マイニング会議の多様な参加者
先月28日、29日の両日にわたり、ビットコイン・マイニング企業が集中する中国四川省の省都、成都市で「世界マイニングフォーラム」が開催された。この会議には、マイニング関連業者だけではなく、仮想通貨取引所、ベンチャーキャピタルや資産運用企業など金融業界からの参加も多く、マイニング事業に対する多様なセクターからの関心の高さを反映していた。
ビジネスモデルの進化
仮想通貨業界で多様なサービスが提供されるようになっている中、仮想通貨を支えるマイニング事業のビジネスモデルも進化し始めている。 もはや、効率の良いマイニング機器と安価な電力を利用し収益を上げると言う単純化されたモデルでは事業としては成り立たないようだ。
世界マイニングフォーラムでも、マイニング事業者への金融サービスを提供する企業がパネルとして登壇した。 その一人、仮想通貨ファンド「Multicoin Capital」の北京投資チーム責任者Mable Jiangは、マイニング事業における金融化(Financialization)がますます重要になると述べ、ビットコインのハッシュレート先物の提供を開始した仮想通貨デリバティブ取引所「FTX」の例をあげた。
昨年、設立されたFTXは仮想通貨取引所最大手バイナンスやConsensus Lab等の支援を受ける取引所で、800万ドル(約8億7500万円)の資金調達に成功している。今年5月半ばから、提供が開始されたハッシュレート先物は、ビットコインの将来のマイニング難易度に基づいた先物契約で、マイニング事業運営の際のリスクヘッジとして機能する初の金融商品として、マイナーからも歓迎されていると言う。
直近では、半減期後二度目の難易度調整を終えたビットコインのハッシュレートが、大幅に回復し、過去最高値に迫りつつあるとの報道もあり、ハッシュレート先物契約に、さらなる関心が集まる可能性もある。
マイニング企業によるハッシュパワーの販売も報告されている。
米マイニング企業Greenidge Generationは、ビットコイン採掘のための演算能力を機関投資家向けに販売し、そのハッシュパワーによってマイニングされたビットコインを現物で受け取る金融商品を、金融サービス企業の仲介で提供。この商品により、OTC市場や機関投資家を対象にしたハッシュパワーの取引が可能になった。
マイニング事業の運営の柱の一つとして、本業以外の金融収益が今後、ますます注目されることが予想される。
他セクターがマイニング事業へ参入
前出のJiangは、マイニングフォーラムに参加した取引所の多さにも言及したが、取引所によるマイニング事業への参入の例としては、4月にマイニングプールを始動させた大手バイナンスがある。
また、中国のベンチャーキャピタルが、マイニング事業へ積極的な投資を行っていると言う。一方、先月、中国四川省当局がマイニングの禁止を示唆する通告を行ったと報道されており、先行きが不透明な部分もあるが、多くの中国人投資家は北米のマイニング事業へ投資を行っているとの指摘もあった。
この動きは、仮想通貨投資ファンド、Grayscale InvestmentsのCEO、Barry Silbert が、今年2月の投資家向けオンライン会議で、マイニング事業の中国から北米へのシフトが起こりつつあると述べていることと一致する。
Filecoinへの関心の高さ
フォーラムでは、中国のマイニング企業が注目する仮想通貨として、ブロックチェーンを用いたP2Pストレージサービスを提供するFilecoinが紹介された。中国には、200以上のFilecoinのマイニング機器製造業者があり、10億元(約154億円)の売り上げがあると言う。
機関投資家からの関心も高く、フォーラム開催中に、FilecoinのIPFSノードである「T01475」は中国資本のベンチャーキャピタル、HashKey CapitalとFenbushiからの投資を受けたことが明らかになった。