中国拠点について不正確な説明か
暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスは複数年にわたり、中国拠点での活動を公表情報よりも広く行っていたと伝えられる。フィナンシャルタイムズが29日に報じた。
バイナンスの内部文書によると、チャンポン・ジャオ(CZ)CEOなど同社の幹部は、従業員に対して、同社が中国に構えている一部事業所の存在について隠すよう指示していたという。
これには、2019年末まで使用されていた中国のオフィスと、一部の従業員の給与支払いに使用されていた中国の銀行の存在が含まれていた。
中国オフィスについては、2019年まで、上海にあるオフィスなどで、従業員のトレーニングやイベントを行っていた形だ。データアナリストや清算専門家などのスタッフも雇用していたという。
バイナンスの従業員の入社時の文書では、中国在住の新入社員は、自分のデバイスにVPNをインストールして、自分の所在を隠すように指示していたとされる。
CZ氏は、2022年時点で、2018年後半までに中国に残っていたのは「少数のカスタマーサービスエージェント」だけだと述べていた。CZ氏は中国で生まれたが、幼少期にカナダに移住し、カナダの市民権を持っている。
仮に報道内容が事実だとすれば、CZ氏の言及よりは、実際に中国で展開していた部分がより長い間残っていた可能性がある。しかし、仮にその場合でも、中国による仮想通貨取り締まりへの対処のためなのか、法的遵守回避に関連するのか、動機は定かではない。
バイナンス側の主張
バイナンスは今回の報道内容について、中国が2017年に仮想通貨業界に対する取り締まりを開始した際に、「上海に拠点を置いていた創業チームメンバーは、会社が法人化される前に中国を去った」と述べた。「バイナンスが中国で法人化されたことはない」とも続けている。
中国に拠点を置く顧客サービスコールセンターで、世界の顧客にサービスを提供していることは認めている。「明確にしておくために」として、「中国政府は、他の政府と同様に、当社が正当な法執行機関の要求に応じる場合を除き、バイナンスのデータにアクセスすることはない」とも強調した。
バイナンスの広報担当者は、次のようにコメントしている。
匿名の情報源が、はるか昔の出来事を引用し、劇的なまでに事実を誤認しているのは残念なことだ。これらの主張は、バイナンスの事業運営に関する正確なイメージではない。
CFTCによる提訴
報道は、米商品先物取引委員会(CFTC)が27日、バイナンスとCZ氏ら幹部を提訴したことの関連でなされたものだ。
CFTCは、グローバル版バイナンスが、CFTCに登録を行わずに、米国でデリバティブ取引サービスを提供していたことなどを問題視。不正利得の返還や罰金、永久的な事業登録の禁止などを要求しているところである。
テロ資金供与対策(CFT)やマネーロンダリング対策(AML)などに関する基本的な手続きを行っていないなど、コンプライアンスルールが適用されない状態になっていたと指摘する格好だ
これに対してCZ氏は、バイナンスは「最高水準のコンプライアンス技術」を導入しており、複数の手段を活用して米国ユーザーをブロックしていると反論した。
CFTCとは
商品取引所に上場する商品や金利、デリバティブ全般など、米国の先物取引市場を監督する機関。1974年設立。市場参加者を保護し、市場の健全性を確保するため、不正の防止・摘発を行う。「CFTC」は「Commodity Futures Trading Commission」の略。
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