CoinPostで今最も読まれています

分散型IDソリューションとは|オントロジーとThe Blockが共同レポートを公開

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

オントロジーとThe Blockの共同レポート

「信用の再定義」をミッションに掲げるオントロジー(Ontology)が、仮想通貨メディアThe Blockと共同で分散型ID(アイデンティティ)ソリューションに関するレポートを執筆。本記事では分散型ID管理システムの利点を中心に、同レポートを概説する。

既存のIDフレームワークに付随する課題

そもそもID(身分証明書)とは、広義には個人が他者や組織へ共有する情報を意味し、政府発行の公式IDからソーシャルメディア上でのIDに至るまで、様々な形態およびサイズで存在している。IDに含まれる内容にかかわらず、一般的にアイデンティティ管理の枠組みは、IDの発行者、保有者および検証者という3つの当事者により構成されている。そしてこの枠組みは、上記の当事者たちが互いに信頼し合うことにより機能している。

日本における車の免許証発行を例に三者の関係性を見てみると、免許を付与している都道府県公安委員会という機関が発行者、免許を受け取るドライバーが保有者、発行された免許証を使用して保有者の身元を確認する人または組織が検証者となる。この例において検証者は、IDが都道府県公安委員会から発行されていることを信頼してIDを検証する。また保有者も、都道府県公安委員会が適切に個人データを保護してくれることを信頼している。

このような信頼を基盤にしたアイデンティティ管理システムにおいて、課題の一つだと考えられているのが、サービス提供者(ID発行者)が「無料」を装ってサービスやIDを提供し、その過程で入手した顧客(ID保有者)のデータやオンラインでのアクティビティ情報を収益化していることだ。特にインターネット上では多くのユーザーが、ソーシャルメディア・プラットフォームや金融サービス業、医療サービスに至るまで、サービスを提供しIDを検証してくれるあらゆる組織に対し、見境なく個人データを提出している傾向がある。

この構造においては、データが一箇所に集中しているため、ハッカーによる攻撃を受けやすくなっている。そのため企業がデータ漏洩防止にかけるコストが、必然的に高くなってしまう。

分散型IDソリューションとは

このような課題解決の糸口ともなりうる概念が、分散型ID(DID:Decentralized identity)だ。分散型IDとは、ブロックチェーンおよび暗号学を活用した、デジタルなID発行および検証を意味している。この仕組みでは、IDへアクセスするには秘密鍵が必要であり、その秘密鍵はID保有者しか保持していないため、ID保有者は、誰にいつ自身のID情報を共有するのかを、より細かく選択できるようになる。要するに、個人がID管理権を完全に掌握できるシステムだ。

また、デジタル署名を使用して暗号学的にIDを認証するため、認証情報の偽造が格段に難しくなる。

分散型ID管理を支えるDID

分散型ID管理システムでは、既存の集権的ID管理システムとは異なり、分散型識別子(DID; Decentralized Identifier)が利用されている。アイデンティティ(Identity)および識別子(Identifier)は混同されがちだが、アイデンティティとは「同一性、そのモノや人が何であり、何でないか」、識別子は「アイデンティティを識別または同定するために用いられる符号や数字列」を意味している。一般的に「ID」と呼ばれているのは、後者の方だ。

分散的な方法で識別子をIDと紐付ける場合、ブロックチェーン基盤のIDを使用して、ID保有者をブロックチェーン上の公開鍵アドレスとリンクさせる。DIDには、以下の4つの特性がある。

  • 変更不要なため恒久的
  • メタデータを参照可能
  • 秘密鍵でトランザクションに署名することにより管理するため、暗号学的に検証可能
  • 発行や関連データの保存に中央集権型登録機関が不要であり、分散化されている

DID発行の流れ

出典:The Block

DIDの利点

DIDを活用することにより、ID発行者、保有者および検証者は、相互にその利点を享受できると考えられている。

発行者の観点から見ると、物理的な偽造防止にかけるコストを削減することができる。保有者は、既存システムよりも強固なID管理権を掌握できるため、誰にいつどのような条件下でアイデンティティを開示するかを選択可能になる。また検証者側についても、提示された認証情報の正当性が立証されているため、手作業でのID認証、および顧客の機密情報保存に伴うコストやリスクを軽減することが可能だ。

これに加え、分散型IDシステムでは、情報は分散的な方法でスマートフォンなどのローカルデバイスに保管されるため、中央集権型のデータ保管に伴うリスクも軽減される。その他、このような分散型のデータ保管構造では、無数の個人情報を巨大なデータベースに格納している中央集権型システムとは異なり、なりすまし犯罪のリスクも限定的となる。

分散型IDソリューションによる価値創造

分散型IDエコシステム内では、様々なステークホルダーの参加が予測されているが、実際にこのエコシステムが拡大および普及した場合、以下の分野における価値創造が見込まれている。

分散型IDエコシステム

出典:The Block

ID保有者

分散型IDソリューションによる価値創造の恩恵を最も受けると考えられているのが、当然のことながらID保有者だ。DIDにより、ブラウザ履歴や消費者としての嗜好データ、医療データなどの個人情報開示にまつわるコストが補償される。

テクノロジー企業

ウォレットや検証サービスを提供しているテクノロジー企業も、分散型IDエコシステムが拡大した際には、経済的利益を得るだろうと予測されている。例えば、SaaS(Software as a Service)企業Civicのように、他企業に対してID検証ソリューションを提供し、固定レートまたは利用毎にサービス使用料を課すことにより、収益化が可能だ。

ブロックチェーントークン

トークンのユースケースやトークン設計はプロジェクトによって異なるが、概して分散型IDエコシステム内でのトークンは、アプリケーションの利用促進、アイデンティティおよびデータネットワーク間での価値移転、ならびにガバナンスなどに利用されている。このようなトークン機能を備えたウォレットやIDネットワークが普及し、利用が増加した場合、トークンの価値も必然的に上昇すると予想される。

トークン発行プロジェクト

出典:The Block

ブロックチェーン関連のコンサルティング企業

同様に、ブロックチェーン関連のコンサルティング企業でも、分散型IDエコシステム拡大により、コンサルティングサービス料からの増益が予測される。マイクロソフトやアクセンチュア、IBMなどの大手企業が、独自の分散型IDソリューション開発の先陣を切っている一方、 EvernymやConsensysなどの開発企業は、他社の分散型IDインフラ構築をサポートしている。

ブロックチェーン

DIDが登録されているブロックチェーン、特にDIDに特化したブロックチェーン自体も、エコシステム拡大の恩恵を享受するだろうと考えられている。分散型IDソリューションは、ブロックチェーンまたは分散型台帳で、円滑にDID発行および検証が行われなければ機能しない。DID発行にはブロックチェーン上でのトランザクションが不可欠であるため、DIDが普及するにつれ、そのブロックチェーン上でトランザクション手数料の支払いに利用されているネイティブトークンの価値も上昇する可能性が高い。

関連:自己主権型アイデンティティガイド|オントロジー(Ontology)寄稿

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
08:45
ソラナJupiter、DEXモバイルアプリ5月公開予定
既存のUltimateウォレットは5月22日から利用できなくなるため、その前に仮想通貨の一時的移転(PhantomやMagic Edenウォレット)を推奨した。
08:10
米国のイーサリアムETF上場申請、5月承認は見込み薄か
申請中の仮想通貨イーサリアム現物ETFの多くは5月に最終判断を迎える予定だが、多くのアナリストは承認の確率が低いと予測。背景には、イーサリアム財団への任意捜査で米SECがETHを有価証券に分類しようとしている点や、ビットコイン現物ETFが承認されてからまだそれほど時間が経っていない状況などがある。
07:10
ビットコインの機能を拡充する新提案が公開
仮想通貨ビットコインのブロックチェーン上でスマートコントラクトなどを実現する開発提案がBIP-420として公開。以前から関心を集めている提案の内容が改めて説明された。
06:35
バイナンスアプリの削除、フィリピン当局がアップルとグーグルに命令
フィリピンはバイナンスの顧客基盤における重要な構成国だが、同SECは2023年11月以降、バイナンスを投資に利用しないよう国民に積極的に警告していた。
05:50
エルサルバドルの国営ビットコインウォレット、ハッカーがコードを流出
今回の漏洩は、4月上旬に報告された510万人のサルバドル人の個人情報リークを含む、一連のChivoウォレット関連のハッキングに続くものだ。
04/23 火曜日
19:00
メゾンマルジェラ MetaTABI NFT発売
メゾンマルジェラがMetaTABI NFTを一般販売開始。デジタル専用設計のタビシューズはThe Fabricantとのコラボで、限定版タビブーツとレザーウォレットが付属。今後のWeb3ブランドイベントにも参加可能。
18:00
ライフカードVプリカ 仮想通貨で購入可能に
ライフカードが暗号資産(仮想通貨)決済サービス事業者Slash Fintechと提携。2024年5月15日から「Slash Vプリカ SHOP」でステーブルコイン等を使ったVプリカギフトの販売を開始する。インターネットショッピングやオンラインゲーム等、デジタルサービスでのプリペイド決済が拡大する見込み。
14:00
ベネズエラ、石油取引で仮想通貨使用を加速か
ベネズエラの国営石油会社PDVSAは原油と燃料の輸出において、暗号資産(仮想通貨)の利用を増やす計画だ。背景には米国による制裁再発動がある。
13:00
SEC弁護士2名が辞任、「重大な権力乱用」と非難受け 
米仮想通貨企業Debt Boxに対する訴訟において、連邦地裁が「重大な権力乱用」を理由に米国証券取引委員会に制裁を課したことを受け、同委員会の担当弁護士2名が辞任したことがわかった。
12:00
「スイス中銀はビットコインを準備資産に持つべき」2B4CHが提唱
スイスの仮想通貨擁護団体「2B4CH」は、スイス国立銀行がビットコインを準備金として持つことを提唱している。国民投票を目指す計画だ。
11:00
米大統領候補ケネディJr氏、ブロックチェーンによる国家予算監督を提唱
米大統領選候補のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は21日、米国の国家予算をブロックチェーンに記録して透明性を高めるという考えを披露した。
10:12
NY証券取引所、取引時間の延伸を検討か
仮想通貨と同様に株式等を24時間取引できるようにすることのメリットなどを、ニューヨーク証券取引所が市場参加者に調査していることがわかった。調査の概要が明らかになっている。
09:25
Xverseウォレット、ビットコインRunes機能対応
XverseはOKXのOrdinalsマーケットプレイスや、Magic EdenのビットコインNFT電子市場で利用可能だ。ライバルの仮想通貨ビットコイン専用ウォレット「UniSat」もRunesに対応済み。
08:00
FTX、ロックされたソラナを個人投資家参加のオークションに
FTXは4月上旬ロックされたSOLを清算するために、高割引として、2,500万~3,000万の仮想通貨SOLを約19億ドル相当で売却。これは、1トークン=64ドルの安値だったが、当時の価格は約175ドルだった。
07:15
スクエニ「シンビオジェネシス」、世界展開をアニモカJPが支援
スクエニのNFTコレクティブルアートプロジェクト「シンビオジェネシス」の世界展開を支援するとアニモカブランズジャパンが発表。400社超のWeb3企業に投資するアニモカブランズのネットワークも活用する。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
2024/04/24 11:30 ~ 13:30
その他 オンライン
2024/04/25 ~ 2024/04/26
東京 国立新美術館
2024/04/27 10:30 ~ 20:00
東京 東京都渋谷区
重要指標
一覧
新着指標
一覧