キャピタルゲイン税控除の抜け道を塞ぐ
米議会下院民主党は13日、増税案の詳細を発表した。3.5兆ドル(約385兆円)規模の歳出に対する財源確保のため、法人税やキャピタルゲイン税、また個人の最高税率の引き上げなどが計画されている。
下院歳入委員会の増税案に関する資料によると、暗号資産(仮想通貨)もその増税案の課税対象に含まれているようだ。この中には「その他の事業税に関する規定」として、「ウォッシュセール」について次のような記載があり、2021年12月31日以降の課税年度に適用されるとしている。
これまで株式やその他の有価証券に適用されてきた、不正使用防止のルールであるウォッシュセール規制に、コモディティ、通貨およびデジタル資産を含むものとする。1091条のウォッシュセール規制は、納税者が損失を計上した資産の持分を保持したまま、税務上の損失を請求することを防ぐものである。
ウォッシュセールとは
ウォッシュセールとは、税金対策の一環として、損失を確定するために含み損のある株式/有価証券を売却し、その直後に同等の証券やオプションを買い戻す行為を指す。ウォッシュセール規制では、投資家が売却後30日以内に買い戻した「実質的に同等の証券」については、損失に対する控除申請を禁止している。
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現在、米内国歳入庁(IRS)は仮想通貨を有価証券ではなく資産と分類しているため、ウォッシュセール規制は適応されていない。そのため、キャピタルゲイン税回避の抜け道となっているとの批判が見られている。上記の提案通りウォッシュセール規制の適用範囲を拡大すると、10年間で約160億ドル(約1兆7600億円)の税収につながると試算されている。
なお、「特定の高所得者」を対象に、キャピタルゲインおよび配当金に対する最高税率は、23.8%から28.8%への引き上げが提案されている。
コンストラクティブ・セール
さらに増税案では、「コンストラクティブ・セール」と呼ばれる規制を、仮想通貨にも適用することが検討されている。他の金融資産にはすでに適用されているが、これは特定の相殺するポジションの採用を、所有しているポジションの売却と見なすルールで、利益が課税対象となることを回避させないため対策となっている。
この改正はウォッシュセールと同じく、2021年12月31日以降の課税年度に適用されるとしている。
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インフラ法案でも
また、今月27日に採決が予定されている大規模なインフラ法案では、仮想通貨の「ブローカー」に対する報告義務の拡大という条項が提案されている。さらに、米財務省には、仮想通貨取引の課税対象を海外口座の保有者が設置した企業の「受益権所有者」にまで拡大する動きもあると報道されている。
米国では課税の枠組みの変更を通して、仮想通貨に対する締め付けはますます強まる傾向にあるようだ。
インフラ法案とは
米上院から提出され、今後8年間で1.2兆ドル(約130兆円)を道路・橋、鉄道、港湾・空港、水道、高速通信網、電力網などの国内インフラへの投資を提案する法案。バイデン政権の経済分野の主要政策の1つである。
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