フィンテックが主流になる時代
先週、6兆円規模の資産を運用する英大手ヘッジファンド、マーシャル・ウェイス(Marshall Wace)が、ブロックチェーン技術ならびに暗号資産(仮想通貨)分野へ投資する可能性が報じられた。
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仮想通貨企業を対象としたポートフォリオ構築・管理を率いるのは、香港に拠点を置くマーシャル・ウェイス・アジアのアミット・ラジパル(Amit Rajpal)最高経営責任者。ラジパル氏は金融情報メディア、ブルームバーグのインタビューで、フィンテック分野への投資を取り巻く状況について語った。
マーシャル・ウェイス社が、仮想通貨やブロックチェーン技術を含むフィンテック分野へ注目するようになったのは約1年前で、「テクノロジーを活用し、金融サービスを再設計する」時代から、「金融システムの基盤構造を変えて、金融サービスを定義し直す」時代に移行しつつあるとの結論に至ったためだという。ラジパル氏は、今後はフィンテックが金融システムの主流になるとの考えを明らかにした。
そのため同社としては、上場しているフィンテック企業と決済企業に対する投資を継続するとともに、上場前の企業(後期ステージ)に投資するアプローチを採用するとのことだ。
投資機会
ラジパル氏は、現在、金融サービスは固定回線の時代からスマートフォンの時代へと移行する節目にあるが、多くの投資家はこの変化を認識していないと指摘。このような金融システムの移行は未だ黎明期にあるため、不確定要素が多く、投資家の意欲が削がれているという。
しかし、常に変化が激しく「一筋縄でいかない」新たな分野こそ、投資家にチャンスをもたらすと主張した。
投資機会に関しては、以下の三つの分野が考えられるが、機関投資家と個人投資家ではアクセスできる投資が異なるため、個人投資家向けとして有望なのは、仮想通貨とNFTだろうと述べた。
- 仮想通貨へのアクセスを提供する消費者向けモデル(取引所など)
- エコシステム構築のためのインフラ(決済アプリ、スケーリング、規制対応など)
- 分散型金融(DeFi)
インドに注目
マーシャル・ウェイス社のデジタル資産分野の投資戦略では、金融サービスにおけるブロックチェーンの応用と金融インフラにおける決済を優先するとラジパル氏は述べている。
その意味で、インドは同社が最も注目している国だという。インドでは、決済全体に占めるデジタル決済の割合は小さく、また金融包摂も進んでいないが、適切なインフラが整っていると指摘。そのため、新たなテクノロジーの採用により、規模の拡大が急速に進み、大きな発展が望めると考えているようだ。
ラジパル氏によると、投資家層は、これから起こる変化に対する解釈が遅れているという。同社にとって、有望企業の新規株式公開を待つのではなく「先手を打つことが大きなメリットになる」と述べた。
仮想通貨のエネルギー問題
仮想通貨、特にプルーフ・オブ・ワーク(PoW)を採用しているビットコインなどは、マイニングで消費する電力量から、環境への負担が大きいとの批判を受けている。
しかし、ラジパル氏はビットコイン・マイニングの40%はすでに再生可能エネルギーを利用しており、中国を除外すると、この割合はもっと高くなると主張した。現在でもビットコインの消費エネルギーは、金(ゴールド)の採掘よりも低いが、炭素税などの規制が導入され、インセンティブが生まれた場合、マイニングに利用する再生エネルギーの割合が高まることで二酸化炭素排出量が減り、持続可能性の問題も解決することが可能だという。
また、銀行などの従来の金融システムにおける日常業務は、実店舗を維持して大量の紙を消費する「マニュアル作業」であるため、二酸化炭素の排出量はビットコインのマイニングの7〜8倍に及ぶと、ラジパル氏は強調した。
さらに、電力消費量が小さいプルーフ・オブ・ステーク(PoS)を採用するブロックチェーンと、既存の金融システムのエネルギー消費量を比較すると、仮想通貨の環境問題に関する全ての議論は 「ひっくり返るだろう」と述べ、ブロックチェーンは環境改善に貢献するようになると結んだ。
ラジパル氏は、3年から5年の間に、仮想通貨がより多くの投資家から肯定的に認識されるようになると予測している。