ワイオミング州知事、コンセンサス登壇
暗号資産(仮想通貨)企業に友好的な施策で知られる米ワイオミング州のマーク・ゴルドン知事は25日、大手メディアCoindeskの主催する大型カンファレンス「Consensus」に登壇した。
Consensus(コンセンサス)は米ニューヨークで2015年から開催されている大型カンファレンス。2021年はコロナ禍の影響で、オンラインでの開催がメインとなっているものの、例年では1万人以上が集うイベントだ。
4月末には自律分散型組織(DAO)の法人化を認める法が成立したワイオミング州は、仮想通貨に友好的な政策を取ってきた州政府として他の州政府からも成功例として取り上げられている。
ゴルドン知事は「引き続き起業家にとって新たなシステムの構築を促進する土壌を保証していきたい」とワイオミング州の最先端技術に好意的な姿勢を維持すると言及。
ワイオミング州に負けじと、仮想通貨規制を導入する州も散見されるが、ゴルドン知事は「我々はまだ上にいく」とコメントした。先行者の地位は時には難しい時もあるものの、「我々はリーダーだ」と語った。
多くの州はニューヨークやマイアミ、デラウェアなどに注目しているが、実はワイオミング州では多くの先駆的な取り組みが行われている。
さらに、ゴルドン知事は同時に、自身が仮想通貨を保有していると発言。過去に同州の仮想通貨政策の立案に貢献してきたケイトリン・ロング氏も初耳だと驚きを示した。
GOVERNOR GORDON just confirmed that he owns #cryptocurrency personally. I didn't know that!🤠😉 @GovernorGordon @CoinDesk #Consensus2021 pic.twitter.com/qtaaJmpdAN
— Caitlin Long 🔑 (@CaitlinLong_) May 24, 2021
コンセンサスでは、著名投資家のレイ・ダリオ氏も自身のビットコイン保有を明かし、注目を集めた。
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先駆的なワイオミング州
ワイオミング州は米国の中でも仮想通貨やブロックチェーン技術に対して、一際先進的な政策を進めてきたことで知られている。代表的な例では、特別目的預託機関(SPRI)による仮想通貨の所有や、いわゆる「仮想通貨銀行」の認可等がある。
20年9月には大手仮想通貨取引所クラーケンが、同州からKraken Financialという仮想通貨の入出金も認める銀行の認可を受けた。また、今年の4月下旬には自律分散型組織(DAO)の法人化を正式に認める法案が成立した事例がある。
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最初に仮想通貨に関する州レベルでの規制を導入した例ではニューヨーク州の「ビットライセンス」が挙げられるが、仮想通貨に厳しい規制が主だったため、現在マイアミ市やテキサス州、ケンタッキー州、ネブラスカ州など友好的な州単位での仮想通貨政策を進めたのはワイオミング州と言っても過言ではない。
ワイオミング州の強みとしてゴルドン知事は州政府の「軽快さ」にあると指摘。2018年から銀行とブロックチェーンのシナジーに着目してきた経緯がある。
企業誘致の利点
ワイオミング州の先駆的な仮想通貨規制は、実際に複数の大手仮想通貨企業の誘致に至っている。
仮想通貨カルダノ(ADA)の開発に携わるIOHKは20年2月、ワイオミング大学のブロックチェーン研究開発ラボに50万ドル(約5,400万円)の寄付を行い、カルダノ研究センターを設立。21年2月には、XRP(リップル)を駆使した送金ソリューションを提供する米リップル社もワイオミング州で事業登録を行なったことがわかった。
ゴルドン知事は仮想通貨に関する規制を明確することがブロックチェーン企業の誘致につながると述べ、イノベーションの拠点になることで、州内の雇用創出につながると語った。
政府発行のデジタル通貨に懸念
保守層が多いワイオミング州で、自身も共和党に所属するゴルドン知事は「小さな政府」にも重きを置いており、州発行のデジタル通貨ではなく、パブリックな仮想通貨の促進を後押ししている。この動きは2019年に可決した特別目的預託機関(SPDI)の法からも伺える。
一方、中国のデジタル人民元(DCEP、e-yuan)の進展やインフレーションが続く状況を背景に、以下のように懸念も示した。
デジタル人民元などの政府系コインが(経済)システムを急に圧倒することに深い懸念を抱いている。
ビットコインを保有して、ステークすることができれば、最終的には経済はより強固になるだろう。
ケンタッキー州やネブラスカ州、テキサス州など、仮想通貨に友好的な施策を進めている州は保守派が多い傾向が散見されており、仮想通貨やブロックチェーンの分散性や、P2P取引と言った個人の自由などの観点からも注目されていると言えるだろう。