
*本レポートは、暗号資産税金計算ツール「Gtax」を提供するAerial Partnersが、CoinPostに寄稿した記事です。
確定申告の仕組みや無申告時などのペナルティとは
資産運用のひとつとして、暗号資産(以下、仮想通貨)の人気が高まっています。しかし、確定申告についてよく知らないまま取引を続け、後から多額の追徴課税が課せられたというケースも少なくありません。
仮想通貨取引をするなら、確定申告の仕組みや無申告時などのペナルティについて知っておく必要があります。
そこで今回は、仮想通貨取引に関する確定申告が必要になるパターンや、こっそり取引していてもバレる理由、申告しなかった場合のペナルティなど、「知らなかった!」では済まされない仮想通貨の税金事情について深掘りしてみましょう。
どうなったら仮想通貨で確定申告義務が発生する?
仮想通貨は「売ったとき」や「交換したとき」などに利益が確定します。具体的に利益や所得が発生するのは、主に以下のタイミングです。
- 仮想通貨を日本円に換金したとき
- 仮想通貨同士を交換したとき
- 仮想通貨で商品やサービスを購入したとき
そして、実際に確定申告が必要かどうかは、仮想通貨で得た所得額と、給与所得の有無で判断が分かれます。もう少し詳しく見てみましょう。
1. 会社員など、給与所得がある場合
会社員など給与所得がある人で、以下のいずれかに当てはまる場合は、仮想通貨で得た利益について確定申告が必要になります。
<1年間の仮想通貨による利益が20万円を超えている>
1年間の所得が給与所得と仮想通貨による所得のみの一般的な会社員の場合は、仮想通貨での利益が原則として20万円を超えた場合に確定申告の義務が生まれます。ただし利益が20万円以下であっても、給与所得や退職所得以外の収入を得ていて、その合計額が20万円を超える場合も確定申告が必要となります。
<年間の給与収入が2,000万円を超えている>
一般的な給与所得者は会社が年末調整を行い、所得税を納めています。しかし、給与所得が2,000万円を超えると、年末調整では税金を完全に納めることができません。このため、仮想通貨の利益額に関係なく、毎年確定申告を行う必要があります。
2. 主婦や学生など、給与所得がない場合
専業主婦(夫)や学生、フリーランスなど給与所得がない人は、1年間の合計所得が基礎控除(48万円)を超えると、確定申告を行わなければなりません。よって、仮想通貨による年間利益が基礎控除を超えたら、確定申告の義務が発生します。
サラリーマンの仮想通貨取引の副業はバレる?
副業禁止の会社に勤めていたり、心情的に周囲に知られたくなかったりと「会社に内緒で仮想通貨取引をしているけれど、バレたくない…」という人もいることでしょう。しかし、以下のような流れで会社にバレてしまう可能性があります。
会社に副業がバレる仕組み
勤めている会社に副業がバレるのは、主に「住民税の金額が上がること」が原因です。
会社員の場合、住民税は通常「特別徴収」という形で給与から自動的に天引きされています。このとき、仮想通貨で多額の利益を得て税額が大きく増えていると、会社が受け取る住民税の通知書に反映され、経理担当者や上司が「あれ?やけに住民税が高いな…」と気づいてしまいます。
そして「もしかして副業で稼いでいるのでは?」と疑われてしまう恐れがあるのです。
徴収方法次第でバレずに済む
会社員の住民税は通常「特別徴収」という形で給与から自動的に天引きされている、とお伝えしましたが、確定申告の際は自分で銀行やコンビニから住民税を納付する「普通徴収」を選ぶことも可能です。
もし仮想通貨取引による副業がバレたくない場合、この普通徴収を選択すれば給与から天引きされなくなるため、会社に副業がバレるきっかけが少なくなります。
ただし、普通徴収に変更できるのは限られた条件に該当している場合のみで、会社員は原則として特別徴収が推奨されています。変更条件は市町村によって異なる規定を設けているため、気になる人はお住まいの地域に問い合わせてみましょう。
追徴課税はどれくらいの金額になる?
確定申告をしていなかったり損益計算を間違えていたりすると、実際にどのくらいの追徴課税が課されるのでしょうか。追徴課税額は、修正を申告する時期や納税する予定だった金額などによって異なります。2つのパターンのシミュレーションを見てみましょう。
パターンA:確定申告をすっかり忘れて申告期限が過ぎてしまった!
たとえば、確定申告を失念し、税務調査が来る前に気づいて自主的に修正申告をした場合の追徴課税を計算してみましょう。
- 仮想通貨による利益に対する所得税:60万円
- 申告期限:2024年3月15日
- 実際に納付した日:2024年6月14日(期限から約3か月遅れ)
- 適用される可能性のある追徴課税
延滞税 … 納付期限後、日割りで一定の割合を上乗せ
無申告加算税 … 通知前に自主的に修正申告をしたため、5%に軽減
延滞税:3,500円(※参考:国税庁「延滞税の計算方法」)
無申告加算税(5%想定):本来の税額60万円の5% → 3万円
よってパターンAでは、本来納める予定だった60万円に加えて、3万3,500円の追徴課税が課されます。
なお、無申告加算税は2024年度の改正で、納付すべき税額に対し、50万円以下は15%・50万円超から300万円以下は20%・300万円を超えた分は30%の割合で追加されるのが基本となっています。
今回は税務調査の通知前に修正申告をしたため、5%にまで軽減されましたが、税務調査の通知後の場合は上記の割合が10%・15%・25%とそれぞれ軽減されることになります。
パターンB:わざと無申告のまま1年以上放置、税務調査の連絡が!
次に、わざと確定申告せずに1年以上経ったのち、税務調査の通知後に修正申告をした場合のケースも見てみましょう。
- 仮想通貨による利益に対する所得税:1,000万円
- 申告期限:2023年3月15日
- 実際に納付した日:2024年6月15日(期限から約1年3か月遅れ)
- 適用される可能性のある追徴課税
延滞税 … 納付期限後、日割りで一定の割合を上乗せ
重加算税 … 意図的な無申告・仮装・隠蔽とみなされると本来の税額に最大40%
延滞税:30万400円(※参考:同上)
重加算税(40%想定):本来の税額1,000万円の40% → 400万円
パターンBではこのように、本来納める予定だった1,000万円に加え、430万400円の追徴課税が課されます。
2つのパターンを比べると、申告期限から期間が空くほど延滞税が高くなり、悪質と判断されて重加算税が課せられると追徴課税がさらに高額になることが分かりますね。
無申告の場合、早めに修正申告を行うことがペナルティを最小限に抑えるポイントです。
令和5年は平均662万円の追徴課税が発生
追徴課税のペナルティは納税額が多く、修正申告までに期間が空くほど重くのしかかります。「税務調査なんてめったに来ないだろう」と軽く捉えるのはおすすめしません。
現に2023年7月1日から2024年6月30日までに行われた税務調査では、対象となった方のうち約92%の申告内容に漏れなどのミスが見つかり、追徴課税の対象となりました。。資料では追徴課税の総額は35億円にもなり、平均して662万円を追加で支払うこととなっていました。
仮想通貨の税務調査は年々厳しくなっているため、「知らなかった」は通用しません。仮想通貨取引をする投資家全員が税金についてもしっかり知っておくことが大切です。
参考:国税庁「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」
【2024年度版】仮想通貨の税金に関するよくある質問
ここからは、多くの方が気になる疑問についてまとめました。仮想通貨取引を始めたばかりの人や、税金について不安を感じている人はぜひ参考にしてください。
確定申告が間違っていたのを直したいときはどうすればよい?
「後になって計算ミスが発覚した」「取引所の履歴を見直したら申告漏れが見つかった」など、確定申告の内容に誤りがあった場合は、次の3つの方法のうちいずれかで対応します。
申告種類 | 内容 |
---|---|
訂正申告 | 申告期限(通常3月15日)内に内容を修正する方法。期限前であればペナルティが発生しないケースが多い |
修正申告 | 期限後に間違いが判明した場合に行う。過少申告加算税や延滞税がかかることがあるが、税務署から指摘される前に申告すれば軽減されるケースもある |
更正の請求 | 多く納めすぎてしまったときに、その分を取り戻すための手続き。申告期限から原則5年以内に行う必要がある |
仮想通貨の取引であっても、基本的な修正手順は他の所得と変わりません。後回しにするとペナルティがどんどん増えてしまうので、気づいたらすぐに対応しましょう。
ビットコインなどを持ってるだけなら税金はかからない?
仮想通貨を持ったままの状態であれば、通常は利益が確定していないため課税はされません。ただし、ステーキングなど以下のケースでは所得が発生したとして課税の対象となります。
- ステーキングで暗号資産を獲得した場合
- レンディングで賃借料を得た場合
- エアドロップで暗号資産を獲得した場合
- DeFiでイールドファーミングをした場合
仮想通貨の売買だけでなく、コインを預けたり貸し出したりしている場合、ボーナスとして仮想通貨を受け取った場合なども課税の対象です。受け取ったときの市場価格をきちんと計上しないと申告漏れになることがあるので注意しましょう。
海外取引所を使っていればバレない?
「仮想通貨の海外取引所なら日本の税務署が把握できないのでは?」と考えるのは、とても危険です。海外取引所を使っていても、国内で利益を申告・納税する義務は変わりません。
仮に、隠そうとたくらんでいても、日本の税務局は世界各国と結んでいる「租税条約」をもとに、海外口座や海外取引所の取引データを入手することができます。意図的に申告しなかったと判断されれば、悪質な行為とみなされ重いペナルティを受けることになるでしょう。
まとめ
仮想通貨取引は手軽に始められる反面、税金のルールを理解せずに放置してしまうと、後になって多額の追徴課税が課されるリスクがあります。取引履歴や利益額をしっかりと管理し、必要な際に確定申告を行いましょう。
今後も仮想通貨の市場は大きく拡大していくと期待されています。正しい税金の知識や仕組みを学びつつ、適切な投資を心がけてくださいね。
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