銀行の仮想通貨商品提供を禁止か
アルゼンチン中央銀行は5日、同国の金融機関が、暗号資産(仮想通貨)やその利回り商品などデジタル資産の取引を実施したり、顧客に提供することはできないとの通知を発表した。
これらの資産を用いた取引について、利用者へのリスクや、金融システム全体に対して与え得るリスクを軽減することが目的だという。
こうしたサービスに関わる様々な事業者がアルゼンチン国内に設立されていない可能性があり、国内規制から逸脱する恐れがあることも懸念する形だ。
また、銀行など金融機関の本来の役割は、「財やサービスの投資、生産、販売、消費に資金を供給すること」であるべきとも主張している。
今回の通知は、銀行などに「当局によって規制されておらず、アルゼンチン中銀から認可を受けていないデジタル資産」について、提供を抑止するものだが、現在アルゼンチンで明確に規制された仮想通貨は存在していないため、銀行は全般的に仮想通貨の取り扱いができなくなるのではとの見方もある。
なお、仮想通貨取引所などの事業を禁止する内容ではない。3月には、アルゼンチン当局が、仮想通貨サービスのプロバイダーにも、顧客取引の報告・記録義務を課す方向で動いていると報じられている。
アルゼンチン中央銀行と、証券取引委員会は2021年5月にも、仮想通貨のリスクについて警告する文書を発表していた。
仮想通貨への投資を行う上で、そのリスクを十分に知ることが重要だと指摘。ボラティリティ(価格変動)の大きさ、サイバー攻撃のリスク、マネーロンダリング・テロ資金調達に使われる可能性、規制の非遵守に関連するリスク、預金保険などが存在しないこと、その他のリスクを考慮する必要があるとしていた。
マネーロンダリングとは
犯罪によって得られた収益金の出所などを隠蔽し、正当な手段で得た資金と見せかけることで、一般市場で使っても身元がばれないようにする不正行為。G20でも問題提起されるなど、マネロン対策は最優先課題の一つとされる。
▶️仮想通貨用語集
2行が仮想通貨サービスを発表したばかり
3日には、アルゼンチンの銀行2社が仮想通貨取引を提供開始したことが報じられたばかりだった。大手プライベートバンクのBanco GaliciaとデジタルバンクのBrubankは、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)USDC(ステーブルコイン)その他の売買を提供すると発表している。
しかし、今回の通知により、こうしたサービスが継続できるかについては不透明となった格好だ。
ハイパーインフレに苦しむアルゼンチンでは2022年に、インフレ率が年率55%に達しており、外貨購入も制限されるなどの状況で仮想通貨が注目を集めてきた。
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IMFとの協定
アルゼンチンは3月、インフレ圧力・債務不履行を回避し、経済回復に向かうことを目指して、国際通貨基金(IMF)と約5.8兆円(450億ドル)の救済協定を締結していた。
しかし、この協定は仮想通貨を抑止することを唱える条項も含むものだ。
3月にアルゼンチンの経済相と中央銀行総裁が署名した書簡には「金融の安定をさらに保護するために、マネーロンダリングや、非公式で、仲介機関を持たない金融を防止する観点から、仮想通貨の使用を抑止する」という趣旨の文言が掲載されていた。
同じ書簡には、効率とコスト改善のため「決済デジタル化」を促進することも挙げられていたが、仮想通貨は推奨されるデジタル化とはみなされていない模様だ。書簡は他に、金融面での消費者保護にも言及している。