デジタル人民元を公式統計に含める
中国人民銀行(中央銀行)は、中国独自の中央銀行デジタル通貨(CBDC)である「デジタル人民元(e-CNY)」を、通貨流通量の公式統計に含める方針を発表した。2022年の財務統計報告によると、同年12月から初めて、e-CNYの流通量が通貨流通量(M0)に含まれるようになった。
「M0」とは中央銀行が保有する現金と準備金で、マネーサプライの指標の一つ。12月末時点でのe-CNYの流通量は、136億1,000万元(約2,646億円)で、M0全体(10兆4,700億元/約204兆円)の0.13%を占めた。
また、マネーサプライの広範な指標として注視されるM2(現金、預金通貨及び準通貨の合計)は、12月末時点で266兆4,300億元(約5,187兆円)であり、e-CNYの占める割合は、0.005%に過ぎない。人民銀行はe-CNYを統計に含めても、M1及びM2の伸び率に顕著な影響は見られないと総括した。
デジタル人民元とは
2014年より中国の中央銀行が開発しているCBDC。e-CNYやe-Yuan、DCEP(Digital Currency/Electronic Payment)などとも呼ばれる。
2020年後半より、中国各地で大規模な実証実験が行われている。
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CBDCの普及推進
中国ではe-CNYの導入が各地で進んでいる。
2021年には首都北京の地下鉄で、e-CNYが切符の購入や交通機関のカードへのチャージなどを含む決済手段として、正式に使用可能になった。北京地下鉄には1日約1,000万人の利用者がいるとされている。
また、昨年1月には、中国で最も高い利用率を誇るモバイル決済アプリWeChatペイが、e-CNYへ対応する方針を発表した。
香港の英字新聞South China Morning Postによると現在、26都市と560万の加盟店でe-CNYの試験運用が行われており、昨年8月末時点での累計取引額は1,000億元(約1兆9,485億円)に達した。
中国の地方政府もe-CNYのバウチャー(引換券)を提供している。浙江省の温州市では来月、3,000万元(5億8,460万円)相当のバウチャーを提供する予定だという。
また今月8日、患者の強制的な隔離措置などを撤廃し、これまでのゼロコロナ政策の終了を発表した中国だが、ポストコロナの経済回復には消費が鍵を握るとみられており、影響を受けた世帯にe-CNYを配布する可能性が指摘されている。
北京大学国家発展研究院のYao Yang学長は、政府の補助金支給にデジタル人民元が使用されることは、「CBDC普及の絶好のチャンスであり、一石二鳥の優れたツールになる」との考えを示した。