Y.S.C.C.横浜
日本のスポーツシーンで、ファンやサポーターと新たな関係性を築く「クラブトークン」の活用に注目が集まっている。
クラブトークンは、仮想通貨等と同様にブロックチェーン技術を活用して発行。チーム運営などに関わる投票など、さまざまな企画に参加する「権利」として販売され、チームの新たな資金調達手段となるほか、トークン購入を通じて応援するサポーターとの持続的な関係性の構築に繋げることができる。
世界では、FCバルセロナをはじめとする欧州のサッカーチームを中心に2020年頃から導入が進み、日本でもフィナンシェが手がけるサービスで導入が進んだ。J3の横浜スポーツ&カルチャークラブ「Y.S.C.C.横浜」はフィナンシェで2ヶ月かけて実施された1次販売期間で4947万円を売り上げ、J1で優勝を争うような巨大クラブに限らず幅広いスポーツチームの新たな資金調達手段としての注目度も増す状況だ。
資金調達手段として、クラウドファンディングとの大きな違いは、支援金を送るファンとチームの距離を縮めエンゲージメントを強化できる点と、支援者がチームの成長と共にメリットを享受できる点にある。
クラウドファンディングでは購入や投資、寄付などの仕組みがあるが、購入のケースでは支援金に応じた「もの」を支援者に送る。一方、クラブトークンで資金調達をした場合、支援者に送られるのは支援金に相当するデジタル上のトークンで、トークンは支援したチームに関連した企画や体験イベントに参加できる権利として、継続的に利用される。
サッカーチームでいえば、チームが着るユニフォームのデザインやMVPを決める投票権や、試合前交流会の特別体験やスタジアムでのVIP試合観戦などの権利などで活用される。
こういったファンとの中長期のエンゲージメントを高めると共に、支援者が得られるのがトークンを活用したチームの成長に伴うトークン価格の値上がり益だ。
トークンを活用することで、株式や仮想通貨と同様に需給に応じて2次流通マーケットで取引価格が変動する。チームとファンがトークンを通じて継続的かつ良い関係性を構築することで高まる需要を反映した場合は、トークンの価格が1次の売り出し時より値上がりするケースがあり、チームが成長することが支援者に還元できる循環を生む格好だ。
「トークン」という形で実施する新たな資金調達で終わらずに、ファンと形成するコミュニケーションと体験を一緒に作れる魅力が、スポーツシーンで新たなムーブメントを起こしている理由として挙げられる。
Y.S.C.C.横浜が実施したトークンスペシャルDAY
ーーー希望の未来へ繋げーーー
7月4日(日)、カマタマーレ讃岐とのホームゲームにて、トークンを持つサポーターを主役としたサッカーイベントをY.S.C.C.横浜が実施した。
トークン保有者がマッチデーの名前や、選手への応援メッセージを決めるなど、トークン保有者の意見が当日のマッチデーに反映されるもので、Y.S.C.C.横浜がFiNANCiE内において実施したクラブトークン販売終了とともに始動したユーザー参加型のプロジェクトだ。
クラブトークンによる投票はトークン保有者であれば誰もが参加できる簡単な仕組みで、各テーマに合わせて用意される選択肢の中から決定する。
今回のトークンスペシャルDAYでは、投票によってマッチデーの名前は「希望の未来へ繋げ トークンスペシャルDAY」、選手への応援メッセージが「世界を変えていけ、変えるのは君達だ」に決定。トークンを通じた支援からチームの将来を応援する熱いメッセージが選ばれている。
こういった内容は、これまでスポンサー企業やチームに与えられている権利であったが、クラブトークンの投票の仕組みがこれをファンのレイヤーに落とし込むことに繋がっている。
マッチデー当日は、これらの文言がマッチデーに関連した様々な箇所に掲載され、スペシャルデーを盛り上げた。トークンを活用した特別な日として、スタジアムまでの道のりのほか、外を走る選手バスにも掲載。応援メッセージ入りのグッズも販売された。
選手がピッチへ入場する際に着るTシャツにも、トークンスペシャルDAYの名称「希望の未来へ繋げ トークンスペシャルDAY」と選手への応援メッセージ「世界を変えていけ、変えるのは君達だ」の両メッセージがプリントされ、記念撮影も実施されている。
また、トークン保有者の投票で決定したのは、マッチデーの名前や応援メッセージだけではない。
トークンスペシャルDAY当日は、トークン保有者向けの以下の様な限定イベントも開催されている。
1. ハマピィとのPK対決&写真撮影
2. 試合前のウォーミングアップ見学
3. キックインセレモニー
4. 第7回ハマピィチャレンジの投票
トークンスペシャルDAY、参加特典も
トークンスペシャルDAYには、トークン保有者に限らず、タオルマフラーの配布や新規ユーザー限定としてY.S.C.C.トークンのプレゼントキャンペーンも実施されるなど、トークンの存在を知らずに試合に訪れたファンへの還元も併せて実施されている。
タオルマフラーは、先着1,000名限定で各メッセージがプリントされたオリジナル品が配布され、試合を見る際の応援で活用された。
トークンがチームにもたらす新たなコミュニケーション
クラブトークンを通じて資金調達で終わらずによりコミュニティと共に作り上げるチームのあり方に変化が生まれていると、当日のイベントに参加したCoinPost編集部も感じた。
トークンスペシャルDAYの成功は、Y.S.C.C.横浜の運営陣の活動もあってのことだと言えるため、チーム側の負担も少なからずあるが、企画をファンと共に考え、チームとファンの間で新たなコミュニケーションの形が生まれたことは、トークンという支援方法がもたらした功績と言えるかもしれない。
また、流通市場でリアルタイムに価値が変動するトークンは、チームを応援するサポーターに限らず、新たな層のスポーツ業界への取り込みにも繋がるだろう。
トークンセールでは結果として4900万円のトークン販売額を記録したY.S.C.C.横浜。コロナ禍をファンと共に乗り越え、J2リーグ昇格を目指すチームに力を与えるだけでなく、チームが成長することで、クラブトークンの価値向上も目指している。
スポーツチームが目指す目標を応援することを表すデジタルアイテムが、チームの成長と支援者へのお礼に繋がる。世界でも拡大するクラブトークンの取り組みがサッカー業界のシーンを変える新たな形になる可能性を信じて、今後も注目したい。
Y.S.C.C.横浜のトークンは、フィナンシェが手がけるサービスを通じて、入手可能。現在の取引価格などは以下のリンクから確認できる。
フィナンシェ:Y.S.C.C.横浜