はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

JBA代表理事 加納氏が「V20での議論」を読み解く|日本仮想通貨規制の先進性とは

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

加納氏が語るV20
日本ブロックチェーン協会(JBA)の新代表理事に就任した加納裕三氏が、V20で登壇した内容とワークショップで議論された内容を詳しく解説した。日本の規制の優位性とその重要性を読み解く。

加納氏が語るV20

「日本の仮想通貨(暗号資産)規制は2年進んでいる」加納裕三氏は、日本ブロックチェーン協会(JBA)の定例会議で、日本の暗号通貨規制に関する発言を引用した。

加納裕三氏は、先日立ち上げを行なった株式会社bitFlyer Blockchain設立に伴い代表取締役に就任。JBAでも新代表理事に就任している。

JBAの新代表理事としてJBA定例会議で登壇した加納氏は、「V20」の内容を会員向けに報告。加納氏(JBA代表理事として)のピッチタイムで世界の業界関係者へ語った日本の暗号通貨規制の先進性、また世界各国から集まるレギュレーターや業界団体、VASP(仮想通貨関連事業者)間で「マネーロンダリングを防ぐ目的のガイダンスをどのように事項するか」に関するワークショップ(話し合いの場)の内容を発表した。

V20:加納裕三氏登壇風景

日本の暗号通貨規制の先進性

日本の暗号通貨規制の先進性を見る上で、加納氏が重要だと考えているのは金融庁が主体となる業界構造があるという。

日本では、金融庁(JFSA)が主体となって、暗号通貨規制を進めてきた。世界各国では、各領域ごとに異なる規制当局が関与するなかで、金融庁がほぼ全ての監督官庁として統一化されていることにこそ、日本の暗号通貨規制が世界に先駆けて前進してきた背景があると語る。

出展:JBA資料

日本は、2016年の改正資金決済法と2019年の資金決済法および金融商品取引法(金商法)の改正と、2度の暗号通貨に関わる法案が定められた国であり、世界に先駆けて法的解釈の制定も行なってきた。

改正資金決済法では、仮想通貨(VC)とはなにかといった定義が定まったほか、ライセンス制度が導入。2019年には暗号資産(CA)への呼称変更や、ICOとSTOの一般解釈やウォレットの定義、相場操縦など金融資産の側面に新たな法的解釈が定められた。

なお、日本政府としてはG20での呼称を引き継ぐ形で「暗号資産(CA)」として呼称を変更したものの、FATFは「暗号通貨(VC)」の呼称を利用しており、世界的な統一の必要性も主張されている。

業界団体の重要性

また加納氏は、金融庁主導のレギュレーションとともに重要になるのが暗号通貨業界の団体にあると話す。

日本の暗号通貨協会は、認定自主規制団体の一般社団法人日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)のほか、一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA)、一般社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)など、複数の団体が活動を行なっている。

出展:JBA資料

JVCEAは2018年10月、金融庁より資金決済に関する法律に基づく認定資金決済事業者協会に正式に認定を受け、世界初の暗号通貨に係る認定自主規制団体が誕生した。

ライセンスを有する17社の事業者ベース(2種会員も)で運営を行なっているJVCEAだが、業界における権限は想像以上に大きいという。

法に準拠して運営するJVCEAは、最大5億円の課徴金を課すペナルティの権限を持ち、検査、監督を行なっている。除名の権限もあるため、各企業が自主規制を遵守する体制が整っているという。

なお、業界団体として新たに代表理事に加納氏を迎えたJBAは、ブロックチェーン技術の社会実装や健全なビジネス環境の整備に努めていくという。

日本で最も多くブロックチェーンに関わる技術特許を取得しているbitFlyer Blockchainも中心となり、業界の正しい発展で重要な法改正への提言や情報共有も行なっていく。これは技術領域と金融領域が複雑に絡み合うブロックチェーン業界において重要な活動になると見ている。

日本の技術

また、経団連の資料を引用してブロックチェーンがAIやIoTと並び「第5次産業革命」に区分されていることを強調した加納氏は、日本における技術の発展にも大きな躍進があった点を実用例を交えて解説した。

出展:JBA資料

セカンドレイヤーのライトニングネットワークの第一人者Nayutaや、インターオペラビリティの実験を行なったCurrencyPort、ロシア、カンボジア、インドネシアでペイメント領域の実証実験を行うSoramitsuを注目事例として挙げたほか、bitFlyerグループにおけるmiyabiブロックチェーンや、当初から取り組むブロックチェーンの基礎研究についても解説を行なった。

bitFlyerグループでは、独自開発ブロックチェーン関連の技術特許で9件と国内でトップクラス。世界においてもトップ層に入っているという。

FATFとの規制案を受け議論された暗号通貨規制

FATFが6月に公表した暗号通貨のマネーロンダリング対策に係るガイダンスを受け、V20ではFATFのガイダンスに関する説明のほか、世界各国から集まるレギュレーターや業界団体、VASP間で議論を行うワークショップが催された。V20の主なアジェンダの中で、FATFの解説は1日目に。ワークショップは2日目のメインテーマとして行われていた。

出展:JBA資料

JBAの定例会議にて加納裕三氏は、まずFATFのガイダンス説明スピーチの内容を簡潔にまとめた資料を元に、AML/CFT対策強化におけるVASPの対応でどのような項目が求められているかを解説した。

トラベルルールでは、暗号通貨取引に関する顧客情報の収集と送付がVASPに求められており、既存の銀行レベルの基準が求められている。しかし、P2P送金など、技術的にも異なる仕組みをもつブロックチェーンでは、その仕組みの適応に関して様々な議論を呼んでいる状況にある。

出展:JBA資料

この中で特に厳しいと見られているのが、ベネフィシャリー(被仕向け)に関するKYCの対応だという。しかし、FATF側はフルKYCを必須だとはしていないため、実装に関する動きには議論の余地があると、加納氏は見ている。

そういった中で、どのようにVASPやレギュレーターが対応していくべきか、ワークショップの内容に言及した。

ワークショップでの提案は?

ワークショップでは、FATFの書記官Tom Neylan氏に対する質問が投げかけられたほか、参加者側が複数のグループに分かれて対策案を提示した。ワークショップに参加した加納氏によると、FATF側は明確な回答こそ言及を避けたものの、各国のレギュレーターに実装を求めている動きはあったという。

また、業界の熱量的には、VASP側が同ガイダンスの内容が厳しいと積極的に訴えた姿勢から、FATF側に対しても有意義な主張はできたとした。

実施時期の具体的な日時こそ定まっていないものの、20ヶ月や24ヶ月というワードがでるなど、5年など、長期的な期間を見込んでいるわけではないことがわかったという。

ワークショップにて、No.2のグループに所属した加納氏は、日本の代表としてプレゼンスを示すべく、積極的な発言と提言を行なった

加納氏が所属するNo.2グループの提案例(※定められた規制案ではない)は、非中央集権的にKYCのシステムを作ることを提案したという。中央集権的なシステムで作ること(例えばSWIFTなど)は簡単であるが、暗号通貨の仕組みを成立させるためにこの点にこだわっているとした。

個人情報をハッシュデータに置き換え、情報の称号から身元確認をできる仕組みを提案した。

その仕組みとしては、オリジネーター(仕向け)のデータをフォーマットかつパッケージ化したものをハッシュにしてブロックチェーン上に書き込むことで、ベネフィシャリー(被仕向け)側のハッシュと一致しているかどうかを判断する方法だという。(オリジネーターの送り元不明の状況を防ぐために、取引所の頭文字などをハッシュの前に付ける)

また、他のチームからはガバナンス機構で解決する方法や、ゼロ知識証明を応用したやり方などが提案された。

合意されたものと、定められなかった内容とは?

なお、V20で合意された内容としては、VASPのリストを作っていくといったものだ。だれがVASPであるかという点でクリアにする点が重要であると見ている。

V20自体が意思決定機関としてではなく、複数の機関が集まった検討会のような会合であるため、合意形成の決定ができずにいる課題点もあるという。今後は、VASPのレギュレーションの対応の中で、世界的な合意の場を設ける必要があるとみている。

また、上述するように、VASPの定義自体は明確に定まらずにいる。送金や交換に携わる業者が範囲に入る可能性もあるが、まずはVASPリストの必要性が問われているという。

なお、V20では国家間の暗号通貨規制の統一を目的とした国際団体IDAXAの立ち上げを発表。JBAのほか、アジアを中心とした業界団体が加盟している。今後VASPを中心としたV20の流れも米国や欧州に拡大すると仮定すると、今後世界的なルールの策定で重要な国際団体となることが予想される。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
11/24 月曜日
10:25
「仮想通貨市場の弱体化、背景にマーケットメーカーの機能不全」トム・リーが指摘
ビットマイン会長が仮想通貨市場の下落が続いている要因を分析した。10月10日の清算イベントがマーケットメーカーを機能不全にしていると見解を示している。
11/23 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、ヴィタリック紹介のイーサリアム新ツールやXRPのステーキング導入案など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン売られ過ぎでも反転せず、12月FOMCの据え置きが現実味を増す|bitbankアナリスト寄稿
今週のBTC対円相場は1400万円割れまで下落。ヌビディア好決算後も1400万円割れが続き、米雇用統計の強弱まちまちな内容が見通し悪化を助長。12月FOMCでの金利据え置き観測が強まる。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|金融庁の暗号資産規制方針に高い関心
今週は、金融庁の仮想通貨規制方針、ビットコイン採掘割合の95%到達、ビットコインとイーサリアムの市況分析に関する記事が関心を集めた。
11/22 土曜日
13:45
ANAPホールディングス、企業向けビットコイン戦略支援「ビットコイン道場」を開始
ANAPホールディングスが企業のビットコイン活用を支援する継続型プログラム「ANAPビットコイン道場」の提供を開始した。会計や税務などの実務を専門家が包括的にサポートし、参加企業がコミュニティ形式で課題解決に取り組む仕組みを提供する。
13:02
コンヴァノがビットコイン戦略から本業回帰、AI・ヘルスケア事業に注力へ
コンヴァノが仮想通貨ビットコインを最大約2万BTC取得する計画を取り下げ、成長中の事業へ軸足を移す。業績予想を上方修正しており本業成長を重視する戦略転換となる。
10:55
米当局がビットメイン製品を国家安全保障リスクで調査、トランプ関連企業も1万6000台使用
米国土安全保障省が中国メーカーのビットメインを調査し、機器がスパイ活動や電力網破壊に使用される可能性を指摘。トランプ大統領の息子たちの会社アメリカン・ビットコインも1万6000台を購入した。
10:05
コインベース、ソラナのミームコイン取引所「ベクター」を買収
コインベースがソラナ基盤SocialFiプラットフォーム「ベクター・ファン」を買収すると発表した。年内に取引完了予定で、ソラナエコシステムへの参入を拡大し、すべてを取引できる取引所の構築を目指す。
09:35
ベセント米財務長官、ビットコインバーにサプライズ訪問 仮想通貨業界への影響は
スコット・ベセント米財務長官がビットコインバー「Pubkey DC」を訪問し、仮想通貨コミュニティで話題になっている。業界関係者の反応と今後の影響を解説する。
08:25
NYSEがグレースケールのXRPとドージコインETF承認、25日上場予定
NYSEがグレースケールのドージコインとXRP ETFの上場を承認し、11月25日に取引を開始する。今週はビットワイズのXRP ETFやフィデリティのソラナETFも上場し、アルトコインETF市場が急拡大している。
07:45
「仮想通貨財務企業などの上場後の事業の大幅変更について対応を考える必要」JPXのCEO
日本取引所グループの山道CEOは、ビットコインなどを保有する仮想通貨財務企業への規制強化は現時点では検討していないと説明。一方で、事業の大幅変更については対応を考える必要があるとも述べている。
07:05
個人マイナーがビットコイン採掘に成功、1億8000万分の1の確率を克服
極めて小規模な個人マイナーがわずか6TH/sのパワーでビットコインブロックの採掘に成功し、約26万5000ドル相当を獲得した。確率は1億8000万分の1で、近年最も幸運なソロ採掘となった。
06:25
トム・リー率いるビットマイン、初の配当実施もイーサリアム保有の含み損は6250億円超 
イーサリアム最大の企業保有者ビットマイン・イマージョン・テクノロジーズが11月21日、2025年8月期通期で純利益3億2816万ドルを計上し、大手仮想通貨企業として初めて配当を実施すると発表した。しかしイーサリアム価格下落で含み損は40億ドル超に達している。
06:02
金持ち父さん著者キヨサキ、3.5億円分ビットコインを売却し広告事業投資へ 以前の姿勢から一転
『金持ち父さん貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキ氏が11月22日、約225万ドル相当のビットコインを売却し、外科センターと看板広告事業に投資すると発表した。以前の「売らずに買い続ける」発言から一転した。
05:45
マイケル・セイラー、指数除外懸念に反論「ストラテジーはファンドではない」
ストラテジー社のマイケル・セイラー会長は主要株価指数からの除外懸念に対し「我々はファンドではなく上場事業会社だ」と反論した。
通貨データ
グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧