新たな研究プロジェクト始動
英ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネス・スクール傘下のCCAFは1日、新たな暗号資産(仮想通貨)研究プロジェクト「デジタル・アセッツ・プログラム」の発足を発表した。16の大手企業や国際機関が共同して、業界の課題やエコシステムのトレンドに関するデータを提供していく。
CCAFはケンブリッジ・オルタナティブ・ファイナンス・センターの略称。これまでには、ビットコインネットワークのマイニングの世界的分布を計測するCBECIなどを発表してきた。
同指標のデータは21年8月以降更新されていないものの、中国政府が仮想通貨禁止令を発表した後からは米国がハッシュレートで1位に躍り出ている。
CBECIとは
「Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Index」の略。ビットコインネットワークのハッシュレート(採掘速度)の32%から37%に相当する大手マイニングプール4社の位置情報を基に、マイニングのデータを算出している。
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調査内容
今回の発表では、CCAFはこれまでの研究成果をベースに、さらなる仮想通貨エコシステムの調査を行っていく「デジタル・アセッツ・プログラム」を発表。
公民の企業や機関と連携して、仮想通貨を取り巻く課題やトレンドを網羅的に分析。政策提言や世界各国の企業などの「エビデンスに基づく意思決定」をサポートする。
調査する主な題目は以下の3点だ。
- 仮想通貨の環境面への影響
- DeFi(分散型金融)のインフラと仕組み
- デジタル証券やCBDCなど 新たな「お金」のシステム
これまでの研究に続き、仮想通貨や関連した活動(マイニングなど)による環境への負荷を分析する。
特に気候変動対策の一環として各国が脱炭素化を進める中、仮想通貨業界は昨年批判の的となっていたため、実際に業界の環境面への影響を調査。ESGの観点から、政策提言が実際に必要か、金融機関やその他のステークホルダーが研究する。
ESGとは
環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)の略称。事業面のポテンシャルだけではなく、多角的な側面から産業の影響を考慮した上で、環境問題や社会問題、国連の持続可能な開発目標(SDGs)などに貢献することが企業責任となりつつある。
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また、分散化金融市場インフラ(dFMI)も調査していく。dFMIは「金融サービスを自動化して、オープンで相互運用性のある金融システムの構築を約束するデジタルシステムやプラットフォーム、アプリの総称」で、いわゆるDeFiプラットフォームのインフラ基盤を分析する。
プラットフォームやアプリ自体のインフラ面が主な研究題目となっており、リスクを抑えつつ、どこまで新たな価値を提供できるのかを調べ、実体経済への影響を検討。
さらに、DeFiなどの台頭によって、仮想通貨だけではなく、既存資産クラスのトークン化などにより新たな「お金のシステム」が構築されていると仮定。企業の独自トークンなど、今後さらなる疑似貨幣が現れるとして、資産のデジタル化やトークン化が実体経済に与える社会経済的、法的、また文化的な影響などを調査する。
研究参画企業
参画する企業や国際機関は以下の通り。英国政府の外務・英連邦・開発省も参画するほか、ドバイの経済特区も研究を後援する。
- アクセンチュア
- 国際決済銀行(BIS)イノベーションハブ
- ブリティッシュ・インターナショナル・インベストメント(BII)
- ドバイ国際金融センター(DIFC)
- アーンスト・アンド・ヤング(EY)
- フィデリティ
- 英外務・英連邦・開発省
- ゴールドマン・サックス
- 米州開発銀行(IDB)
- 国際通貨基金(IMF)
- インベスコ
- ロンドン証券取引所グループ(LSEG)
- マスターカード
- モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)
- ビザ
- 世界銀行
民間企業からはフィディリティやEY、ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーなどの金融大手が参加。また、国際決済銀行や世界銀行、国際通貨基金などの国際機関も名を連ねる。
また、CBDC(中銀デジタル通貨)でも各国の中央銀行と連携する決済大手のマスターカードやビザ社も参加する。
「デジタル・アセッツ・プロジェクト」の開始について、CCAFのエグゼクティブ・ディレクターであるBryan Zhang氏は以下のようにコメントした。
デジタル資産の導入が進むにつれ、役割、責任、適用されるルールの境界がますます曖昧になっている。
本日発表するケンブリッジ・デジタル・アセット・プログラムは、官民の関係者が参加する共同研究を通じてデータに基づく洞察を提供することにより、結果として生じるより明確なニーズを満たすことを目的としている。