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新潟県三条市、官民共同NFTの発行で関係人口創出へ

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

ものづくりの街としても有名な新潟県三条市は、NFT(非代替トークン)とメタバース(仮想空間)を活用した関係人口創出プロジェクトを進めている。同市は地場企業を擬人化したNFT「匠の守護者」を発行する株式会社燕三条と協業し、官民共同でのNFT発行による地域創生モデルの構築を進めている。

本プロジェクトは、PwCコンサルティング、大日本印刷(DNP)との連携協定に基づき、先端技術を活用した持続可能なまちづくりを目指す取り組みの一環である。同市は3年間でデジタル市民2,000人の創出、ふるさと納税5,000万円の増額を目標に掲げている。

三条市の宮嶋氏によると、「デジタル市民証としてNFTを活用し、仮想住民組織を定義することで、三条市と関わり続けたい”濃い人口”を獲得する」という。

匠の守護者プロジェクトとの協業

地場企業の擬人化NFTが基盤に

匠の守護者プロジェクトは、燕三条地域の企業・商店・職人を擬人化したキャラクター164体を制作している。ブロックチェーン発行会社のTales&Tokensと連携してNFT化を進めており、現在、国内ECプラットフォームBASEで1枚3,000円で販売されているほか、ふるさと納税サイトで三条市の返礼品として寄付額10,000円で1枚入手できる。

パン切り包丁で有名な包丁工房タダフサをモチーフにしたカード「本成寺 忠虎」

三条市は江戸時代から続く金属加工業の町で、家庭用刃物の国内シェア約9割を誇る。「made in 燕三条」ブランドは世界的にも認知されている。市内にある5,811事業所のうち、多くの製造業が集積し、職人の熟練技術と最新技術の融合により、包丁から作業工具、アウトドア用品まで幅広い高品質製品を生み出し続けている。

行政ならではの特典付与でデジタル市民証へ

宮嶋氏は「仮想燕三条シティという世界観があり、地元企業を擬人化したキャラクターがその都市を守るというコンセプトが存在していた。しかし、このコンセプトを更に活用するに当たり、不足していたのは行政の特典付与としてデジタル市民証というアイデアに至った」と説明した。

デジタル市民証NFTには、通常の3,000円のものに加え、120万円程度のプレミアムパッケージも用意。プレミアム特典には以下が含まれる計画である。

  • 日帰り温泉施設の全館貸切(八木ヶ鼻温泉いい湯らてい)
  • 国登録有形文化財の温泉旅館の貸切プラン(越後長野温泉嵐渓荘)
  • 三条市立大学学長による講演依頼権(今後販売予定)
  • 世界にひとつだけの包丁・フライパンづくりツアー
  • 町工場ホッピングツアー・ものづくりサイクリングツアー

デジタル市長選の実施計画

「デジタル市長選」の実施が計画されている。宮嶋氏は投票システムについて「3,000円のNFTであれば1票、プレミアムパッケージの120万円程度のものであれば3,000円で割った額の票が入れられるようになっています」と説明した。

デジタル市長の権限について、「予算の決定権を付与するとDAOの性質上で矛盾するところがあると思います」と前置きした上で、「企画立案提出権を付与する予定です。DAOの中のリーダー的存在みたいなイメージですね」と述べた。

ファウンダーチームには三条市役所、匠の守護者プロジェクト、学生サポーター、企業サポーターなどが参加しており、デジタル市長は市民代表としてこのチームに参加し、イベント企画などの提案を行う役割を担う。

民間と行政の協業がもたらすシナジー

官民共同NFT発行

三条市の新田氏は「民間と行政が協業してここまで一緒にやった取り組みというのはなかなか全国でもない」と強調した。すでに民間側でNFTの仕組みが構築されており、「ここから大幅なコストがかかるというわけじゃなくて、アップデートを繰り返しながらも、ベースの仕組みはそのまま運営していける状態にある」という。

宮嶋氏は、官民協業のインパクトについて「行政でしかできないことと、民間でしかできないことというシナジーがある」と述べ、以下の点を挙げた。

行政の強み

  • デジタル市民証の公信力
  • 仮想自治体創造の正当性
  • 社会的な認知度向上

民間の強み

  • キャラクター制作・運営ノウハウ
  • ものづくり体験の提供
  • 既存のNFT発行・運営基盤

この協業モデルは、行政の信頼性・公共性と民間のスピード感・創造性を掛け合わせることで、低コストで実効性の高い関係人口創出の仕組みを実現している。それぞれの強みを最大限に活かすことで、全国に先駆けた新たな地域創生の形を示している。

PwCコンサルティング合同会社 マネージャー 坂本 涼氏

本プロジェクトの企画段階から関わってきたPwCコンサルティング合同会社の坂本涼氏は次のようにコメントしている。

デジタルと地域をつなぐこのプロジェクトは、自治体が主体的に新しい価値創出に挑戦した先進的な取り組みの一つです。行政・企業・市民が共に創る仕組みとして、今後さらに深化していく可能性を強く感じています。共に企画を練り上げるプロセスに関われたことを誇りに思います。

持続可能な運営への展望

自走化への課題と対策

本プロジェクトの長期ビジョンについて宮嶋氏は「デジタル市民の取り組みにおいては行政に依存しない、デジタル市民主体のまちづくりを目指す。マネタイズと運営の両面で自立した仕組みを構築することが長期的なビジョンです」と述べた。

自走化に向けたプロセスとして、宮嶋氏は収益の多様化を挙げる。「ふるさと納税以外にも、多くの人が価値を感じて少額でも支払いたくなるような収益モデルの構築が必要です」。理想的な運営体制については「ファウンダーチームが手を引いても、コミュニティメンバーが主体的にアイデア出しやイベント企画を行えるようになることが重要」とし、メンバーから『私たちがリアルイベントを開催します』といった自発的な提案が生まれる、コミュニティ主導の運営への移行を展望している。

まとめ

三条市の関係人口創出プロジェクトは、地場企業を擬人化したNFT「匠の守護者」と行政の公信力を組み合わせた、官民共同による地域創生モデルである。デジタル市民証NFTの発行とデジタル市長選の実施により、物理的な距離を超えて三条市と関わり続ける新たな関係性を構築する。

本プロジェクトの特徴は、すでに民間で構築されたNFT基盤を活用することで初期投資を抑えながら、行政ならではの特典付与で付加価値を高める点にある。将来的には行政に依存しない、コミュニティ主導の自律的な運営を目指しており、人口減少時代における持続可能なまちづくりの新たなモデルを提示している。

宮嶋氏は「使い方を自分で組み合わせながら、多様に面白く使っていただくということができるかと思いますので、ご興味を持っていただければと思いますし、デジタル市長選にも興味を持って参加していただければと思います」と、プロジェクトへの参加を呼びかけた。

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