CoinPostで今最も読まれています

サービスとしてのプライバシー機能を提供するNym Technology(ニム・テクノロジー)とは

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

a16zが出資し一躍注目

スイスで2018年に立ち上げられたNym Technologyは、ブロックチェーン基盤の強固なプライバシーウェブサービスの提供を目的とする企業だ。

11月17日には、IT・テック分野への投資で著名な米ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)などから約15億円の調達を主導したことがForbesなどで取り上げられ、俄に注目を集め始めている。

そしてNymは過去にも、19年に250万ドル(約2億9千万円)、今年7月には600万ドル(約6億9千万円)の資金調達に成功したことも話題となった。Nymはこれらの資金を使い、優秀な人材を確保するだけでなく、今後の具体的なユースケースを探求し、サービス展開するための研究開発費に充てるという。

関連:a16z、2つのブロックチェーン関連企業に出資

Nymエコシステムを支える3つのテクノロジー

Nymが提供する主なサービス内容は、ネットアクティビティに関連するデータの由来を難読化するノードと、そのノード運営にインセンティブを与えるエコシステムをユーザーに提供することだ。

また「ゼロ知識証明」を応用した「クレデンシャル」と呼ばれる技術を使い、特定のインターネットコンテンツにアクセスできる「プライバシー信用サービス」も提供する。

ゼロ知識証明とは

ゼロ知識証明とは、証明(Proof)プロトコルの一種であり、証明者が「自身の主張は真実である」以外の情報を検証者に開示することなく、その主張が「真実である」と証明するメカニズム。

仮想通貨用語集

Nymのエコシステムを支えるのは、Nym Mixnet(ミックスネット)、Nym Credentials(匿名認証)、そしてNYM Token(NYMトークン)からなる、3つのテクノロジーだ。

以下は、それぞれの概要となる。

1)Nym Mixnet

出典:Nym

Nymブロックチェーンでは、インターネットのトラフィックを「シャッフル」する「Nym Mixnet」という技術を採用している。これは、ノードが必要に応じてダミーのデータパケットを注入すことによって、ハッカーや検閲がトラフィックの情報を解読したり、誰が誰に話しているのか追跡したりすることを困難にする技術だ。

Nym Mixnetは、3層構造のミックスノードを持つ分散型ネットワークだ。データパケットはすべて同じに見えるように暗号化された上で、3層のミックスノードを経由して送信されるため、ネットワーク全体を監視できる国家機関レベルの検閲によるトラフィック解析でさえ、パケットの経路を追跡したり、通信パターンのトラフィック分析を行うことができない。 すべてのデータは暗号化され、見た目も同じで、かつランダムなルートを通ることとなる。

すなわち、ユーザーの通信は、Mixnetの各層で何重にも暗号化された上、ユーザーのインターネット・トラフィックが他者のトラフィックと混合することとなる。このプロセスを挟むことで、ユーザーの通信を識別するメタデータ(IPアドレス、タイミング、宛先など)が難読化される。

出典:Nym

つまり、ユーザーのメッセージは「群衆の中に紛れて」しまい、メッセージの内容だけでなくメタデータも保護されることで、ユーザーのコミュニケーションがプライベートなものとなるという仕組みだ。

関連:日本も標的に 200億円相当の仮想通貨を盗み出したハッカー集団CryptoCoreの手口

2)Nym Credentials

出典:Nym

「Nym Credentials」とは、プライベート・クレデンシャル(匿名認証)と呼ばれる技術を用い、プライバシーをアプリケーション・レベルまで拡張することを目的としたものだ。

サードパーティ製アプリケーションが任意の「キー・バリュー」ペアを匿名化できるようにすることで、ユーザーは必要なコンプライアンスや認証用に、自分の判断でデータの一部またはすべてを非公開にすることが可能となる。

つまり、Nym Credentialsの匿名認証技術を使用することで、ユーザーはアプリの使用を通してプライバシーを維持しながらも、医療や公共サービスへのアクセス、銀行規制への対応、オンライン投票への参加など、様々なデジタル・サービスにアクセスする権利を証明することができるという訳だ。

また、通信の「アンリンカビリティ(リンク不能性)」を確保することで、ユーザーが自分のデータの出所を辿られたり、同意してもいないことを明らかにされたりすることを防ぐこともできる。

多くの場合、デジタルサービスにログインする際には、そのサービスを利用する権利を得るために、実際に必要とされるものよりもはるかに多くのデータを渡すことになる。このような個人情報は、第三者に流用もしくは悪用される可能性があることから、アンリンカビリティによって個人データの各ビットが他のビットと接続されていないことを確保し、望ましくないプロファイリングを困難とすることが必要となる。

3)NYM Token(NYM)

出典:Nym

Nym トークン(NYM)は、システムを運営するノードに対し、インセンティブとして報酬を与えることで、グローバルなプライバシー保護サービスを経済的に持続可能でスケーラブルなものにすることを目的として作られている。

今後NYMは、Mixnetの分散化、そしてNymエコシステムの管理において活用されることが想定されており、NYMの価値も、今後増加するであろうプライバシーに対する世界的な需要と結びつくことで上がってくる見込みだ。

またNymはテストネットにおいて、ネットワークノードの運営者にビットコインで報酬を与えており、Nymの技術がビットコインネットワーク上に構築された追加レイヤーであるLightningのようなプロトコルと統合され、即時かつ大量のマイクロペイメントが可能になることも今後のユースケースの一つとして想定されている。

今後のユースケースおよびロードマップ

出典:Nym

本稿執筆時(21年11月)においては、第1のマイルストーンとなるメインネットの21年内のローンチに向け、Nymは3度目となるテストネットを実施中だ。

テストネットとは

テストネットとは、開発者が新しい機能を追加してその挙動を検証する、本環境(メインネット)可動前の試験環境のこと。

仮想通貨用語集

Nymは現在、欧州委員会(European Comissioin:EC)の資金提供を受けて、プライバシーを強化した新型コロナウイルスのデジタル・ワクチンパスポートのためのプライベート認証情報を研究開発中だという。

他にも、メインネットがローンチされる段階となれば、以下のようなMixnetの機能、そしてNYMトークンの報酬システムが完全実装されるとのことだ。

  • ノード運営者としてパーミッションレスでネットワークに参加する機能
  • メッセージの送信者が受信者に知られないようにする、送受信者の匿名性
  • 「Nymプライベート・クレデンシャル」稼働
  • NYMトークンのステーキングを可能とする「Mixpools」稼働
  • ネットワークがミックスノードのサービスの質を分散的に監視し、それに応じてミックスノードに報酬を与える分散型の報酬共有制度(現在はテストパケットをネットワーク経由で送信しており、これが分散化)
  • Nymウォレット デスクトップ版リリース
  • トークン生成イベント
  • 今後、2022年中には第2のマイルストーンとなるアプリのリリース、そして2023年における第3のマイルストーンとしては、諸々のエンタープライズおよび組織での使用開始を挙げている。

    Nym Technologyについて

    Nym Technologyは、2018年にスイスのヌーシャテルでHarry Halpin氏、Claudia Diaz氏、Dave Hrycyszyn氏の3人によって設立。ミックスネット、匿名認証、暗号通貨経済の3つの主要な技術分野において、10年以上に及ぶ研究のもと開発を続けている。

    共同設立者の三人は、欧州委員会が資金提供したプライバシープロジェクト「PANORAMIX」で出会い、そこから最先端のミックスネットデザイン「Loopix」の開発につながったとのことだ。

    NymのCEOであるHarry Halpin(ハリー・ハルピン)氏は、2018年に会社を設立する前に、ワールド・ワイド・ウェブの発明者であるティム・バーナーズ=リーとともにWorld Wide Web Consortiumで働いていた経験を持つ。

    ハルピン氏によると、Mixnetの技術は、現在代表的なプライバシーサービスとして知られるVPNやTorネットワークと異なり、国家レベルの大規模な監視にも打ち勝つことができるという。

    関連:インターネット利用上の安全性と通信速度を強化する分散型VPNとは

    CoinPost App DL
    注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
    07/27 土曜日
    08:10
    マスク氏のX(旧ツイッター)、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除か
    イーロン・マスク氏がオーナーのX(旧ツイッター)は、ビットコインなどの仮想通貨絵文字表示を削除した。ドージコイン擁護のためか。
    07:35
    BitwiseのETH現物ETFの横断幕、NYSEに掲揚
    仮想通貨運用企業Bitwiseのイーサリアム現物ETFの横断幕が、ニューヨーク証券取引所に掲げられた。同社は、取引終了のベルを鳴らすことも報告している。
    07:05
    野村傘下のレーザーデジタル、利回り提供のイーサリアムファンド販売予定か
    野村ホールディングスの仮想通貨資産子会社であるLaser Digital(レーザーデジタル)は、イーサリアム現物ETFの代替商品の導入を計画しているようだ。
    06:40
    米SEC、グレースケールのミニ版ビットコインETFを承認
    仮想通貨投資企業グレースケールが提供するGBTCは手数料(1.5%)が最も高く資金流出は続いていたが、新商品を導入し0.15%という業界最安の手数料設定で競争力を高める狙いだ。
    06:20
    ビットコイン価格が21年後に最大で75億円に到達か、マイケル・セイラー氏の強気予想
    ビットコインを最も保有する米上場企業マイクロストラテジーのマイケル・セイラー氏はカンファレンス「ビットコイン2024」で、BTCの今後の強気予想のプレゼンテーションを行った。
    07/26 金曜日
    17:10
    「米大統領選で価格変動 トランプやハリス由来のミームコインの買い方
    トランプトークンの概要 ドナルド・トランプ前米大統領とその「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大に)というスローガンからインスピレーションを得…
    17:10
    ヤマハ発動機が初のVTuberコラボNFTを発行、Yamaha E-Ride Baseを訪れて進化可能
    ヤマハ発動機が初のNFTデジタルステッカーを発行。横浜のYamaha E-Ride Baseで進化するダイナミックNFTを体験し、限定グッズをゲットできる。
    15:13
    ビットフライヤーがFTX Japan買収完了、カストディ事業展開へ
    株式会社bitFlyer HoldingsはFTX Japanの株式100%を取得し、完全子会社化を発表。8月26日までに社名を変更し、クリプトカストディ事業を展開予定。法制度整備後の暗号資産現物ETF関連サービス提供も視野に入れている。
    14:43
    Neo Xメインネットが正式稼働 EVM互換でネオのエコシステムを拡張
    Neoは高性能EVMベースのサイドチェーン「Neo X」のメインネット正式稼働を発表。クロスチェーンブリッジで流動性と互換性が向上し、エコシステムの可能性が広がる。
    14:15
    カマラ・ハリス氏のミームコインが過去最高値を記録、大統領候補指名の期待受け
    PolitiFiと呼ばれる政治パロディのミームコインが、仮想通貨領域で独自のジャンルを形成しており、カマラ・ハリス副大統領のパロディコイン「 Kamala Horris(KAMA)」が急騰し話題となっている。
    12:55
    アルトコインETFの未来、ブラックロックが語る現実と可能性
    ブラックロックのデジタル資産責任者は、イーサリアム現物ETFが承認されていても他のアルトコインETF誕生には困難があると話した。
    12:14
    仮想通貨相場反発、ビットコイン・カンファレンスのトランプ登壇に関心集まる
    昨日までの大幅下落とは打って変わり暗号資産(仮想通貨)相場は反発した。強気シグナルのハッシュリボンが点灯しているほか、今週末にはビットコインカンファレンスに米国のトランプ前大統領が登壇予定であり、投資家の関心が集まる。
    11:00
    トランプ前大統領の陣営、4〜6月期で仮想通貨で6億円の寄付金調達
    トランプ前大統領は、ビットコインなど仮想通貨で6億円以上の選挙資金を調達。「ビットコイン2024」でもさらに資金を集める予定だ。
    10:30
    BTCが290万ドルに到達するシナリオ、VanEckが公開
    仮想通貨ビットコインが2050年までに290万ドルに到達するシナリオをVanEckのアナリストが公開。このシナリオを実現するための条件を説明している。
    10:00
    ソラナ初事例、パラオ共和国がデジタルID発行
    主権国家が仮想通貨・ブロックチェーンであるソラナ上で、法的アイデンティティを発行する初めての事例となった。

    通貨データ

    グローバル情報
    一覧
    プロジェクト
    アナウンス
    上場/ペア