「Web3.0を国家戦略の中心に」
自民党の塩崎彰久議員は11日、衆議院の財務金融委員会にて、暗号資産(仮想通貨)やWeb3.0に関する日本政府の方針について質疑応答を行なった。米バイデン政権が今週発令した暗号資産に関する大統領令など他国の状況を受け、「Web3.0担当大臣を置くべき」などと発言した。
塩崎彰久(あきひさ)議員は愛媛1区の衆議院議員。自民党のデジタル社会推進本部が22年1月に設立したNFT(非代替性トークン)政策検討プロジェクトチームで事務局次長も務めるなど、仮想通貨・ブロックチェーン技術への造詣も深いとされる議員の一人。
今朝の日経新聞の「自民政策マップ」でデジタル金融分野の関係議員の一人として取り上げて頂きました。NFTなどブロックチェーンエコノミーに関する提言取りまとめへ向け、引き続きしっかり取り組んでまいります。 #NFThttps://t.co/MzwARsZFJX
— 塩崎あきひさ 【衆議院議員・愛媛1区】 (@AkihisaShiozaki) March 8, 2022
Web3.0とは
現状の中央集権体制のウェブをWeb2.0と定義し、ブロックチェーン等を用いて非中央集権型のネットワークを実現する試みを指す。代表的な特徴は、仮想通貨ウォレットを利用したdAppsへのアクセスなど、ブロックチェーンをはじめとする分散型ネットワークのユースケースがある。
▶️仮想通貨用語集
同PTは、CoinPostが今年2月に「NFT特別担当」の平将明衆議院議員にインタビューした際、NFTやブロックチェーンを自民党、および日本政府の国家戦略に含むことが最終的な目標であると述べていた。
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仮想通貨を利用したロシアの制裁回避について
塩崎議員は、東日本大震災から11年を迎えた中、日本政府が国際開発協会(IDA)への増資で「リーダーシップを取ることは歴史的意義がある」と発言。
特に、中国政府が世界の発展途上国に債務の貸付を盾に、空港や港の管理権を奪う「債務の罠」問題も警戒しつつ、日本が貧困に喘ぐ国々に融資を行う世界最大の援助機関であるIDAへの支援を強めるのは「国際的にも大きなメッセージ」を送ると語った。
また、今週9日に米政府が発令した仮想通貨に関する大統領令は「これまでの国際金融の在り方を大きく変える出来事」だと言及。
各国がロシアに対する経済制裁を強める一方で、「仮想通貨を利用した国際送金」が抜け穴になる懸念が高まっていることを受け、日本政府の未登録交換業者やウォレットを利用した送金について国際協調をさらに行う必要があるか確認を求めた。
金融庁 松尾総合政策局長
暗号資産を含むデジタル通貨につきましては、G7やG20、またFATF等の国際的な取り組みを通じて、これを用いた不正な資金への対策強化を図っているほか、国内でも令和2年に外為法についての通達を改正いたしまして、この通達の対象となる制裁対象者への支払いについては、交換業者の支払いに対しては、暗号資産を移転する声も含まれる声を明確化するなど、政府一体となって資産凍結措置の強化に取り組んでいます。
今後も自主規制団体である日本暗号資産取引業協会(JVCEA)とも連携を図りつつ、引き続きG7をはじめとする国際社会と緊密に連携して経済制裁の実行性確保に努めてまいります。
日本のWeb3.0戦略について
また塩崎議員は、今回の大統領令は仮想通貨の在り方について「消費者保護、金融安定、不正利用そしてイノベーションの推進」など様々な項目についてオールガバメント(政府全体で)180日以内に政策提言を指示するものだと説明。この動きは米政府が仮想通貨に対する「規制を強めるということだけではなく、やはりアメリカの強いメッセージが込められている」と述べた。
また、米国がこの分野において今後もリーダーシップを取る決意が表れているとコメント。次のように指摘した。
自民党 塩崎彰久議員
この大統領令をみて、私は正直やられたと思いました。「先を越された」なと。
日本もこの暗号資産の部門でもっと早く、政府としての優先順位を引き上げて取り組んでいく方針を発表するべきではないか、暗号資産だけではなく、その先に広がる新しいWeb3.0と呼ばれる大きな経済分野に取り組んでいくべきと考えております。
特に、日本ではアニメやゲーム、豊富なIP(知的財産)コンテンツ、それを支える豊かな人材がいます。しかし、今は税の問題や規制の問題などがブロックチェーンエコノミーの発展を阻害するのではないか、こういった点が盛んに懸念されております。
アメリカは180日という期限を切りました。日本はどうでしょうか。政策の優先順位をこれまで以上に引き上げていく必要性はないか、成長戦略のど真ん中にこのWeb3.0の戦略を位置付けていく必要性はないか、場合によっては「Web3.0担当大臣」を置くぐらいの覚悟でWeb3.0政策に取り組んでいくべきではないでしょうか。
これを受け、鈴木俊一財務大臣は以下のように回答した。
鈴木財務大臣
塩崎先生がご指摘の3月9日の米大統領令はデジタル資産の責任ある発展に向けた米国政府全体の戦略として、米国当局間の連携を含めた包括的な対応を指示するものとなっております。
その内容は、デジタル資産のリスクとイノベーション促進の双方を配慮したものと理解しております。
金融庁としましても、これまで暗号資産などのデジタル資産に関し、利用者保護や金融犯罪防止とイノベーション促進のバランスを考慮して、所用の措置を講じてまいりました。
ご指摘の通り、ロシアへの経済制裁関し、暗号資産が抜け道の恐れとして注目されるなど、デジタル資産への見方や対応はこれ以前の状況と異なってきていると考えております。
デジタル資産への対応は従来よりも増して、国際的な連携が重要ですので米国を含む各国当局とも緊密に連携しつつ、不正やリスクについて十分に配慮した責任あるイノベーションについて優先的に取り組んでいきたいと思います。
大統領令に対する業界の反応
米政府の大統領令に対する業界の反応は、総じて肯定的なものだった。
業界シンクタンクCoinCenterのディレクターであるJerry Brito氏は「米政府が仮想通貨業界を国家経済の重要な一部として認めた」と分析。ロビー活動を行う米国の業界団体も規制当局と連携していくことに期待を示した。
Today @POTUS will sign an Executive Order calling on federal agencies to unify their approach towards the crypto industry and to support US tech leadership.
— Blockchain Association (@BlockchainAssn) March 9, 2022
We welcome this approach and are ready to collaborate with agencies on behalf of the industry. https://t.co/5Xcq5rICao
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ロシアの制裁回避リスクは
国際社会で孤立するロシアが、仮想通貨を利用した制裁回避を行なっている可能性があると警戒する意見も少なくない。欧州中央銀行のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、さらなる対策が必要であると懸念する。
米民主党のエリザベス・ウォーレン議員は、ロシアの制裁回避を防止する「War Against America Act」法案を提出。ロシア系のウォレットや企業にサービスを提供する交換業者に二次制裁を課す狙いだ。
一方で、米時間10日に上院諜報活動特別委員会の公聴会に登壇したFBI(連邦捜査局)のクリストファー・レイ長官は「ロシア政府が仮想通貨を利用して、十分な制裁逃れを行う可能性は低い(あまり現実的ではない)」と発言。国際社会の想定以上にFBIなどの政府機関は仮、想通貨の追跡能力に長けていると強調した。
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米財務省内部からもこのような意見はある。財務省Todd Conklin財務次官補佐はロシア政府が必要とする規模の資金を移動した場合、相場への影響が観測されるため、「そこまで懸念する必要はない」と述べていた。
また、大手取引所コインベースのブライアン・アームストロングCEOもロシアが仮想通貨を利用して経済制裁を回避する可能性は低いと発言。現金やアート、金(ゴールド)よりも資金の移動を追跡しやすいと指摘した。
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