ビットコインにZKロールアップ
暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)のブロックチェーンに、ZKロールアップ型のレイヤー2ソリューションをもたらすコンセプト「Validity Rollups(VRUs)」が提案された。
ビットコイン向けZKロールアップ技術の研究者としてヒューマンライツ財団(HRF)とStarkware(ゼロ知識証明ソリューション開発企業)から支援を受けるJohn Light氏は12日、論文「Validity Rollups on Bitcoin」を公開した。
HRFとは
ヒューマンライツ財団は、世界的に人権の促進と保護に取り組む非営利団体。2020年に、世界中の人権活動家、市民社会組織、ジャーナリストのための金融ツールとしてより機能するよう、ビットコインネットワークをよりプライベートで分散化し、弾力的にするソフトウェア開発者を支援するための基金を立ち上げた。
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Light氏によると、Validity Rollups(VRUs)によりL1ブロックに保存する情報を極小(12バイト)にとどめるため、ビットコインの取引処理能力を最大100倍向上できるという。混雑しがちなビットコインブロックチェーンの外で取引を行うことができ、取引の高速化や手数料削減につながる。
Key findings with regards to VRUs on bitcoin:
— lightcoin.btc (@lightcoin) October 11, 2022
– VRUs could enable up to 100x more throughput than L1 with no block size limit increase required and no increase (maybe even a decrease!) in full node verification costs (blocks will tend to be fuller than they are today, though).
現在、ビットコインは1秒間に平均7件のトランザクションを処理(TPS)しており、VRUs実装により秒間700件以上に増やす可能性がある。
ZKロールアップはトランザクションを集約してオフチェーンで処理し、生成した暗号証明のみを親ブロックチェーンに保存する技術。ゼロ知識証明というメカニズムを利用し、処理コストの高いデータをオフチェーンで処理することによってコストを大幅に削減する特徴を持つ。
Light氏は、すべてのZKロールアップがゼロ知識証明を使用しているわけではないとして、「Validity Rollups(有効性ロールアップ)」を提唱しているが、基本コンセプトは上記とほぼ同義だ。
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ライトニングネットワークとの比較
ビットコインのセカンドレイヤーとしては「ライトニングネットワーク」が先行しているが、取引相手同氏が決済チャネルを設置し、十分な流動性を管理し続ける必要がある。よりトラストレスな設計のValidity Rollupsの方が資本効率や使い勝手が良いと主張されている。
論文によると、実装にはまずビットコインのフルノードに有効性証明(Validity Proof Verification)を検証する機能を持たせる必要がある。またビットコインのスクリプト言語で使用するOpcode(オペコード)に、「再帰的誓約(Recursive Covenants)」を追加する。後者はスマートコントラクトの一種で、ロールアップとL1の資金の出し入れを制限するのに使用される。
主な課題はビットコインには中央機関が存在しないため、その仕様がビットコイン改善提案 (BIP) を通じてコミュニティの同意を得る必要があること。ビットコイン開発者のTrey Del Bonisを含め、再帰的誓約についてビットコインコミュニティで長年議論されてきたが、有力なビットコイン改善提案(BIP)はまだ無い状況だ。
Light氏は、ビットコインのサイドチェーンプロジェクト「Liquidブロックチェーン(Elements)」を挙げて、有効性証明は無いが再帰的誓約は既に備えていることを指摘。Validity Rollupsのテストネットとして活用できると主張した。
本レポートは、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏、後述するTrey Del Bonis氏など、ブロックチェーン業界の著名人からのフィードバックを得て作成された。
Validity Rollupsの提案はメーリングリストを介して通知され、コミュニティからフィードバックを集めている。Liquidを手掛ける大手ブロックチェーン開発企業Blockstream社は、簡潔な技術仕様と機能の理論的根拠を提供するよう要求している。
概ね実装までには長期間かかると見られているが、仮に実装に向けて動き出すとなればアンチ・マネー・ローンダリング(AML)法を初めとする規制との折り合いも重要となる。Validity Rollupsの実装は、ビットコインにプライバシープロトコル(取引の秘匿化技術)を追加することになるため、トランザクションを追跡困難にするからだ。
ライトニングネットワークとは
ビットコインのトランザクション処理能力を解消するため、レイヤー2を利用したオフチェーン技術のこと。取引の高速化や手数料削減が実現すれば、少額決済が行えるようになるため、それによって新しい商品やサービスが生み出されることも期待されている。
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