米SECコミッショナー、Hester Peirce氏インタビュー
米証券取引委員会(SEC)のHester Peirceコミッショナーは、ポッドキャスト「Unchained」で、暗号資産(仮想通貨)取引所BitMEXの告訴についての意見を述べた。米国規制のセーフハーバー制度やDeFiの可能性、トークン化社会についての考えも明らかにした。
BitMEX事件
今月初め、仮想通貨デリバティブ取引所のBitMEXに対し、その所有者への刑事告発を含む、大規模な法の執行が行われたことは、仮想通貨業界で大きな話題となった。マネーロンダリング対策(AML)や本人確認(KYC)などに関するCFTCのルールに違反し、未登録のプラットフォームを運営したことが主な理由とされている。なかでも、AMLに関しては、銀行秘密法にも違反したとして、アーサー・ヘイズCEO(先週退任を発表)らが米司法省から訴えられている。
SECは本件に直接関わってはいないが、Peirce氏は、この一連の動きは米国連邦政府が、仮想通貨業界に対してAMLやKYCの面で、明確で断固としたメッセージを発していると見ている。伝統的な金融機関もこの分野に関しては苦慮しており、多くの企業がトラブルに巻き込まれているとの考えを示した。
しかし、この事件は紛れもなく、仮想通貨業界へのメッセージであり、米国のユーザーが製品やサービスを利用する限り、米国の法律が施行されることになると述べた。
セーフハーバー制度とUnikrn
コミッショナーとして二期目の任期が承認されたPeirce氏は、仮想通貨に対するより柔軟な規制を呼びかけていることで知られ、業界では「クリプトママ」と親しみを持って呼ばれている。同氏が、仮想通貨による技術革新を阻害しないために提唱しているのが、トークンセールから3年の規制猶予の期間を設ける「セーフハーバー」制度だ。
先月、SECから告発され、610万ドルの違約金を支払うことで和解した、オンライン・ゲームプラットフォーム「Unikrn」の未登録証券の問題では、Peirce氏は異議を唱えている。インタビューでも、このケースについて、不正行為の疑いはなく、証券登録違反の疑惑のみが焦点だったにもかかわらず、会社の流動資産を剥奪するような行為は行き過ぎであり、規制のアプローチとして好ましくないとの意見を表明した。
トークンが証券として定義されるのかどうかの判断は簡単ではないため、証券登録はとても複雑な問題となっており、だからこそ、ネットワークの分散化のために規制の猶予期間を与えるセーフハーバー制度が必要だと、Peirceコミッショナーは主張した。そして、セーフハーバー制度が導入されていたとしたら、Unikrnのトークンは、規制に準拠していたことになっただろうと述べた。
この提案では、規制猶予の条件として、プロジェクトの詳細やコードのオープンソース化、開発計画などの情報を開示することが求められるが、Peirce氏は、今そのバージョン2.0に取り組んでおり、他のSECのコミッショナーを説得できることを期待しているとした。
DeFi分野から革命的な変化が起こる
Peirceコミッショナーは、DeFi分野の動きにも注目しているようだ。ガバナンストークンの分類について尋ねられると、その特性によってケースバイケースで考える必要があると述べた上で、DeFi分野について次のようにコメントした。
「DeFiの空間からは、大きな革命的変化が起こる可能性がある。。。(利用者自身が運営に参加する)非常に直接的な方法であるため、多くの点で規制構造に多くの点で挑戦することになるだろう。」
そのため、どのように規制するべきなのか、大変難しい問いに答えなくてはならないと述べた。
しかし、Peirce氏は、以前「DeFi自体が規制的な役割を果たしている」という発言をしている。その説明を求められると、実際にあるものを利用している人々自身が、その将来を決めるというコミュニティ基盤の決定方法は、政府による規制ではないが、一種の規制機能にあたるとした。
トークン化社会
SECのジェイ・クレイトン会長は、いずれ、すべての証券がトークン化される可能性を指摘した。Peirce氏もその考えに同意し、トークン化は自然な流れであり、ブロックチェーンは証券の管理に非常に便利な方法だと述べた。
しかし、そのルール作りやそれを支える技術面では多くの作業が必要な上、業界全体が動くことが求められるので、時間はかかるかもしれないとした上で、何かしらの「出来事」が変化をもたらすこともあると語った。
そして、昨今のコロナ禍を例に上げ、「技術に頼ってできることが増えるほど、本当に悲惨なことが起きた時に対する備えができることを認識させてくれる機会になった」と述べた。
だからこそ、ブロックチェーンは今の時代に適していると考えていると結んだ。