はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

NFTアーティスト契約書を締結する意義と留意点とは Gamma Law法律事務所寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

NFTアートにおける契約の意義

この数ヶ月にわたり、知的財産権に関連する法的問題が大きく報道され、中には人気のあるNFTプロジェクトが中断されるケースも出ています。NFTプロジェクトが成功するかどうかは、NFTアーティスト契約書がいかに適切に作成され、当該契約書の中で、NFTをミントする人物のオリジナルアートの使用条件についていかに明確に定義されているかにかかっていると言っても過言ではありません。

本稿では、NFTアーティストが締結すべき契約書の主要条項と、NFTのミントを実施する関係者やアーティストが自らの権利を守るために知っておくべき重要なポイントについて解説します。

NFTアーティスト契約の意味と重要性

NFTアーティスト契約書とは、音楽などを含む芸術作品を創作した知的財産の権利者が、報酬と引き換えにその作品を基盤とするNFTをミントした人物に一定の権利を付与する条件を記載した法的文書です。媒体を問わず、アーティストが自らの作品を無許可の複製や販売から保護する一方で、その商業化に参加したいと考えるのは合理的です。

NFTアーティスト契約は、例えばスポーツチームのロゴやアニメのネズミを描いたTシャツを制作・販売する際の、従来およびデジタルメディアで使用されるライセンス契約に相当するものです。ライセンス付与の範囲を事前に定義することで、NFTミントを実施する人物とアーティストとの間の紛争や対立のリスクを低減します。

この契約は様々な呼ばれ方をしており、非代替性トークン・デジタルアート・コミッション契約、NFTアートワーク・コミッション契約、NFTデジタルアーティスト・コミッション契約、デジタルアート契約、アーティスト・コミッション契約、ライセンス契約などの名称がつくこともあります。

NFTをミントする人物や開発業者が、自らが所有していないアートワークに基づくNFTを作成するにもかかわらず、事前に署名入りのNFTアーティスト契約を取得しなかった場合、そのアートワークの著作権、商標、その他の知的財産権に関わる紛争を招く可能性があります。

例を挙げると、最近、あるアートコレクターが、著名なインド人アーティストM.F. Husainの絵画「Lightning ( 又は、The Guernica of Indiaとも呼ばれる)」の権利を明らかにするためにニューヨークの連邦裁判所に訴訟を起こしました。このアートコレクターは、60フィートの壁画を購入し、それを元にしたNFTを販売する予定でした。

一方、画家のエステートは、絵画を購入してもこの計画を実行するのに必要な権利は譲渡されないと主張し、異議を申し立てました。売買契約書にはNFTの権利に関する言及がないため、コレクターが作品を購入した際に実際に何が手渡されたのか、各当事者の立場を明確に判断する方法がないのです。

NFTアーティスト契約における主要条項

強力で包括的なNFTアーティスト契約には、契約の範囲、各当事者の権利と義務、当事者間の関係、契約期間、著作権者などが明記されています。

契約の範囲

NFTアーティスト契約には、少なくとも、ライセンス付与または購入されるアートワーク、契約期間、契約と引き換えにアーティストが受け取る手数料、ロイヤリティーまたはその他の対価、および、実施許諾者(ライセンサー)が作成したNFTの使用について許可されている内容について明確に記載されている必要があります。

当事者間の関係

多くの場合、NFTをミントする人物は、アーティストに職務著作(ワークフォーハイヤー)ベースでアートワークを委託します。 この場合、NFTミントを実施する人物は、委託を行う当事者または代理人とみなされ、アーティストは、ミントの実施者が所有する製品を製造する請負業者として機能します。

同様の構造としては、企業が社内のイラストレーターやグラフィックアーティストを使用して、NFTにミンティングされる作品を制作させる場合があります。この場合は、雇用主と従業員の雇用関係が優先され、従業員はNFTに対して権利を有しません。

また、ケースによっては、それほど単純明快ではないこともあります。知的財産権者やアーティストは、所有する作品に基づくNFTの制作、展示、マーケティング、販売、その他の活用を、様々な提携関係に基づいて第三者に依頼することができます。これには、前払い、ロイヤリティー分配、利益配当、オプションなどの高度な取引が含まれる場合があり、実績のあるNFT専門弁護士に依頼することが望ましい場合があります。

権利と義務

ライセンス契約では、アーティスト、NFTミントの実施者、および作成されたNFTを購入した人物が履行しなければならない義務や受け取る報酬を記述する必要があります。

契約書には通常、アーティストがアートワークの物理的またはデジタルのコピーを作成できるかどうか、アートワークを他者にライセンス付与できるかどうか、アートワークを基盤としたNFTのオリジナルまたはその後の販売に対してロイヤリティーを受け取ることができるかどうかが明記されます。

また、契約書にはミント実施者が一定期間、NFTの独占権を保持できるか、その販売価格を決定できるか、付与された権利をサブライセンスできるかについて規定する必要があります。

アーティストの義務としては、高品質のアートワークの制作、期限内の納品、その制作において第三者の権利が侵害されないようにする義務が含まれる場合があります。契約書には、NFTミント実施者によるアーティストへの支払い方法と時期が明記されるべきであり、常に作品をアーティストや作者に帰属させ、派生作品においてもアーティストの芸術精神および評判を維持することを義務付けることができます。

著作権

NFTアーティスト契約において、著作権者について十分に定義されていない場合、重大な問題を引き起こすリスクがあります。

裁判所は、オリジナル資産の著作権について、NFTをミントした人物、購入者、ライセンシーには自動的に譲渡されないと判断しています。アーティストは、著作権の譲渡、特定目的でのライセンス付与、NFTの使用を制限する権利を保有します。

なお、NFTをミントした人物が、これらの権利のいずれかをアーティストから譲渡されることを望んでいる場合、その旨をNFTアーティスト契約書に明示的に記述しなければなりません。一方、そうでない場合、オリジナルアート作品を作成したアーティストが著作権を保持します。

管轄

NFT関連法はまだ初期段階にあり、各州や国がそれぞれ規制を設けて前例を作っているため、NFTアーティスト契約には、紛争が生じた場合にどの管轄が妥当するかを明記することをお勧めします。NFTをミントした人物に有利となる司法当局もあれば、アーティスト側に有利となる傾向がある司法当局もあります。アーティストの居住国やライセンスを付与する企業の所在地は、管轄の決定に重要な役割を果たします。

賠償責任

NFTを取り巻く規制はいまだ進化しているため、NFTアーティスト契約書には、各当事者が義務を果たせなかった場合の結果を示す条項を含めることが重要です。つまり、各当事者の予見可能性を超えた要因によって、損害が発生する可能性を考慮する必要があるのです。

例えば、管轄区域が新たな規制を制定し、NFTのミントが困難または違法となる場合、また、自然災害によりアートワークの作成またはNFTミントの手段が失われる場合もあります。

NFTの作成、販売、ミント、開発を計画する企業や個人は、アーティストとのNFTアーティスト契約の作成および締結により、常に自らの権利を保護し、責任を明確にする必要があります。NFTアーティスト契約は複雑な文書となる可能性があるため、NFTおよび関連分野の契約についての経験が豊富な弁護士に作成を依頼するのが最善です。多くのNFTアーティスト契約は、アーティスト側またはNFTミントを実施する者のいずれかによって作成されるため、両当事者の利益が十分に保護されていない可能性があることに留意するべきでしょう。

寄稿者:David Hoppe(デイビット・ホッピ)David Hoppe(デイビット・ホッピ)
Gamma Law(ガンマ法律事務所)代表。デジタル・メディア、ビデオゲームとバーチャル・リアリティーを専門分野とし、最先端のメディア、テクノロジー関係の企業を、25年近くクライアントとしてきました。彼は、洗練さと国際的な視点を兼ね備え、スタートアップ業界、新興企業、またグローバル化使用とする企業の現実を、実践経験から理解する国際的な取引交渉弁護士です。
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
05/20 火曜日
13:10
個人ノード運用を容易に、ヴィタリックの新たなイーサリアム拡張案とは
仮想通貨イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が新L1スケーリング計画を発表。個人のノード運用を容易にする「部分的ステートレスノード」でガスリミットを10~100倍に拡張する革新的アプローチを提案。
12:35
米上院、ステーブルコイン規制『GENIUS法案』の審議進行可決
米上院が仮想通貨ステーブルコイン規制法案「GENIUS法案」の審議を66対32で可決。消費者保護や倫理規定を強化した修正案で超党派合意が進展。
11:59
ビットコイン下髭で押し目買い意欲旺盛か イーサリアムにも機関投資家の強い関心
過去最高値の更新まで目前のビットコインは米国債格下げなど不透明感のある中、下髭形成し押し目買い意欲の強さを示した。50日・200日移動平均線のゴールデンクロスが目前に迫る中、イーサリアムには機関投資家の資金が集まり、CMEグループのXRP先物は初日に1,560万ドルの取引高を記録した。
11:20
SEC新委員長、仮想通貨規制を全面見直し
SEC新委員長ポール・アトキンス氏が仮想通貨規制の抜本的見直しを表明。前政権の執行措置を批判し、発行・保管・取引の3分野で明確なガイドライン策定へ。
10:35
リップル社、UAEの金融企業2社と提携
リップル社は、UAEのZand BankとMamoの2社が顧客になったことを発表。両社はリップルペイメントを使用すると説明しており、中東市場の事業を強化していく。
10:05
ソラナの新コンセンサスプロトコル「Alpenglow」提案 性能引き上げへ
ソラナ開発スタジオAnzaが新コンセンサスプロトコル「Alpenglow」を発表した。処理時間を理論的に約150ミリ秒まで短縮し、Web2と競合できる高速処理を実現するとしている。
08:45
ビットコイン急騰、米国債格下げと州法により"安全資産"化|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは史上最高値となる10万9,000ドル付近まで上昇している。米国債の格下げを契機として米国の信用力に対する懸念が台頭し、ドル安が進行した。
08:02
ステーブルコイン大手サークル、コインベースとリップルから買収アプローチ=報道
USDC発行元のサークル社が50億ドル以上の企業価値での買収提案を複数社から受けている。リップルとコインベースからアプローチされ、IPO計画と並行して検討中か。
07:45
過去最高515億円含み益達成、エルサルバドルのビットコイン投資
エルサルバドルが保有するビットコインが515億円の含み益を達成。国際通貨基金との合意に反してビットコイン蓄積を継続中。
07:25
コインベース顧客情報流出事件、米司法省が捜査開始=報道
米司法省が仮想通貨取引所コインベースの顧客データ流出事件について刑事捜査を開始。インド拠点従業員への贈賄による情報漏洩で、ハッカーが2000万ドルの身代金を要求していた。
06:40
ストラテジー社とセイラー氏、ビットコイン投資の収益性めぐり投資家から集団訴訟
ストラテジー社とマイケル・セイラー会長が、仮想通貨ビットコインの投資戦略の収益性について虚偽の説明をしたとして投資家から集団訴訟を起こされた。
06:15
Bybit、USDT使用の株式取引開始 ストラテジーなど78社が対象
仮想通貨取引所Bybitが株式取引機能をGold & FXに追加。ストラテジーやコインベース、マグニフィセント7を含む78社株式をUSDTで取引可能。CFDモデル採用で実株保有は不要。
06:05
SEC、ソラナ現物ETFへの決定を延期 21SharesとBitwiseが対象
米証券取引委員会が21SharesとBitwiseのソラナETF提案について決定期限を延期し、パブリックコメントを求めると発表。Canary、VanEckも含む複数企業が仮想通貨ETF承認を競う中、SECの審査が本格化へ。
05:45
米メガバンクJPモルガン、顧客のビットコイン購入を許可
CNBCによると、JPモルガンのダイモンCEOが顧客によるビットコイン購入を許可すると発表。長年の仮想通貨批判にも関わらず顧客選択の自由を重視。
05:35
1100億円相当のビットコインを買い増し、セイラーのストラテジー社
米ストラテジー社は19日夜、2025年5月12日から18日の間に総額1,100億円を投じて、7,390 BTCを購入したことを報告した。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧