はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

イーサリアム・ロンドンハードフォークによる影響とは|Orchid(オーキッド)寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

大型アップデート「ロンドン」とは

イーサリアムは、分散型アプリケーション(dApps)の開発に最も適したブロックチェーンネットワークとして評価されています。イーサリアム上には、現在最も多くのdAppsが存在し、最大の開発者コミュニティを形成しています。

これは、オーキッドが分散型VPNマーケットプレイスの基盤としてイーサリアムを選択した際の重要な要因となりました。しかし、イーサリアムは普及するにつれ、成長の痛みに直面するようになりました。特に、高いガス料金と限られた拡張性(スケーラビリティ)が、ネットワークの成長を制限しました。

スケーラビリティ問題とは

スケーラビリティー問題とは、取引処理が遅延してしまうような「拡張性」の問題を指す。

仮想通貨用語集

現在、イーサリアムの全面的な見直しが行われています。これはイーサリアム 2.0と呼ばれるネットワーク全体のアップグレードで、ネットワークの力学を全面的に変更し、エコシステム全体に重要な影響を与えるものです。

Ethereum.orgによると、今回のアップグレードの主な目的は、ネットワークの「拡張性(スケーラビリティ)、安全性(セキュリティ)、持続性(サステナビリティ)」を高めることです。この目的のために、ネットワークは一連の構造的な変更を行っています。なかでも最も顕著なものとしては、プルーフオブワーク(PoW)コンセンサスアルゴリズムから、プルーフオブステーク(PoS)アルゴリズムへの切り替えとなります。

関連:イーサリアム、大型アップグレード「ロンドン」が実行

ハードフォークとは

当初、イーサリアム2.0は2021年半ばまでに完全実装される予定でした。しかし、開発上の不具合により、アップグレードの開始は何度か延期されています。今後も更なる延期の可能性はありますが、2021年後半から2022年前半までには完全な機能を備えたイーサリアム2.0の立ち上げが完了する予定です。

アップグレードを確実に成功させるため、新機能のインストールは「ハードフォーク」と呼ばれる3回の小さなマイルストーンに分けられています。

ハードフォークとは、あるブロックチェーンが実質的に新バージョンと旧バージョンの2つに分岐することです。これは、ブロックチェーンのプロトコルに変更があった場合に起こります。ハードフォークが行われると、分岐した2つのブロックチェーン間には互換性がなくなります。

これには2つの可能性があります。一つは、旧バージョンのプロトコルがノードによって放棄され、すべてのノードが新しいプロトコルを採用する場合です。

そしてもう一つは、十分な数のノードが新しいアップグレードの採用を拒否し、旧バージョンのサポートを続けた場合です。この際、2つの独立したブロックチェーンとして継続され、それぞれが固有のトークンを持つことになります。この後者のシナリオによって、2015年にイーサリアムクラシック(ETC)が誕生しています。

関連:仮想通貨 イーサリアムクラシック(Ethereum Classic)とは?

今年の4月には、イーサリアム2.0の実装に向けた第1弾のアップグレード、通称「ベルリンハードフォーク」が実施されました。このアップグレードには、手数料の最適化とネットワークセキュリティの向上を目的とした「Ethereum Improvement Proposals(EIP)」が含まれていました。ほとんどの取引でガス料金を削減する「EIP-2565」や、サービス拒否(DoS)攻撃を抑止する「EIP-2929」などが含まれています。

関連:仮想通貨イーサリアム、大型アップグレード「ベルリン」実装完了

ロンドンハードフォーク

21年8月初めにメインネットで稼働したロンドンハードフォークは、これらのアップグレードの第2弾となります。

ロンドンの主な目的は、ネットワークの拡張性を高めることと、取引手数料を安定させることです。イーサリアムを取引上の「高速道路」と考えると、ロンドンは効果的にいくつかの車線を追加して、交通量を減らし、料金を標準化させるものです。

しかし、このようなポジティブな変更にもかかわらず、フォークはイーサリアムコミュニティの一部の派閥(特にマイナー)から抵抗を受けました。

イーサリアムのマイニングは廃止されるのか

イーサリアム2.0に移行することで、イーサリアムは最終的にPoSネットワークになります。そうなれば、マイニングは廃止され、ネットワーク上の取引を確認する役割をステーカーが担うことになります。当然のことながら、マイナーはこの変化に抵抗を示しています。

ロンドンハードフォークでは、PoSへの移行は完了しませんでしたが、マイナーの報酬獲得能力に影響する重要な変更がいくつか行われています。また、マイナーにとっては、イーサリアムで稼げる時間が残り少なくなっているという心理的な影響もあるでしょう。

バーン機能の導入

ロンドンハードフォークをめぐる論争のほとんどは、アップグレードの5つの改善提案のうちの1つに起因しています。その提案が「EIP-1559」です。

この提案は、イーサリアムの手数料体系に「バーン(焼却)機能」を導入するというものです。基本料金と呼ばれる各取引料金の一部(取引を行うために必要な最低限の費用)が破棄、つまり「バーン(焼却)」されることで、イーサリアムのトークン経済にデフレという要素が加わります。

関連:市場の関心集めるイーサリアム改善案「EIP-1559」Deribitアナリストが分析

イーサリアムは、この変更が施される前はインフレ通貨であり、ETH(イーサ)の供給量には上限がありませんでした。マイナーへの支払いのために新たに生成・発行されたETHは、年に4%ずつ供給量を増加させていました。ETHの価格が上昇することで、インフレの影響を打ち消すことができていましたが、そのせいでETHは健全な価値の保存手段とはみなされてきませんでした。言い換えると、その要因による購買力の上昇や下降の可能性があったということです。

今回のデフレメカニズムの導入は、これを変えることを目的としています。ETHの供給量には依然として上限はありません。しかし、バーン機能によって、ETH供給数は1億1930万以下に制限されると予測されています。これにより、ETHはインフレに対するヘッジとしてより有効になる可能性があります。

関連:イーサリアム考案者のヴィタリック氏、ロンドンHFのメリットを解説 10億円相当の手数料がバーン

マイニングコミュニティが抱く懸念

ETHの保有者は、このデフレのメカニズムを自らの資産価値にとってプラスになると考えている一方で、イーサリアムのマイニングコミュニティは、収益が減るのではないかという懸念から、これに抵抗しています。

ほとんどの場合、新しい料金体系はマイニングの利益を減少させる可能性があるため、彼らの懸念を抱くのはもっともです。デフォルトでは、マイナーは各ブロックの確認作業によって2ETHを受け取ります。

今後、マイナーはトランザクションを送信する際に支払われる基本料金は一切受け取れなくなる代わりに、送信者が取引をより早く処理するために支払う調整可能な費用である「プライオリティ・フィー」を受け取ることになります。

ロンドンハードフォークによる基本料金への影響

「EIP-1559」では、イーサリアムの基本料金(ベースフィー)に、マイニング収益を減少させる他の変更も導入しています。これらは、イーサリアムのガス代をより予測しやすくするという目的に由来します。

ロンドンハードフォーク以前は、取引コストはオークションの仕組みで決定されていました。ユーザーは、取引の準備をする際に、その取引を実行するためにマイナーに支払う最大金額を「入札」します。マイナーは、できるだけ高い利益を求めて、最もコストの高い取引を選択します。こうした仕組みによって、特にネットワークのトラフィックが多い時には、取引コストが急上昇していました。

EIP-1559では、この問題を解決するため、ネットワークの利用状況やブロックスペースの空き状況を測定するアルゴリズムを用いて、基本料金を動的に調整します。

ブロック内の取引数があらかじめ設定された「ガス・ターゲット」を超えた場合、基本料金は12.5%増加します。また、その逆も同様です。この新しい価格設定の仕組みは、手数料が予想外に高騰することを防ぎ、その結果、マイナーが不当に高い取引手数料を引き出せないようにするための策です。

つまり、この取引価格設定メカニズムとイーサリアムの新しいバーン機能の組み合わせにより、マイニング収益は20~35%減少すると予想されます。また、取引量が大幅に増えれば、この減少分を補うことができる可能性もありますが、それを保証するものではありません。

マイナーたちの抵抗活動

当然のことながら、EIP-1559による収益減少の影響は、イーサリアムのマイニングコミュニティからの抵抗を受けており、提案の変更を求める署名活動も行われています。

このため、マイナーが反発してロンドンハードフォークの実施を拒否し、アップデートが失敗に終わるのではないかという懸念が生じました。しかし、アップグレードへの対応を拒否すれば、さらに多くの収益を失うリスクがあることをマイナーが認識したため、最終的に抵抗は収まっています。

また、アップグレードの影響を受けそうなのは、マイニングの収益だけではありません。「EIP-3554」と呼ばれる最新のハードフォークに含まれる別の改善案では、イーサリアムの採掘難易度が徐々に上昇することになります。それはつまり、取引を確認するために必要な時間とお金の量が徐々に増えていくことを意味します。この難易度の上昇は、PoSへの移行が近づくにつれ、マイニングを続けるインセンティブを低下させ、マイナーのステーカー化を促す可能性があります。

レイヤー2は不要なのか

イーサリアム 2.0の登場によって作り直されるのは、マイニングだけではありません。アナリストの中には、ロンドンのハードフォークによって、ネットワークのレイヤー2ソリューション(別名「ロールアップ」)が不要になると主張する人もいます。しかし、これはコンセンサスの見解とはかけ離れたものです。

レイヤー2ソリューションとは、イーサリアムのメインネットから離れた場所で取引を処理することで、取引速度を高めたり、取引コストを下げたりする二次的なフレームワークおよびプロトコルのことです。大量の少額トランザクションを高速で送信しなければならない状況でよく使用されます。

例えば、オーキッドのVPNマーケットプレイスは、「確率的ナノペイメント」と呼ばれるレイヤー2ソリューションを採用しています。確率的ナノペイメントは、偶然性に基づくシステムを使用して、パケット単位のネットワーク決済を迅速に送信します。

関連:イーサリアム2.0がもたらす影響とは|Orchid(オーキッド)寄稿記事

オーキッドのレイヤー2ソリューションの仕組み

オーキッドの確率的ナノペイメント機能は、1回の支払いを送るコストを大幅に削減させるため、支払いチケットをオフチェーンで送信します。オンチェーン取引は、取引の受信者が支払いを請求した場合にのみ行われます。ほとんどのナノペイメントチケットは「勝ち取る」必要がないため、関連する取引にコストはかかりません。

今後イーサリアムがオーキッドのように、数百万の取引をサポートできるようになる可能性はあるかもしれません。しかし、オーキッドの確率的ナノペイメントは、引き続きユーザーにとってはコスト効率の良いものとして、不可欠な役割を果たし続けることができます。ネットワーク上のVPNサービスは従量制で、ユーザーが使用した帯域幅に対してのみ課金されます。利用開始時の費用はわずか1ドルで、一般的なクレジットカードでの支払いが可能です。

プライバシーはオーキッドの果たすべき使命であり、ユーザーが自由にインターネットを楽しむことができるよう、チームは常に努力し続けています。確率的ナノペイメントは、このミッションにおいて重要な役割を担っています。

関連:プライバシー保護にNFT活用へ オーキッドの新たな取り組み

厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
05/17 土曜日
14:00
アブダビ政府系ファンド、ビットコインETF買い増しで保有額750億円突破
アブダビのムバダラ・インベストメントが第1四半期にブラックロックのビットコインETFを49万株追加購入。ゴールドマン・サックスは最大保有者として3000万株を保有。
13:05
ビットコインETFフェイクニュース事件、犯人に懲役14か月の判決
米SEC公式Xアカウントを乗っ取り、ビットコインETFについてのフェイクニュースを流した26歳の被告に懲役14か月の判決が下りた。偽情報で仮想通貨市場を混乱させたことが重大視された。
11:00
ビットコイン長期保有数1437万BTCに到達も、利確売り強まる=アナリスト分析
ビットコインの長期保有者が3月から5月にかけて利益確定を加速。支出利益率は71%増加し227%の平均リターンを記録。長期保有量は1437万BTCに達するも、市場サイクルの分配フェーズへの移行を示唆。
10:10
トランプ家のWLFI、民主党議員による調査要請を正式拒否
トランプ一族の金融企業WLFIが上院による調査を拒否した。政治的動機と批判し、同社は説明責任や米ドル優位性を指針としていると主張。倫理規定違反の疑惑なども否定している。
09:02
ETH・BTC比率が5年ぶり急騰、アルトシーズンの到来示唆か
イーサリアム/ビットコイン(ETH・BTC)価格比率が過去5年最低水準から38%急反発。ETFによる買い増し、取引所流入減少などの指標から需要増加・売却圧力低下が鮮明に。「極端な過小評価ゾーン」からの回復が示すアルトコインシーズン到来の可能性を分析。
07:50
ビットコインで利回り獲得、Solvがアバランチ基盤の新トークン発表
仮想通貨ビットコインの保有者にRWAの利回り獲得手段を提供するため、Solv Protocolはアバランチ上にSolvBTC.AVAXをローンチ。ローンチの目的や仕組みを説明した。
07:30
10億ドルのビットコイン投資を検討、米上場のシンガポール医療企業
シンガポールの医療企業バーゼル・メディカル・グループが10億ドル規模のビットコイン投資に関する交渉を開始。ストラテジー社に続く大規模企業BTC投資の新事例として注目される中、「革新的な株式交換契約」を通じてアジア医療企業最強の財務体質構築を目指す。
06:45
米裁判所、SECとリップルの和解案を「手続き上不適切」として却下 再申請へ
米連邦地裁がSECとリップルの和解申請を「手続き上不適切」として却下。民事訴訟規則違反が原因で、両者は適切な手続きでの再申請を迫られる状況に。
06:25
イーロン・マスクの『Kekius Maximus』切り替えでミームコインが2倍以上急騰
イーロン・マスク氏がツイッターのプロフィール画像とユーザー名をミームトークン「Kekius Maximus」に変更し、関連トークンが2倍以上急騰。昨年の900%上昇・急落事例に続くマスク氏のSNS活動による仮想通貨市場への影響力を示す展開に。
06:05
サウジ中央銀行、15億円相当のストラテジー株保有でビットコインに間接投資
サウジ中央銀行がセイラーのストラテジー社の株を25656株取得し仮想通貨ビットコインへの間接投資を開始したことが確認された。
05/16 金曜日
17:00
マスクネットワークとは?仮想通貨MASKの買い方・取引所まで徹底解説
Mask NetworkはSNS×Web3をシームレスに接続するSocial-Fiプラットフォーム。本記事では特徴とMASKトークンの買い方を初心者向けに解説します。
13:50
米ステーブルコイン法案、来週末までの成立視野に 次の「起爆剤」との見解も
米上院のステーブルコイン法案「GENIUS法案」で新たな超党派修正案が決定された。消費者保護や倫理規定が強化され、5月19日に討論終結投票が予定されている。
11:58
ビットコイン高値圏推移もアルトコインは上昇一服
仮想通貨ビットコインは104,100ドルと高値圏で推移、アルト市場ではメイプルストーリー(NXPC)はバイナンス対応で一時高騰したほか、XRPは7,300万ドル相当の大口売りとリップル和解手続き却下で下落した。コインベースはサイバー攻撃で最大4億ドルの損失も被害者への返金を約束した。
11:30
ブラックロックの「BUIDL」、初めてDeFiと接続へ アバランチ利用で
ブラックロックの米国債ファンド「BUIDL」がアバランチ上のプロトコル「Euler」に導入された。セキュリタイズは、機関投資家のDeFi参入を促進する一歩になったとしている。
10:55
加速する企業のビットコイン争奪戦、米上場のDDC社が5000BTC取得計画
香港発DDCエンタープライズが5000ビットコイン取得計画を発表。テザーの4812BTC購入、アデンタックスの8000BTC購入のための交渉、ウクライナの国家準備金構想など、企業・国家レベルでビットコイン争奪戦が激化。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧