- 仮想通貨に春の兆
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●最新マーケット情報
●アルトコインに今後を相場を見るヒントが?
●マスメディアの論調に変化
仮想通貨に春の兆し
ビットコインは昨日の急落水準から反発、一定の底堅さこそみせたが、依然として上値は重く、下値不安が継続している。
昨日には、シンガポール拠点で2つの取引所に新たなハッキングが発覚したことで、流出通貨の売り圧力(ハッカーによる売却)が警戒されたが、流出通貨のトラッキングを行なった大手取引所で資産凍結の対応が行われたほか、DragonEXの全額の保証対応を早急に発表した事で、相場への影響は限定的に留まった。
一方で、動かぬビットコインの相場を見かねてか、投機資金の流入などで、勢いづき始めているのがアルトコインだ。
2019年に入り、Binanceが取引所主導で行うトークンセールIEOを成功させた事で、アルトコインへの投資資金流入が加速、IEOを実施する取引所のトークン(Binance=BNB)とトークンセールの通貨が高騰する事例が多発した。この波を逃すまいとHuobiなどもトークンセールを実施、数秒で340万ドルを調達するなど、続く取引所からも成功事例が相次ぐ状況となる。
まさに2017年のICOバブルの状況と再現性高い動きだ。しかし、IEO実施時の取引所トークン価格の上昇に陰りが見え始めているほか、IEO後の上場倍率も右肩下がりになってきており、短期的なブームで終わるとの見方もある。
ただ、このIEOバブルがもたらした仮想通貨市場への影響の重要性は、アルトコインへの資金流入が確認され始めたポイントにあると考察できる。
過去最長の下落相場に置かれている仮想通貨市場は、弱気トレンドの影響で、アルトコインの上昇余地は限定的、ましてやビットコインの下落にも大きな影響が見られた状況が続いてきたが、IEOをきっかけにアルトコインの個別材料に反応した資金流入が多く見られ始めた。
これは、投資家心理の改善の兆候と見ることができるため、長い仮想通貨市場の冬を打開するのはアルトコインかもしれない。
アルトコインが打開策か
なお、仮想通貨市場のドミナンス(支配率)は、3月26日時点で2018年8月来初となる50.5%の水準を割り込んだ。約7ヶ月に渡って50%を底に推移してきたビットコインドミナンスは、投資家が「50%」に高い意識が向けられているため、市場全体の流れを読むにあたり、重要な指標となり得る。
ビットコインドミナンスを圧迫する要因には、主要仮想通貨以外のOthers(チャート内グレー)の台頭がある。これは、仮想通貨の時価総額がより分散化されてきた事を示唆し、リスク性の高い”低時価総額の通貨”に資金流入が集まっている状況を意味する。
一方で、時価総額が圧迫されている通貨にはビットコインのほか、リップルやイーサリアムなど時価総額の高い通貨が入る。これは、これらの通貨が上昇で出遅れている状況にある事を示している。
直近1週間変動率でみても、BTC、ETH、XRP共に-0.5%〜-2%で推移する中で、時価総額上位40通貨(BTCなど3通貨を除く37通貨)の中でプラスで推移する通貨が27通貨、内5%高以上が15通貨、10%を超えるものでも8通貨あることから、その違いに大きな差ができていることがわかる。
この状況が何を意味するのか?
あくまでも推察に過ぎないが、マイナー通貨への買いが活発化している背景には、市場に詳しい既存の仮想通貨投資家が、再度分散投資に動いている状況にある。
一方で、より上昇に資金が必要な高い時価総額の通貨の状況を見るに、一般投資家はまだ様子を伺っている状況にあると考えられる。
要するに、より内情に詳しい仮想通貨投資家は、日米などの大手企業の動きなどを見て、買い戻しに動いているが、ハッキング被害や業務改善命令などが続いたことで冷え込んだ一般投資家心理の回復にまでは至っていない状況にあるといえる。
例えば、一般株式や仮想通貨のチャート分析に頻繁に引用される「WALL ST. CHEAT SHEET」で、現在の状況を当てはめて見ていくと、一般投資家が、怒り(anger)と憂鬱(depression)に該当し、仮想通貨投資家の一部が憂鬱(depression)と不信(disbelief)のフェーズに移行し始めている事を意味する。これは、投資家心理とチャートを合わせて見る上で重要なチャート分析だ。
なお、希望(hope)のフェーズでは、投資家心理の改善が進み、新たに企業の動きやプロジェクトの動きを注視する希望のフェーズ(上昇開始)に該当、昨年末11月の急落時は、パニック(panic)が該当し、それ以降セリクラが確認されず反発したのを見ると、絶望(capitulation)のフェーズに移行したと海外分析家を中心に見解が見られていた。
一般メディアの報道に変化
一部の仮想通貨投資家の心理状況が回復傾向にある事を書いたが、日本のマスメディアの報道にも変化が見え始めている。
度重なる資金流出事件や国内の不祥事を受け、国内メディアを中心に仮想通貨に関する報道を控える動きや、事件が起きたタイミングに集中して報道が行われる状況があったが、ここにきて報道内容に変化が見られ始めている。
具体例としては、3/24に公開された日経新聞の社説や3/25に公開された産経新聞の記事がある。
まず、日経新聞が仮想通貨の記事を社説(新聞社の主張・意見としてのせる論説)として掲載する事例は、同社の仮想通貨カテゴリーを見る限り直近半年では見られなかった傾向で、タイトルも「健全な金融革新を促す規制・監督を」と前向きな内容で書かれている。
幅広い産業への応用が見込まれているブロックチェーン技術を活用した暗号資産を、頭から否定すべきではない。
一部引用:日経新聞
日経新聞では、仮想通貨に関連する不祥事にも触れながらも、このような文章を掲載するなど、前向きな内容で社説を掲載。
ブームが落ち着いたとはいえ、仮想通貨の革新性は揺るがない。
一部引用:産経新聞
産経新聞でも、G20で議論される内容などに触れながらも、仮想通貨やブロックチェーンの有用性を記事で紹介した。
このような大手新聞などマスメディアの論調の変化には、仮想通貨の専門的な分析を行うFXcoinの松田康生氏も注目しているという。松田氏は、このような論調の変化を、「1年以上に渡る業界の取組が、世間の理解を得つつある兆し」と捉えている。
総括
未だ動かないビットコイン価格に懸念の声も大きい中、小さな変化が着々と見え始めている。
すでに金融庁を始め、日本大手企業の参入が相次ぐ可能性が見えてきた中で、マスメディアの論調も変化し、冷え切った一般投資家心理の回復(センチメントの改善)が見込める状況にもなってきたといえるだろう。
現在の状況からも、ビットコインをはじめとする主要通貨や仮想通貨全体の時価総額を上昇させるきっかけは、アルトコインにあると見る。多くの企業が新たな年度として動く4月、仮想通貨の雪解けの時も近いかもしれない。
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