米シンクタンク、ブロックチェーンが米ドル中心の経済圏に脅威となる可能性を報告

ブロックチェーンが米国覇権を弱める可能性を米シンクタンクが示唆
ブロックチェーン技術が米国の敵対国に対する経済制裁を弱体化させ、米ドル中心の経済圏が脅威にさらされる可能性を示唆したレポートが、米シンクタンクFDDより発表された。その背景と今後の可能性を考察。

ブロックチェーン台頭が米国覇権を弱める可能性

「ブロックチェーンは米国の敵対国に対する経済制裁を弱体化させる可能性がある」という趣旨のレポートが、アメリカ合衆国新保守主義系シンクタンクFDD(Foundation for the Defense of Democracies)から公開された

本レポートは、現在米国と敵対する4つの国を取り上げ、

  • 現在どのような動きを見せているのか
  • 今後どのような脅威が想定されるのか
  • それに対して、米国はどのように対応すべきなのか

という点について、事例のリサーチに基づいて提言を行なっている。

世界経済においてドルが基軸通貨として使用されていることに対しては、おおよそ疑いがない。英国スターリンポンドの座を米ドルが奪う形でその覇権を広げていった。そして「その(ドルの)優位性によって、米国の政策決定者は外交や軍事行動だけに頼ることなく、(…)金融規制や経済制裁の行使を可能にしてきた。」

それに対抗し、敵対国側は「何十年もの間、この権力を回避し、弱体化する試みを続けてきたものの、米国主導で形成されたグローバル金融システムのパイプを介さずに重要な国際商取引を行う方法がなかった」のがこれまでの勢力図だ。

そのような「泣かぬなら鳴くまで待とう時鳥(ほととぎす)」という状況を余儀なくされた被制裁国にとり、転機となったのはブロックチェーン技術である。特に彼らが注目しているのは、既存の米国中心に成り立つ金融システムを介さない取引が可能になるという側面だ。レポートを元に今後の世界経済を鳥瞰してみよう。

米国の敵対国は長期的に独自の経済圏構築を目論む

デジタル大辞泉によると、経済制裁の手段としては、輸出入の制限または禁止、経済関係条約(通商条約など)の停止、対象国の在外資産の凍結、航空機や船舶の乗り入れ制限または禁止などを挙げている。世界貿易においてはドルが事実上基軸となっているが故に、外資(主にドル)が不足することは輸出入(特に輸入)に打撃を与える。

それに対して被制裁国が取るべき手段としては、外貨の別ルートでの取得または新たなルートの新設である。長年米国の敵対国は従来の銀行インフラを介さない価値移動の方法を探ってきた。米国(ドル)に依存しない経済圏構築である。

彼ら敵対国は今、ブロックチェーン技術をその目的達成のための絶好の機会だと踏んでいる。ロシア、イラン、ベネズエラは、ブロックチェーン技術が米国の金融強制力を弱め、制裁抵抗力を高める手段として実験を開始し、中国もまた、米国の財政力と当局に対する制裁の脅威に警戒している。

ベネズエラ、ロシア、イラン、中国の4事例から見る今後の方向性

それぞれ実態はどうなっているのだろうか。ベネズエラ、ロシア、イラン、中国のそれぞれ4国について見ていこう。

ベネズエラではマデュロ大統領(現在は選挙不正等で暫定)の下で進んでいた仮想通貨ペトロコインのプロジェクトが大失敗に終わった。石油に裏付けられた政府発行のこの通貨は、結果として技術的・経済的インフラになることはなく、プロパガンダ的な努力に終わった。

米国の経済制裁と同政権の汚職問題等で失敗に終わった一方で、貴重な失敗ケースを事例として蓄積することができたことは価値として大きい。「他国の政権にとって、ブロックチェーンによる経済制裁対抗策を講じる中ですべきではないことは何かという示唆を与えた」とまとめている。

ロシアでは、社債発行(セキュリティトークン発行)とデジタル資産の保管のために複数のブロックチェーンプロジェクトを立ち上げている。彼らの目的は長期的なものである。短期的なデジタル通貨の利用に関しては懐疑的である一方で、SWIFT(国際銀行間通信協会)を中心とした金融管理システムの外側で独自のシンジケートを長期的に形成していくことを目論んでいる。

イランも同様にSWIFTに代わるシステムの開発に積極的だ。特に歴史的には2018年にイランの核開発に対して、米国がイランと取引を行う国に対する経済制裁を行うことを表明して以来その意欲は高まっている。

今年に入っても同国が核合意の一部を停止したことを受けて米トランプ大統領は経済制裁をさらに強めたことが報じられている。ロシアはそれに対しブロックチェーンによる制裁抵抗計画に積極的に共同する意思を表明している。

一方中国は、上記3カ国ほどに米国から脅威を受けているわけではない。一方で現在の貿易摩擦もさることながら、自国通貨で派遣を奪取することに意欲的なのは明らかだ。「中国中央銀行は大量のリソースと専門知をブロックチェーン調査とデジタル通貨開発に投入している」

従来の米国を起点とした経済圏から、ブロックチェーン技術を用いたデジタル通貨による何らかの方法による「ゲームチェンジ」は可能性としてありうる。国家としての優先度として極めて高い。

上記で見たように、敵対国は着々と動き出し、国家としてのブロックチェーンへの投資が進んでいる。以下に示すのはそれぞれの国で動いているブロックチェーンのパイロットプロジェクト一覧である。

敵対国の脅威に問われる米国の対応

各国の戦略は決して短期的なものではなく、長期的な経済制裁抵抗策だ。現状十分な出来高と取引スピードを満たすブロックチェーンプラットフォームは未だなく、現状のブロックチェーンベンチャー企業も法定通貨に依存している状況だ。

しかしながら「デジタル化、キャッシュレス化の高まりとP2P技術システムによって、価値移動の新たなチャネル」としての発展を遂げた時、米国にとっては大きな脅威となる可能性がある。これはまさに敵対国が期待するところだ。

本レポートは連邦政府への提言として、次のように述べる。

米国の政策立案者と金融セクターの利害関係者は、この進化する国際的な「クリプトレース」で主導権を握る必要がある。

今後の方向性は、さまざまな種類のフィンテックビジネスから発生する脅威を検討するだけではなく、グローバルな金融システムが技術の変化にどのように適応するべきかをより創造的に考えることだ。

外貨制限が課された国における逃げ道としての仮想通貨(主にビットコイン)は度々話題になり、インフレ発生国における価値保存手段や価値取引手段としての資金流入が報じられていた

当時英国スターリンポンドから覇権を奪取した米ドル経済圏であるが、ブロックチェーンというゲームチェーンジャーによって、別の手段が奪取するのかは注目に値するだろう。

米国はフェイスブック社が独自に開発を進めるリブラの規制を巡ってトランプ大統領はじめ、FRBパウエル議長など各界の重要人物が、懐疑的な見解を表明している。

それに続いて今月19日には米セントルイス連邦準備銀行の総裁James Bullard氏が、仮想通貨の誕生によって、米国の通貨システムに変化が生じているとの声明を発表したばかりだ。

米国と長く対立してきた世界経済をぐらつかせる脅威に対して、米国政策立案者らがどのように対応していくのかも注目していくべきだろう。

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