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『デジタル証券(STO)市場の発展はWeb3普及に欠かせない』|WebXレポート

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

デジタル証券化(STO)の未来

国内外で、発行・資産管理プラットフォームの構築を初めとするセキュリティトークン関連のインフラ整備の動きが活発化している。

日本では、金融庁が国内証券市場の活性化を目的にPTS(私設取引システム)の制度整備を進めており、取引上限規制の緩和やセキュリティ・トークン・オファリング(STO)などデジタル証券の台頭を踏まえた制度の見直しを図っている。

PTSの制度整備がなされれば、それを前提に発行市場(プライマリーマーケット)にも投資家が参加しやすくなるため、市場全体として拡大を遂げる可能性がある。

7月26日のWebXカンファレンス(Coinpostが携わるWebX実行委員会主催)では、「デジタル証券化(STO)の未来:規制環境とテクノロジーの進化の先に」をテーマに対談を実施。

Securitize Japan株式会社の小林 英至 カントリーヘッド、TMI総合法律事務所の成本 治男パートナー、大阪デジタルエクスチェンジ株式会社の朏 仁雄 代表取締役社長、野村ホールディングス株式会社の沼田 薫 デジタル・カンパニー担当 執行役員が参加した。

一般社団法人日本セキュリティトークン協会の増田 剛代表理事がモデレーターを務めた。

STO市場の現状

証券化トークン(STO)の市場規模は、2023年3月期には前年度から倍増し348億円に達したと、野村ホールディングスの沼田氏が明らかにした。リゾートホテル、物流倉庫、マンションといった不動産を小口化する実例が増え、2022年には野村HDとして不動産のセキュリティトークンを4件の実績。現在はタワーマンションのSTOが進行中で、過去最高額の134億円募集目標に挑んでいる。

一方、Securitize Japanの小林氏は、野村HDとサポートしている「丸井」の自己募集を例に、STOが顧客と直接つながるメリットを生かし、ファイナンスとマーケティングを組み合わせて事業をスケールさせるモデルを説明した。

自己募集とは、有価証券の発行者が自ら新たに発行される有価証券の取得勧誘を行うモデル。金融商品取引法によって一部の有価証券の取引が金融商品取引業として規制されているため、野村HDが金商法に基づく開示規制やシステム、金融知識の提供を通じてSTO実現をサポートしている。

小林氏は、STOによるカスタマーエンゲージメントや企業支援の側面では、日本が世界をリードしていると語った。具体的には、カゴメ株式会社が2023年1月に発行したデジタル特典付き社債「愛称:カゴメ 日本の野菜で健康応援債」の事例を挙げた。

TMI総合法律事務所の成本氏は、カゴメのようなSTOの事例が増えることで、個人投資家も社債や不動産証券を身近に感じるようになると指摘した。この種のSTOは、発行体にとって現金としての利回りを抑制しながらも新たな魅力を生み出す利点があると語った。

さらに、ソニー銀行が投資用不動産ローン債権を裏付けとしたセキュリティトークンの発行を行った事例を挙げた。元本保証度が高く、低利率のデットファイナンス(有利子負債による資金調達方法)に近い性質を持つ証券、これに特典を付与する形のSTOが今後のトレンドとなると予測した。

STO市場発展のポイント

大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)の朏(みかづき)氏は、同社が運営する私設取引システム(PTS)で、2023年11月に証券化トークン(STO)のセカンダリー市場を開設することを目指していると述べた。現在、大阪DXの株主であるSBI、SMBCグループ、大和証券、野村などの証券会社、デジタル資産発行プラットフォーム(例:Progmat)とともに、セキュリティトークンの共通化に取り組んでいる。

朏氏によれば、証券の換金の場は投資家の投資機会を生むと同時に、証券会社にとっても次の販売活動を促す利点がある。このような流通市場の整備は、プライマリー市場の発展や長期債の発行にも重要だと言及した。

野村HDの沼田氏は、今はまだ各案件ごとに利害関係者と調整しながら前進している段階であり、プラクティスが確立することで、不動産など現在主軸となっている領域以外の案件も増え、業界が盛り上がると指摘した。

Web3とSTOの相乗効果

Securitizeの小林氏は、決済手段としてのステーブルコインやWeb3との融合が社会変革につながるとの見解を述べた。ブロックチェーンを活用したWeb3普及後の世界では、株式のトークン化によりリアルタイムで株主を把握し、店頭で株主証明を行って優待サービスを受けるという新たなユーザー体験(UX)が可能になると述べた。

TMI法律事務所の成本氏は、Web3を含むトークン化資産の普及(マスアダプション)に向けて、現実の資産に紐づくセキュリティトークンが入口になると語った。預貯金をステーブルコインに変えてウォレットに保管し、自動的に社債を運用して金利を得るMMF(マネー・マネージメント・ファンド)型サービスが新規投資家を引き寄せ、社会変革のきっかけになると予測した。

しかし、朏氏は、ブロックチェーンとWeb3のコミュニティが支持する分散型ネットワークの理念とは対照的に、セキュリティトークンの流通が「パーミッションドチェーン」(ネットワーク参加者が制限されるブロックチェーン)上で行われる点は否めないとの見解を述べた。高額な発行に際して仲介者(証券会社)の支援が必須となると指摘。さらに、金利、税務、規制、AML(反マネーロンダリング)、ハッキング問題など、まだ克服すべき課題が多く存在すると加えた。

朏氏はセキュリティトークン市場の近期のテーマとして、「取りはぐれ」を防ぐためのシステム、「DVP(Delivery Versus Payment、証券の交換と決済を同時に実行する)」の実現が重要であると述べた。

透明性や常時稼働性、取引の自動執行を可能とするブロックチェーンによってDVPのプロセスが強化され、取引の効率性と安全性が大幅に向上すると考えられる。

STOセカンダリーとしてのPTS

日本では2020年5月1日に改正金融商品取引法(金商法)が施行。ブロックチェーン等を活用して電子的に発行・移転ができる有価証券や権利は、「セキュリティトークン・デジタル証券(電子記録移転有価証券表示権利等)」と位置づけられ、その取扱いが明確化された。

しかし、デジタル証券のセカンダリー取引は、依然として証券会社での店頭取引が主流である。また、PTSに係る法令は20年以上も前の、まだインターネットが広く一般に普及していない時代に制定された規定となっており、規制の見直しが急務となっている。

金融庁は22年夏以降、PTSの機能向上に向けて金融審議会の作業部会で議論をスタート。PTS市場拡大の足かせとなってきた上限規制の緩和等と併せて、デジタル・トークン等新たな商品の安定取引に必要な市場機能や、デジタル証券など取り扱い商品に応じてPTSの認可基準を簡素化すること等が議題に上がっている。

関連:SBI主導の新PTS市場、大阪デジタルエクスチェンジとは|デジタル証券との関係を徹底解説

登壇者プロフィール

小林 英至。Securitize Japan株式会社 カントリーヘッド。米ブラウン大学・数理経済学学位、シカゴ大学・MBA取得後、メリル・リンチ・キャピタル・マーケッツのニューヨーク本社・投資銀行部門新卒入社、ゴールドマン・サックスを含め、約4年間のウォールストリート勤務。帰国後リーマン・ブラザーズ投資銀行部門SVP、ドイツ銀行、アメリカン・エキスプレス法人事業部門在日代表、マスターカード・ジャパン副社長、ウェスタンユニオン在日代表、欧州インシュアテック・スタートアップ在日代表などを歴任、2020年2月、Securitizeに入社。2022年8月、一般社団法人日本セキュリティトークン協会理事就任。 本社Securitize, Inc. Executive Committee Member。

成本 治男。TMI総合法律事務所 パートナー。ファンド・証券化等の伝統的ファイナンス分野において豊富な実績を有するとともに、不動産クラウドファンディングや不動産セキュリティトークンなどFintech・PropTech(不動産テック)の分野に多く携わる。現在、東京・シンガポールの2拠点で活動し、NFT、トークナイズドアセット、GameFi、トークンファイナンス、X to Earn、DAOなどのWeb3関連のプロジェクトや案件も多くサポートする。IFLR 1000のStructured finance and securitizationの分野でleading lawyer、またChambers Asiaの不動産部門・Fintech部門で選出。1998年早稲田大学法学部卒業。2000年東京弁護士会登録。著書に「アセット・トークンについて」(金融・商事判例増刊『暗号資産の法的性質と実務』、2021年3月、共著)など。

朏 仁雄。大阪デジタルエクスチェンジ株式会社 代表取締役社長。あおぞら銀行(旧日本債券信用銀行)にてコーポレートファイナンスに係るベースを積み上げ、ITX(旧日商岩井系IT関連事業・投資会社)にて幅広くベンチャー・買収投資に従事。銀行からベンチャーへ出向、渋谷の大型LEDディスプレイ設置プロジェクトに関りIT関連技術の知識を、買収後のIT会社等の経営に携わり、金融と事業会社のマネジメント双方での知見を得る。

ビットポイントジャパンにて暗号資産交換業のマネジメント、SBI証券に転じ日本初のSTO公募案件を主導。2021年より大阪デジタルエクスチェンジ代表取締役社長。2019年~2020年 JCBAにおいて ICO/STO部会長を歴任し、ICO/STOの規制に関する様々な提言を行う。

沼田 薫。野村ホールディングス株式会社 デジタル・カンパニー担当 執行役員。野村HDのデジタル・カンパニーは、社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める組織。新領域の新たなビジネス創出として「セキュリティ・トークン」に部門横断で取り組んでいる。

増田 剛。一般社団法人日本セキュリティトークン協会 代表理事。三菱重工業、Accenture、三井住友銀行、三井住友フィナンシャルグループを経て現職。株式会社ブロックチェーンハブ 代表取締役、英国Elliptic Enterprises(ブロックチェーン追跡監視)Country Advisor、 米国Geodesic Capita(l シリコンバレーVC)Fintech Advisor等、国内外スタートアップの役員・アドバイザーも務める。

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