機関投資家にとってのビットコイン投資
世界有数のヘッジファンド「Bridgewater Associates」が、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)の「価値の保存手段」という側面をさらに掘り下げるポッドキャストを公開。主に機関投資家の視点から、ビットコイン投資のリスクと可能性について語った。
創業者であるレイ・ダリオ氏は、一貫してビットコイン投資に慎重な立場を貫いているが、ビットコインは「とてつもない発明だ」と発言するなど、評価する姿勢も見せている。また、同社がビットコイン関連ファンドを検討していることが明らかになり、今後の動向が注目されている。
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現在の金融環状況が影響
同社の投資リサーチ部門を統率するRebecca Patterson氏は、ポッドキャストで、現在、ビットコインの注目度が高まっている理由は、ビットコインそのものとは関係ないと話を切り出した。
先進国の市場では特に、多くの中央銀行が大規模な金融緩和を継続しているため、現金の価値が下落するリスクを恐れた投資家が、「新たな富の保存手段」を探し始めていると指摘。ビットコインがその役割を果たすことができるのか、という点から、「価値の保存手段」に求められる特質を、金(ゴールド)と対比しながら説明した。
- 限られた供給量:時を経ても購買力を維持
- 携帯と交換が容易であること (デジタル化された金ETFで可能)
- 価値のあるものと認められた長い歴史
供給の面ではビットコインには2,100万BTCという発行上限と、半減期による供給量の調整がある。また、デジタルデータであるビットコインの取引や送金が容易なことは自明の理だ。そのため、ビットコインは「デジタルゴールド」であるという主張が生まれた。
しかし、歴史面から見ると、紀元前から取引されてきた金に対し、ビットコインはその誕生から12年という短い年月しか経ていない。そのため、Patterson氏はビットコインがインフレヘッジ、または分散投資の手段として有用なのかどうかは、「自信を持って予測できない」と述べた。
さらに、価格の変動性という点では、主要先進国通貨の10倍以上のボラティリティを持ったビットコインは、今のところ、「個人投資家向け」の市場規模であり、主に投機目的に利用されていると指摘。ただし、時間の経過とともに、ビットコインが普及するにつれ、流動性が高まり、ボラティリティが低下する可能性もあると付け加えた。
投資インフラおよび規制リスク
また、Patterson氏は投資のインフラという面では、ビットコインを取り巻く環境はまだ未熟だと指摘。「ボラティリティと連動する流動性」は改善されつつあるものの、他の資産に比べ、まだかなり限られていると述べた。
さらに機関投資家にとって最も大きなリスクの一つである規制の不確実性に言及。仮想通貨の規制を困難にしている要因は、貨幣やコモディティ、証券のような役割を持つものなど、その機能が多岐にわたることであり、また市場の変化のスピードが激しいことだと指摘した。そのため、全ての仮想通貨に対して単一の規制で対応することは難しく、規制当局の対応が追いつかない事態を生んでいると現状を分析した。
プライベートなデジタル通貨が、法定通貨の地位を脅かす可能性を恐れる為政者も多いと主張。その好例が中国で、仮想通貨に対するより強硬な規制を課す政策をとり、さらに政府発行のデジタル通貨を普及させることで、通貨のコントロールを維持しようとしているとPatterson氏は指摘した。
一方、このような規制環境が米国で実現する可能性は非常に低いと、同氏は考えているようだ。米国の規制環境は、明確性を欠くと批判されることも多いが、規制整備がゆっくりと進展することで、最終的にはデジタル資産への信頼が高まると主張した。そして、このような進展は長期的に見ると、ビットコインにとって朗報となるだろうと付け加えた。
デジタルゴールドになる可能性
Patterson氏はさらに、機関投資家がポートフォリオを分散化するにあたり、金はその効果が証明されてきたが、ビットコインについての結論は、まだ確実に出せる時期ではないと述べた。
また、流動性の面では、ビットコイン市場は金市場の約10%、マーケットの限られた鉄鉱石市場に比べても、まだ半分の規模で、大口の機関投資家が容易に売買できるポジションを取れるかという点では、非常に限られていると指摘した。
このような点を総合して考慮すると、今のところ、ビットコインは、機関投資家にとって価値の保存手段となるには至っていないと結論を導き出している。
しかし、流動性や規制などの課題が解決された場合、ビットコインはデジタルゴールドになる可能性があり、ビットコインへの投資は「将来へのオプション」を買うようなものだとまとめた。