇的に改善してきた。
Bitmain製の最先端機器S19 ProやMicroBT製のフラグシップ機Whatsminerがその例だ。
Bitmainの覇権弱体化
しかし、このマシン競争が継続的に拡大する見通しにも陰りが見え始めているとBitMEXリサーチは指摘する。
ASICが主流となる傾向のなかで、長い間長い間ASIC製造分野を支配してきたBitmain、MicroBT、Canaan、Ebangの中華大手4社の競争にも、再編の兆しが見え始めているという。
上図が示すように2017年〜2019年の業界シェアは、大手Bitmain(青)が最も高い市場シェアを占めていたが、その牙城も崩れつつある。
BitMEXリサーチによると、Bitmainの業界シェアの減少は、これまで香港でのIPO申請の失敗や経営陣の権力闘争のほか、機器の高い故障率など種々の外部・内部要因も影響している。高性能機器の出荷が行われていても、公表されたデータほどの性能が安定して出せないほか、根本的に故障しているケースがあるようだ。
一方で市場シェアを拡大しているのが、Bitmain最大のライバルとされるMicroBTで、2017年の7%から2019年の35%にドミナンスを拡大してきた。
MicroBTは中華系業者だけでなく、北米の採掘大手MarathonやBitfarmsからも大規模な受注を請けているのも強みだ。
直近1年ほど、マイナーの分布図も変化しつつあることも、これを後押ししている。ブロックチェーン分析企業TokenInsightが6月に公開した最新の報告書によると、2019年9月から2020年4月までの間、世界シェア1位の中国が占める割合が75.63%から65.08%に低下し、2位の米国は4.06%から7.24%へと増加。中国のマイニング世界シェアが減少、ハッシュレートが世界的に分散され始めている。
収益が減少傾向
採掘機器業者の再編を見るもう一つのポイントは、収益性の変化だ。BitMEXリサーチは、Bitmainの他、Canaanなどの収益も縮小しているとして、機器販売のトッププレイヤーの収益性悪化を指摘。特に、この2つの企業には、企業内部の構造および管理に問題があると説明している。
Canaanは、2019年に米ナスダックに上場した企業であるものの、新発売する機器が他社製品に比べ能率が劣っていることなどが影響して、マイニングの競争力の中で収益悪化に影響しているという。株価は上場初値を大幅に下回っており、年初来-60%超えを記録している。
BitMEXリサーチによる今後の市場シェア予想については、主要プレイヤーはBitmainとMicroBTが占めてくると予想、ASIC機器メーカーの寡占化の見通しを示している。
参考:BitMEXリサーチ