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Web3の実現に向けた課題とは|Ontology寄稿 オントロジーによる考察シリーズ

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

Web3実現のための課題

Web3という言葉は、今や暗号資産(仮想通貨)業界だけでなく、次世代のウェブの形として一般業界にも浸透しつつあります。これまでは起業家がゼロからWeb3のサービスを展開するという形が多かったですが、最近ではWeb2企業がWeb3業界に参入することも珍しくなくなってきています。そういった意味では、Web2とWeb3の垣根が徐々になくなってきているとも考えられます。

一方で、Web3はWeb2を代替する存在であるという意見も聞く機会が多いのではないでしょうか。分散化を前提としているWeb3は、GAFAを始めとする「ビッグテック」と呼ばれる企業が圧倒的シェアを握るWeb2時代を脱却した、次世代インターネットであるとも言われています。

オントロジーのOWN Insightsシリーズでは、業界のリーダーを招き彼らのWeb3産業についての知見を共有して頂いています。シリーズ全体を通して彼らの考えを学び、このインターネットの新しい流れをより理解できるようになるでしょう。

今回は、オントロジー経営責任者であるセドリック・ディング氏に、「Web3の実現」をテーマに寄稿いただきました。


Web2の終焉とWeb3

Web3(この記事では、一般に分散化された技術によって、全ての人のデータと資産を確認し、力を与えるネットワーク形態を指します)という概念が誕生して以来、これをWeb2の終焉と見なす人がいます。まるでWeb2が邪悪な竜で、Web3がそれを救う騎士であると。彼らの目には、Web3が次第にWeb2を代替するように映っているようです。

関連:Web3は能動的な「表現者経済」をつくる|Ontology寄稿

しかし私は、こうしたことは今後起こり得ないと考えています。『WIRED』アメリカ版創刊編集長のケヴィン・ケリー氏も、存在する限り高い確率で消滅しないことを意味する「キャンドル・エコノミー」という視点を提唱しています。電球が普及している今でも、ろうそく(キャンドル)の生産量は人類史上最大量を記録しています。

私は、Web3とWeb2の最終的な結末は「共存」であり、この割合は決して小さくないと考えます。両者は、おそらく互いの中に少しずつ存在することとなり、Web3が20%、50%、あるいは80%を占めるかもしれません。この過程は、Web2とWeb3間の双方向の旅でなければなりません。Web3は、ある人達が特定の物事や人間関係を扱う際のツールとなるでしょう。

私がこのように考える大きな理由としては、世界中の全ての国家が中央集権的な存在であるからです。国家は法律を通じて、人々に様々な権利を与えています。人々が問題に直面した際には、政府の行政や政府が持つ手段によってこうした問題が解決される必要があります。

先日明らかとなったThree Arrows Capital(3AC)の破綻のようなブロックチェーン関連の問題にしても、最終的には法的措置が取られます。各国が効率化のためにブロックチェーン技術を活用することはあっても、純粋なWeb3によるアナーキー(無政府状態)を認めることは想像できません。

関連:大手ヘッジファンド「Three Arrows Capital」、ビットコインのポジションを強制清算か=FT報道

第二に、Web3がもたらす不便を喜んで受け入れる人がどれだけいるのかという問題があります。簡単な例で言うと、自分のウォレットの秘密鍵を長期間保管できる人がどれだけいるのでしょうか。Web2の世界では、様々な方法で自分のアカウントを復活させることができますが、Web3の世界では全て自己責任となります。

DAOの進化

DAO(自律分散型組織)はWeb3の下で新しく登場した組織形態ですが、自律型組織はそうではありません。社会的動物である人類は、大昔から採取・狩猟・流通などを分業して自律型組織を構築してきました。現代では、人類のニーズの高まりと共に、こうした自律型組織がより豊富に、より細分化されてきています。

自律型組織はボトムアップ型であり、集団は共通の目的のために自律型組織を構築し、組織内で役割を分担します。DAOは、本来の自律型組織をベースに匿名性・透明性という属性を加え、ガバナンストークンの投票を通じてプロジェクトの意思決定や戦略に影響を与えます。最終的に、トークン保有者はプロジェクトの利益を直接享受することができます。

ガバナンストークンとは

ガバナンストークンとは、分散型プロトコルの運営について、ユーザーをはじめとする関係者が投票するためのトークンである。

仮想通貨用語集

これは現在の株式会社と似ていますが、DAOの大きなメリットとして、トークンによるリターンがブロックチェーンとスマートコントラクトによって保証され、契約や会社法に縛られない点が挙げられます。

しかしDAOには、意思決定の効率性が悪いという問題点もあります。DAOの意思決定には、プロジェクトコミュニティでの十分な議論とガバナンストークンによる投票が必要な場合が多いからです。これは、スタートアップのプロジェクトにとっては致命的となります。コアチームであれば、たった2時間のミーティングで意思決定を行うことが可能ですが、DAOの場合、下手をすれば何週間も議論と投票に時間を費やし、その間にチームメンバーも議論と説明に労力を割く必要があります。

さらに困ったことに、トークン保有者の中には、早期にプロジェクトからの利益を得たいと考え、長期的な目標から目を背けてしまう短絡的な人も少なくありません。また、プロジェクト当事者自身が最大のトークン保有者であるため、DAO自体が形骸化してしまうという状況もあります。いずれにせよ、DAOはプロジェクトによって益となるよりも害となるかもしれません。

DAOの実践という観点では、「MakerDAO」が良い例かもしれません。プロジェクトの初期段階では、急速に変化する仮想通貨業界に対応するために、DAOを集中型意思決定モデルにすることで意思決定プロセスをスピードアップさせました。プロジェクトが成熟してくると、プロジェクトをモジュール単位に分割します。徐々にDAOへ形態を移し、最終的にはコミュニティによって管理され、多くの人々の要求に応えられるようになります。

関連:初心者でもわかるDeFiプロジェクト「Maker」とは|特徴や仕組みを解説

DAOは、プロジェクトそのものに奉仕すべきものであり、DAOを選択するかどうかは、プロジェクトの目標をより効率的に達成できるのかで判断すべきです。プロジェクトの段階によって、より適切な組織形態を選択することができます。

関連:DAOはWeb3における次のカギになる|Ontology寄稿

プロダクトのイノベーションと反復

プロジェクトのトークン発行や流通における文脈でのWeb3と、ブロックチェーン技術そのものにおけるWeb3とでは、それぞれ同様のものではありません。Web3を本当に実現できるのは、プロダクトやアプリケーションであり、Web3を普及させることができるのは使い勝手の良いプロダクトです。Web3原理主義者を除けば、大多数のユーザー層は、Web3と銘打ったからといって、そのプロダクトを使うわけではありません。ユーザーの課題を解決し、Web2よりも優れたユーザー体験を持つプロダクトでなければ、多くのユーザーを魅了することはできません。

Web3が解決できる問題はあるのでしょうか。残念ながら、現在普及しているアプリケーションのほとんどは、ユーザーがお金を稼ぐためにしか使われていないのが現状です。確かに金融系プロダクトは、最も広く使われているソリューションではあります。第三者による承認が不要な決済、送金、取引、融資、流動性マイニングなどは、ユーザーの資産効率を大幅に向上させることができます。しかし皮肉なことに、店頭取引(OTC)で仮想通貨を法定通貨に換金する場合、やはり第三者が取引相手を監督して取引を保証する必要がでてきます。

OTC取引とは

OTC取引とは、売り手と買い手が1対1で行う取引を指す。

仮想通貨用語集

またWeb3は、信頼性、権利確認、認証、レピュテーションといった問題も解決することが可能です。ブロックチェーン上の情報の不変性とトレーサビリティを利用することで、Web3プロダクトは、これらの問題を解決できる優れたソリューションとなります。

Web3の課題の1つは、オフチェーン情報(ブロックチェーン上に直接記録されていない取引情報)がオンチェーンに移動したときに、その情報の信憑性をどのように担保するのかであり、そうでなければ、情報の信頼性は狭義のオンチェーン上でしか維持されません。信頼できるデータソースの利用、最適化されたメカニズムやアルゴリズムによって、こうした課題はある程度解決できます。

また、Web2のデータ所有者との協力もこのプロセスに関わってくるでしょう。私は、まずWeb2企業と協力してプロダクトを開発し、協力の過程の中で常にユーザーが抱える課題を解決し、このプロセスを迅速に反復することを提案します。分散化の度合いを高めることは、あくまでもユーザーの課題をよりよく解決するための手段であって、目的ではありません。

Web3がWeb2よりも優れたユーザー体験を提供するためには、特にゲームやソーシャルプロダクトで同じような課題があります。一時期話題となったブロックチェーンゲームやソーシャルプロダクトは、実際にプロダクトがどうあるべきなのかを考えているのでしょうか。Web3プロダクトは、トークンエコノミクスでユーザーの利用を刺激する前に、本当にユーザーのニーズを満たしていると言えるでしょうか。

Web2の世界でもWeb3の世界でも、本質的なユーザー体験は同じです。なぜなら、ユーザーは皆人間であり、全てのインタラクションの背景には人間の本質があるからです。Web2プロダクトは、20〜30年の開発期間を経て成熟している一方、Web3プロダクトはフロントエンドの体験において、ユーザーの学習コストを可能な限り削減して、ユーザーの習慣に適合させる必要があります。もちろん、ブロックチェーン技術との組み合わせのため、Web3プロダクトはユーザー体験の最適化において非常に挑戦的であると言えます。

Web3プロダクトのユーザー体験を最適化する別の方法として、Web2をベースとしたプロダクトをWeb3へ寄せるという方法があります。例えば、Web2プロダクトではウォレット接続に対応し、アドレスが持つNFT(非代替性トークン)に応じて何かしらの権利や利益を与えるプロダクトが増えてきています。こうした動きはWeb3にとってポジティブなことであり、Web3プロジェクトにとっては、プロダクト開発のアイディアを得られるだけでなく、競合他社を増やすことにも繋がります。

テクノロジーとインフラのサポート

「天才的な」ひらめきがないことに加え、優れたプロダクトが生まれない背景には、現在の技術がそうしたプロダクトをサポートできないことが理由として挙げられます。ブロックチェーン技術は、Web3を実現するための重要かつ必要な技術の1つとして認識されています。

また、ブロックチェーンソリューションのインフラやキャリアとして、パブリックブロックチェーンは常に開発の焦点の1つであり、最も利用されているパブリックブロックチェーンの代表格がイーサリアム(ETH)です。しかし、イーサリアムも長い間スループットが低い、ガス代が高い、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)のバージョンアップが何度も延期される、シャーディングの隔たりが大きい、など多くの課題に直面しています。

もちろんイーサリアムだけでなく、他のパブリックブロックチェーンも常にイノベーションと反復を繰り返し、新たなパブリックブロックチェーンが次々と誕生しています。サイドチェーン、レイヤー2、非EVM系のチェーン、Meta関連のチェーンなどにはそれぞれ特徴があり、プロジェクトはその特徴を加味してパブリックブロックチェーンを選択しなければなりません。

Web3の実現には、ブロックチェーン技術に加え、プライバシーコンピューティング、5Gネットワーク、ゼロ知識証明、人工知能などの技術的ブレークスルーが必要です。これらの技術がWeb3のニーズを満たした時、初めてWeb3アプリケーションは爆発的に普及するでしょう。

関連:オントロジーが構築する、ユーザー所有権を通じた分散型社会|Ontology寄稿

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