MakerDAOが米銀のローンに参加
大手DeFiレンディングプラットフォームMakerDAOで、米国ペンシルバニア州の商業銀行Huntingdon Valley Bankが組成する「シンジケートローン」への参加を問う、コミュニティ投票が開始された。
130億円(1億ドル)分の米ドル・ステーブルコインDAIの融資枠を求めており、執筆時点に57.55%の賛成票を集めている。
The first collateral integration from a US-based bank in the DeFi ecosystem is getting closer.
— Maker (@MakerDAO) July 4, 2022
The Maker Governance votes to add RWA-009, a 100 million DAI debt ceiling participation facility proposed by the Huntingdon Valley Bank, as a new collateral type in the Maker Protocol pic.twitter.com/fOdusdjCFS
提案が承認されれば、DeFiプロトコルと米国の商業銀行間のシンジケートローンが実現する最初の事例となる。シンジケート・ローンは顧客の資金調達ニーズに対して複数の金融機関が同条件の融資を行うプロセス。銀行にとっては信用リスクと負担を分散しながら、収益を拡大できる利点がある。
HVBankの幹部と共同で作成された提案書は、HVBankが組成・参加するローンに限定しつつ、初期の債務上限として1億ドルを確保することを要求している。12か月後までに目標金額を10億ドルまでの規模拡大を目指している。
資産規模5億ドルの商業銀行HVBankは、創業以来150年に渡り商業用および住宅用モーゲージ(不動産担保融資の債権を裏付けとして発行された証券)を組成してきた。同行はMakerDAOとの連携により、自社が組成したローンの参加権を売却する代わりにDAIの深い流動性にアクセスするねらいがある。
Makerにとっては、DAIの新しい担保資産として新たな「実世界の資産(RWA)」を追加し、収益拡大を図る試みとなる。
DAIとは
仮想通貨(暗号資産)担保型のステーブルコインで、イーサリアムチェーン上で発行されているERC-20トークン規格。米ドルの価値と連動しており、1DAI≒1ドルを維持するよう設計される。DAIの時価総額は67億ドル(約9,000億円)に上り、ステーブルコイン分野で時価総額4位を誇る(執筆時点)。
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DeFiのオフチェーン展開
具体的に、HVBankはMakerDAOのためにデラウェア州で設立される法定信託「MBPTrust」とメイン契約を締結する。HVBankがローンへの参加機会を提示し、MBPTrustが参加に同意すると個別の契約書が締結される。
HVBankとMBPTrustがリスクを当分する性質上、互いにローン全体の50%ずつを出資する。初期のベンチマーク金利は3.00%、HVBankは毎月、返済と金利を信託の口座に送金する。DAIに接触するのは規制されたブローカーディーラーの単一アドレスのみ、そこで米ドルとDAIのスワップが実行される。
Makerのスマートコントラクトが仮想通貨の担保を管理するのと同様に、MBPTrustはHVBankが組成するローンの貸出参加契約を保有することになる。なお、MakerDAOと伝統的金融機関との架け橋となるために設立されたRWA Company LLCが、このスキームに関するオフチェーンデータを集計し、MakerDAOコミュニティに提供する作業から、0.50%の手数料を取得する。
DeFi(分散型金融)エコシステムにRWA(実世界資産)を持ち込む動きは、市場拡大に向けたネクストステップとして盛んに検証されている。21年には、フランスのメガバンク「Societe Generale(ソシエテ・ジェネラル)」が発行した債券トークンをステーブルコインDAIの担保資産とすることで、最大22億円に相当するDAIのローン(融資)を発行する提案書が提出された。
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6月末には、MakerDAOのバランスシート上のステーブルコインから低リスクの利回りを得るため、約650億円(5億DAI)を米国債や社債に投資するプランが投票にかけられ、5日に可決している。
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