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ビットコイン高騰でマイニング(採掘)の環境問題が再浮上、今後の課題は?

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英メディア、仮想通貨の電力消費問題が懸念視

今月8日にテスラ社が総額1550億円相当の暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)購入したことが判明して以降、仮想通貨懐疑派からは、マイニング(採掘)の環境問題が懸念されている。ビットコインが実際に消費する電力と環境に与える影響、その課題などについて考察する。

懐疑派(大手メディアなど)の指摘

仮想通貨市場が上昇相場に転じ、テスラ社が大量のビットコイン購入が報道された後からビットコインの環境への影響に関する懸念が再度浮上し始めた印象は否めない。

英フィナンシャルタイムズは先週14日、テスラ社のビットコイン購入を「愚劣」と批判するオピニオン記事を投稿。

記事内ではオランダの経済学者であるAlex de Vries氏はビットコインが年間で78TWhの電力を消費すると指摘し、南米チリの年間消費電力20TWhを大きく上回ると説明。また英ケンブリッジ大学の分析ではビットコインの年間消費電力だとする121Twh結果も紹介した。

ビットコインは「国家」ではない為単純比較はできないが、世界各国の電力消費量と並べた際にはアルゼンチンやオランダ、アラブ首長国連邦(UAE)を上回りTOP30にランクインする規模だという。

出典: Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Index

またBTCマイニングが盛んな中国では石炭による火力発電を用いた大量のマイニングが行われていることから、環境問題に対する姿勢が評価されているテスラ社がビットコインを購入するのは環境への影響を重視したESG型ポートフォリオに入れる理由を下げるとの主張があった。

2月に入り、毎週のように過去最高値を更新し続けるビットコインの環境問題について、大手メディアBBCも仮想通貨のマイニングを懸念視する記事を先週公開していた。

仮想通貨の利用する電力などを追うツールを提供する英ケンブリッジ大学の研究者であるMichel Rauchs氏はBBCに対して「ビットコインの価格上昇に伴いマイナーの稼働率が上がるのは元来のデザインによるもの」だと述べ、BTC価格が著しく下がらなければ今後もビットコインの電力消費量は今後も上がると説明している。

仮想通貨界隈の反論

米国の資産運用企業Ark Invest社の仮想通貨アナリストYassine Elmandjra氏はマイニングがビットコインの「トラストレス」な(中央集権的な機関に依存しない)環境を保っていると説明。

また米ドルと違い、ビットコインの本質的な価値は生産コスト(≒マイニングに掛かるコスト)の基盤の一つでもあると同氏と指摘した上で、ビットコインの電力コストは世界的に見れば伝統的な銀行システムや金(ゴールド)の採掘より効率的だと述べた。

ビットコインは価値の保存手段として「デジタル・ゴールド」と頻繁に称され、金(ゴールド)と頻繁に比較されるが、Elmandjra氏が述べた通り2つのリスク資産には他にも環境汚染の観点から違いが指摘されている。

ゴールド(金)の環境への影響

南西太平洋の島国であるパプアニューギニアやインドネシアでは金などの鉱物の採掘を行う企業が有害な鉱山廃棄物を直接海に流している実態もある。また2016年に公開された論文によれば、鉱物から金などの抽出処理が施される過程で、採掘された鉱物の99%が廃棄物として処分されていることがわかっている。

また仮想通貨界隈で頻繁に用いられる論点としては、実際の移動には時間と費用(そして検閲)を多く要する金と違い、ビットコインはデジタルで尚且つ第三者機関の検閲を得ず、価値を移動できるのも魅力とされている。

課題は持続可能なエネルギー利用への移行

仮想通貨マイニングの電力消費に対する懸念はFUDになりかねない側面がある一方、大手メディアなどが指摘する通りマイニングに利用される電力の元を改善する余地はありそうだ。

環境保護を訴える国際的な自然保護団体(NGO)であるグリーンピースの英国部門のIT責任者Andrew Hatton氏は仮想通貨の課題は「21世紀の技術が未だに19世紀のエネルギー源で動いている点」だと指摘する。

ビットコインの上昇する電力の消費量は仮想通貨の発行と維持に要されるデータ処理の需要から来ている。急増する電力の消費はまだ大きな問題の初期症状に過ぎない。

世界のデータセンターの電力量において、再生可能エネルギーの消費は約20%に満たない点だ。

人権問題が国際社会から批判される新疆ウイグル自治区における石炭火力発電によるマイニングのイメージが強い中国だが、西南部の四川省では、豊富な水資源を利用した水力発電が盛んである。また風力発電などの開発も進められており、発電量の25%以下が再生可能エネルギーによるものだ。

記録的な寒波に襲われ、大規模災害宣言が発令された米テキサス州でもここ数年間で仮想通貨の採掘事業が盛んになってきている。石油事業で栄えた歴史を持つが、米国エネルギー情報局(EIA)の調査によれば、テキサス州の電力の20%が再生可能エネルギーの一種である風力発電にからきている。

消費電力の供給元が課題であるのは否めないが、同時にビットコインはジェネシス・ブロックの生成から12年経ったばかりであることから今後このようなエネルギー環境は変わっていく余地は十分あると言える。

トランプ政権下ではパリ協定から脱退を表明していた米国も、バイデン政権下では一転して就任1週目にして復帰、主要政策の一つとして2050年までの「二酸化炭素排出量ゼロ」宣言するなどグリーン戦略に本腰を据えている。

また環境政策では世界に遅れをとっていると指摘された日本政府も昨年12月、2050年までの「カーボンニュートラル」実現に向けた税額控除案などを追加経済対策に盛り込んでいた。

国際社会でも国連主導のSDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けて再生可能エネルギーなどがさらに重要視されていく中で、仮想通貨業界でも持続可能なエネルギーの利用がさらに必要となるだろう。

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