最高裁が合憲判決を下す
南米エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は15日、2024年に再び大統領選に立候補する計画であることを発表した。同国の全国紙La Prensa Gráficaなどが報じた。
同国では大統領の2期連続での出馬は憲法上禁止されていたが、数日前に最高裁判所が合憲であるという判決を下し、法律上、再出馬が問題なく行えるようになった経緯がある。
ブケレ大統領は、2019年に「国民統合のための大連合」 (GANA) から立候補し大統領として当選。
暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)の支持者として知られており、ビットコインを法定通貨とする「ビットコイン法」を推進。同法案は昨年6月にエルサルバドル議会で可決され、9月から、政府としてビットコインの購入(買い増し)が行われている。
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エルサルバドルとしては、「ビットコイン・シティ」の建設やビットコイン債券の発行といった、仮想通貨購入以外の計画も構想しているが、債券については、6月に同国のAlejandro Zelaya財務大臣が「今はビットコイン債を発行するタイミングではない」とコメントしており、実質的な保留状態となっている形だ。
大統領は支持率を維持しているが、ビットコイン購入戦略が国の財政状態に与えた影響や、透明性の欠如を理由に批判にさらされていると、CoinPost提携メディアのThe Blockは解説している。
約半年で2回格付けを引き下げ
ブケレ大統領が再出馬を発表した15日、米格付け企業フィッチ・レーティングス(Fitch Ratings)は、エルサルバドルの外貨建て長期発行体デフォルト格付け(IDR)を「CCC」から「CC」に引き下げたことを明らかにした。
同社は2月に同国の格付けを「B-」から「CCC」に変更しており、約半年で2度の引き下げを行った形となる。
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今回の格付け引き下げの理由について、フィッチ・レーティングス社は、「エルサルバドルの財政と対外流動性の状況が厳しく、市場アクセスが極めて制約されており、何らかのデフォルトの可能性が高いとフィッチが見ていることを反映したもの」と、プレスリリース上で述べた。
同社は、ビットコイン法の成立前の8月、ビットコインの採用は、為替リスクや収益の変動リスクを高めると共に、規制や運営面でのリスクも考えられるため、エルサルバドルの保険会社にマイナスの影響をもたらす可能性が高いと分析していた。過去2回の格付け変更は、その見解を反映したものと言えるだろう。
85億円の含み損か
22年9月、エルサルバドルが初めてビットコインを政府として購入してから約1年が経過した。
ブケレ大統領がツイッターで公表するビットコイン購入情報を集計する「Nayib Bukele Portfolio Tracker」によると、現在までにエルサルバドルは合計150億円(1.07億ドル)を投じて2,381 BTCを購入。
平均取得単価は660万円(45,820ドル)。ビットコイン相場が下落していることから、投資パフォーマンスは大幅なマイナスだ。
執筆時、エルサルバドルのビットコイン投資パフォーマンスは-55.79%と見られ、全て保有し続けている場合は-85億円の含み損を抱えている計算となっている。