マイニング収益が最低水準に
米金融大手JPモルガンは1日の調査レポートで、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)の1日あたりのマイニング収益と粗利益が、3ヶ月連続で低下したと発表した。ブルームバーグが報道した。
マイニング収益は8月、すでに3月のピークから57%減少し、11ヶ月ぶりの低水準に落ち込んでいた中、さらに収益が悪化した模様だ。
一方、ハッシュレートは3ヶ月連続で上昇し、643エクサハッシュ/秒(EH/s)となった。
JPモルガンの推計によると、9月のマイナーの1日あたりのブロック報酬による収益は、EH/sあたり平均42,100ドル(約600万円)で、前月より6%減少した。また、1日あたりの粗利益について同行のアナリストは、EH/sあたり16,100ドル(約230万円)で粗利益率を38.4%と見積もっている。
また、取引手数料は抑制されており、ブロック報酬の5%を超えることはなかったと指摘した。
ハッシュレートとは
マイニングの採掘速度のこと。日本語では「採掘速度」と表現される。単位は「hash/s」。「s」は「second=秒」で、「1秒間に何回計算ができるか」を表す。マイニング機器の処理能力を表す際や仮想通貨のマイニングがどれくらいのスピードで行われるかを示す指標として用いる。
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株価のボラティリティ
米国の上場マイニング企業14社は、時価総額の合計が200億ドル(約2兆8,780億円)を超えるまでに成長した。
しかし、4月のビットコインの半減期以降、マイニング企業の収益は減少しており、その株価はボラティリティが高い状態が続いていると、JPモルガンは指摘した。
例えば、米マイニング企業大手Hut8の株価は9月に21%上昇したが、CleanSparkの株価は同月、最大13%の下落を記録した。
JPモルガンは8月のレポートで、マイニング企業の株式の目標価格を引き下げた。
その主な理由として、同行のアナリストは「株式数の希薄化、ビットコイン価格の下落、ネットワークハッシュレートの上昇」を挙げた。
半減期とは
ビットコインなど仮想通貨のマイニング報酬(=新規発行量)が半分に減るタイミングを指す。仮想通貨にはインフレを防ぐために「発行上限」が定められているものが多く、一定周期で訪れる半減期の度に、新規発行量が半分に減る仕組みになっている。供給量が減ることで希少価値が大幅に上昇し、価格が高騰しやすくなるため、仮想通貨特有の注目イベントでもある。
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経営の多角化
見通しの立てにくいマイニング事業経営に加え、昨今のマイニング収益の減少が相まって、多くのマイニング企業が、事業の多角化に乗り出している。
米大手仮想通貨マイニング企業コア・サイエンティフィック(Core Scientific)は先月、AIデータセンターサービスの大規模な拡大計画を発表。アダム・サリバン最高経営責任者は、今後数年で同社の評価額が250億~300億ドル(3.5~4.2兆円)に引き上げられる可能性があると述べた。
コア・サイエンティフィックは6月に、GPUクラウドプロバイダーのCoreWeaveと12年にわたる契約を締結。CoreWeaveの高性能コンピューティング(HPC)運用のために、200MG相当のインフラを貸し出す。
前出のHut8は6月、次世代AI(人工知能)インフラプラットフォームの構築に向け、米投資企業Coatue Managementから1億5,000万ドル(約215億円)の戦略的投資を受けると発表した。
9月半ばには、ビットコインマイニング企業Cathedra Bitcoinが、マイニング事業を離れ、データセンターの開発・運営へと軸足を移すと発表。高密度コンピューティング・インフラ企業Kungsledenと合併し、データセンター事業を通して予測可能なキャッシュフローと資本収益を生成することができると見込んでいる。
また、同社はマイニングで獲得したビットコインを保持するとともに、データセンター事業の収益等により、ビットコインを購入する戦略に転換する。この戦略のモデルとなったのが、大量のビットコインの継続的な購入で知られる米マイクロストラテジー社だという。
マイクロストラテジー社は現在、25万2,220 枚(約2.4兆円相当)のビットコインを保有している。
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