「すでに仮想通貨サービスへの需要は高い」
決済大手PayPal(ペイパル)が11月2日の決算発表後、開始したばかりの暗号資産(仮想通貨)サービスに対するユーザーの需要がすでに高いことを明かした。
需要に応えて、同社は一週間あたりの仮想通貨購入制限を1万ドルから1万5000ドル(約157万円)に引き上げるほか、また今後CBDC(中央銀行デジタル通貨)にも取り組んでいく意向を発表した。
現在は、まだ米国のペイパルユーザーのうち仮想通貨サービスへアクセスできるのは10%のみだが、今後12月までに米国の他地域にもサービスが拡大されるとしている。
PayPalの仮想通貨サービスは、来年前半にもモバイル決済アプリ「Venmo」でのリリースも控え、海外ユーザーの利用も可能になる見込みだ。
ペイパルCEOのDaniel Schulman氏は「当社の各拠点は仮想通貨のサービス機能を提供することを強く望んでいる」と説明、ユーザーのウェイティングリストは、期待の2〜3倍で、すでに仮想通貨を購入した人は1日に数回ウォレットを開いて、投資状況を確認していると語った。
ペイパルの仮想通貨取引サービス
現在ペイパル上で取引できるのはビットコイン、イーサリアム、ライトコイン、ビットコインキャッシュの4銘柄である。
来年上旬より、ユーザーがこうした通貨を2600万店のペイパル加盟店で決済に使用できるようになる計画だ。
一方で機能には制限もあり、一般的な仮想通貨取引所とは違って、ペイパルで購入した仮想通貨はペイパルウォレットから出金することがはできず、外部ウォレットから仮想通貨を入金することもできない。将来的に、こうしたことが可能になるかは発表されていない。
それでもペイパル参入は、より広範な一般ユーザーが仮想通貨に触れる機会を生み出す重要なステップだとして仮想通貨業界に歓迎されている。
ビットコイン強気派の著名投資家マイケル・ノボグラッツ氏は、すべての銀行が仮想通貨サービスで競争を始める起爆剤になり得るとコメントした。
中銀発行デジタル通貨(CBDC)にも取り組む意向
ペイパルは仮想通貨取引サービスだけではなく、中央銀行デジタル通貨(CBDC)にも取り組んでいく意向を示している。
CEOは「世界は物理的なものからデジタルへと急速に移行しており、今後デジタル通貨の重要性、機能性、注目度が高まることは間違いない」として、CBDCについても、現時点での疑問は「いつ、どのように発行されるか」であり、「発行されるかどうか」ではないと指摘している。
また、CBDC発行に際してペイパルは、その決済ネットワークの規模と卓越性を通じて、既存の決済システムとの相互運用性や、商業での受け入れ促進などの面で支援できるとアピールした。
ペイパルの既存プラットフォームや新たなデジタル基盤は、貨幣の管理や移動をより効率的、低コスト、高速で行うことに役立つとしている。
クレカ最大手VISAも仮想通貨分野を始動
決済サービスでは、クレジットカード最大手VISAも、仮想通貨分野に乗り出し始めている。
コインベース等の仮想通貨企業と提携してのVISAカード発行、カストディ企業アンカレッジへの投資、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の政策提言に関する協力など、多方面に渡って活動中だ。
VISAのネットワークや専門知識を活用して、中央銀行や民間のステーブルコイン発行者に貢献することができるとしている。
2019年には、CBDCの発行に適用できる、中央銀行向けの「デジタル法定通貨」の特許申請を提出した。
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