Rainmaker始動
Kyber DMMは2021年6月30日より、EthereumとPolygonの両ネットワークで流動性マイニングプログラム 「Rainmaker」を開始しました。期間は3ヶ月であり、期間中にKyber DMMの指定ペアに流動性提供をすることにより、KNCトークンを獲得できます。
流動性提供によるインセンティブ付与は、これまでKNC保有者の間でずっと議論されてきました。Kyber DMMの初期流動性を高めるためには不可欠であると考えられてきたため、KNCを追加発行してでも実現すべきである、という判断がなされています。
Kyber DMM待望の流動性マイニングである、Rainmaker導入がもたらした統計の変化を紹介します。「流動性マイニングは、プロトコルの拡大にどれだけ影響があるか」について考える参考になるはずです。
関連:DeFiが抱える課題のソリューション「Kyber3.0」と2021年の展望|Kyber Network寄稿
関連:分散型金融(DeFi)運用をサポートするソリューション、KyberDMM解説
Rainmakerの概要
Kyber DMMの流動性マイニングプログラム、Rainmakerの概要を以下に記します。
Ethereumネットワーク
- 期間は6月30日から3ヶ月間
- 1260万KNC(6月30日のレートで約1900万ドル)を報酬として配布
Polygonネットワーク
- 期間は6月30日から2ヶ月間
- 252万KNC(6月30日のレートで約378万ドル)と50万ドル相当のMATICを報酬として配布 ※MATICはPolygonが提供
Kyberとしては総額1512万KNC(6月30日のレートで約2300万ドル)をインセンティブに利用します。この資金でどこまでプロトコルの利用を伸ばし、DeFiユーザーの運用選択肢としての魅力を提示できるかが注目ポイントでした。
流動性がまだ少なかったため、6月30日のプログラム開始前に計算されたリターンはかなり高く、ユーザーを惹き付けるには十分なAPY(年間利回り)がありました。
当初は、リスクの少ないステーブルコインペアでも200%近くのAPYで、ETHやWBTCとステーブルコインのペアではかなりの高いリターンでした。当然、これらの数値は参加者が増えるほど低下しますが、初期の話題としては十分な数字であったと言えます。
Rainmakerローンチ後の流動性
Rainmaker効果により、6月30日のプログラム開始直前と比べ、Kyber DMMにおける流動性(ロックされた金額)は20倍になりました。6月26日は1200万ドルでしたが、7月1日には2億3000万ドルになっています。
約1ヶ月経過した7月27日現在では、3億ドル近くに到達しているため、1ヶ月で30倍のTVL(Total Value Locked、プロトコルにロックされた資金総額)を達成したことになります。本来、この数字は提供された資産の値上がりに左右されますが、この期間は特に目立った価格高騰は見られなかったため、ある程度は純粋な資金量の増加と捉えることができます。
もちろん、1ヶ月経過して参加者が増えたRainmakerプログラムでは、当初のAPYと比較すれば明らかに見劣りしています。
開始時に比べ、リターンが2桁落ち込んではいるものの、他のプロトコルと比べても悪くない数字が保てています。大きな資金移動が発生するほどのモチベーションの低下は起こっていません。
Kyber DMMに集まる資金が増えるほど、Kyberを通した交換レートは良くなり、スリッページも大きく削減することができます。そのため、常にベストレートを探しているユーザーはKyber DMMへアクセスする機会が増加し、結果としてKyber DMMの取引高も増加します。
・6月29日の取引高…約70万ドル(約7,600万円)
・6月30日の取引高…約600万ドル(約6.5億円)
・7月27日の取引高…約1500万ドル(約16億円)
Rainmaker開始から1日で約9倍、1ヶ月で20倍の取引高を記録しています。
UniswapやKyber DMMのようなAMMにおいては、取引高が最も重要な成長指標となります。提供された流動性の金額(TVL)も重要ですが、それは結果として全て取引高に表れるからです。
流動性マイニングの効果
Kyber DMMの流動性提供者にインセンティブを提供する、Rainmekerプログラム開始から1ヶ月経過しましたが、「約1900万ドルの資金を投じて3ヶ月のプログラムを行った結果、1ヶ月時点でTVLを30倍、取引高を20倍高める効果があった」と言えます。投じた資金は巨額ですが、現状は悪くない成果を挙げていると言えそうです。当然、3ヶ月のプログラムが終了すれば、終了日に数字は大きく下落することが予想されます。
本当の成果が判明するのは、6月29日時点と、プログラム終了翌日の数字との比較です。そのときまで、いかにユーザー資金を惹きつけられるか、プログラム終了後もアップデートを繰り返して魅力的なAMMを構築できるか、などの基本的な開発が今後の成長に求められています。