はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習 WebX
CoinPostで今最も読まれています

証券取引へのブロックチェーン導入はキラーアプリとなる可能性大、その実現に向けた課題と最新動向を概説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

証券取引へのブロックチェーン導入には課題があるが「キラーアプリ」となる可能性大
イーサリアムとスマート・コントラクトの構想発表から5年が過ぎた。証券取引にブロックチェーンとスマート・コントラクトを導入すればキラー・アプリとなる可能性が高い。一方で実現に向けた課題もある。最近、いくつかのプロジェクトが規制適合のための実装を始めた。
セキュリティ・トークンとは
ここで言うセキュリティとは証券のこと。一般に仮想通貨のICOが行われるとトークンが発行/配布されるが、このトークンに証券性が認められればSEC(米国証券取引委員会)の監視対象となり、監査報告義務が生じる。セキュリティ・トークンと対になるのが本記事でも解説を行っているユーティリティ(=証券性はないが有用性のある)・トークンである。

▶️CoinPost:仮想通貨用語集

はじめに

どんなものがブロックチェーンのキラーアプリになるのか」とイーサリアムの考案者ヴィタリック・ブテリンが問いかけたのは、2015年のことでした。

それから約3年、仮想通貨もブロックチェーンもバブルを経験しましたが、ブリテンの問いにはだれも満足の行く答えを示していないように見えます。

「ブロックチェーンは課題を探すためのソリューションだ」などと皮肉を言う人もいます。

そしてICOの熱狂的なブームを経た今、仮想通貨の最大の用途は、無記名証券への投機となっているのが現実です。

多くのプロジェクトが儲け話をただぶら下げている中で、イーサリアムだけがICOを身近なものにする利便性を提供しています。

では使用事例が全くなさそうかといえば、そうではありません。

証券取引があります。

大半の仮想通貨は正面から取り組んでいませんが、実は証券取引(セキュリティ・トークン)こそブロックチェーンが最も適した用途の1つです。

同時に、仮想通貨にはまだ完全に解決出来ない課題があります。

その課題と理由を以下に見ていきます。

ユーティリティ・トークンとは

昨年2017年のICOブームには大きな問題がありました(ここでは詐欺は別の話とします)。

それはあらゆるICOプロジェクトがユーティリティ・トークンを販売しようとしたことです。

ユーティリティ・トークンを使ったクラウドファンドは、住宅ローンを「矢じり」や「穀物袋」で支払うようなものです。

つまらないものでもいつかは価値が出るかもしれませんが、投資手段とは呼べません

あるいは、映画のチケットを前もって販売しておいて、その収益で映画館を新規建設するようなものです。

実際、投資家は株式も配当も受け取りませんでした

ICOが規制と監視の元に置かれるようになると、ありとあらゆる手段を駆使してトークンから投機の匂いを消そうとするプロジェクトも見られました。

結果はだれにとってもひどいものになりました。

投資家は価値の薄められたトークンを受け取り、有用性が特徴だったはずのユーティリティ・トークンが証券と同様に見られ、発行者はトークンを敬遠するようになりました。

そして規制当局も私たち一般の市民も、ICOや仮想通貨を前にもまして疑わしい目で見るようになりました。

証券とブロックチェーンの相性

しかし、だからといってユーティリティ・トークン捨ててしまえという話ではありません。

ユーティリティ・トークンの良し悪しは、投資に向いているかどうかだけでは決まりません。

例えばSteemは、投資には全くと言っていいほど不向きですが、実際に使われている、とても出来の良いユーティリティ・トークンです。

そのユーティリティ・トークンを証券として登録すると、有用性が失われる可能性があります。

トークン発行による資金調達で最もやってはいけないのは、良質な投資特性を取り除いてしまうことです。

その意味で「ユーティリティ」トークンや「決済」トークンを購入した人は、Ryan Coffeyのようになるリスクがあります。

Coffey氏はXRPを購入したことで投資家になったと考えましたが、Rippleにとっては1人の顧客に過ぎませんでした。

証券取引記録がこれまで唯一の実証済ユースケースであることを考えると、ブロックチェーン企業が証券を敬遠するというのは実に皮肉な話です。

トークンは株式に出来ることは何でも出来ます

単純な取引はもちろん、分割も、株主投票も。債権投資やオプション取引、デリバティブといった複雑な取引でさえ、スマート・コンタクトで自動化すればずっと簡単になります。

企業の中には株式電子化を進めてきたところもあります。

しかし電子記録の保管という点では、それら企業が行っている「中央集権的な体制で多数拠点にデータベースを持つ」現状のやり方よりも、ブロックチェーンで持つほうがはるかに勝るでしょう。

不要な中間/仲介業者の排除につながる点も見逃せません。

株式譲渡の例

ここで既存の手続きがいかに非効率かを示すために、株式の譲渡を例にとってみます。

紙で行う場合

手戻りなく「真っ直ぐに進んだ」場合ですら次の通りです。

  1. 証券会社に連絡を取り、必要書類を取り寄せます。書式は当然、会社によって異なるでしょう。
  2. 必要事項を記入します。株式保有者の氏名、譲渡を行う株式数、譲渡を行おうとする理由、その他。
  3. 自分にメダリオン署名保証(Medallion Signature Guarantee)の取得資格があることを確認します。証券会社や譲渡株式数によって、メダリオン署名保証を使うことも、別の保証を使うこともあります。
  4. その他、必要書類の準備と確認を行います。
  5. 書類一式を揃えた形で証券会社に郵送します。

ブロックチェーンではこうなる

これに対して、あくまでも必要なインフラが整っていることが前提ですが、ブロックチェーン上でセキュリティ・トークン(例えば、株式トークンやエクイティ・トークン)を送る(=譲渡する)手続きは次のようになります。

  1. アドレスを指定。
  2. 署名。
  3. 送信。

実際、ユーティリティ・トークンから距離を置いた形でクラウドファンドを行う事例も出はじめています。

ETOs(「エクイティ・トークン・オファリング」)やSTOs(セキュリティ・トークン・オファリング)といったものがそれで、Nexファウンダーズ銀行マルタ証券取引所等ではクラウド販売の一つのトレンドを形成しているようです。

単なる株式と配当に加えて若干複雑な性質を持つトークンを作ることになりますが、投資家にはより高い投資価値を提供しています。

セキュリティ・トークンに足りないもの

この記事では、これまで意図的にある点に触れずに話を進めてきました。

それは、セキュリティ・トークンをブロックチェーンに落とし込むのはテクノロジーの無駄遣いに等しいということです。

譲渡に現状1週間かかっている手続きを処理時間が14秒のブロックに記帳出来たとして、現実にはそれだけの時間短縮が見込めない事情があります。

KYCとAMLは人手で行われている

米国でも、他の国や地域の当局でも、セキュリティ・トークンの作成者には、厳格なデュー・デリジェンス要件が課せられます。

それはKYC(顧客確認)AML(アンチマネーロンダリング)です。

KYCでは出資者の身分証明書類の提出が、AMLでは出資者の資金の出処報告が義務付けられています。

このKYCとAMLの審査が担当者による人手で行われています。

よって、セキュリティ・トークンは詰まるところ「人の目の動く速さ」に制約されます。

この点を仮にクリアしたとして、まだ制約があります。

米国では、富裕層にしか取引が認められていない証券や、そもそも一切の取引が行えない証券が存在します。

IndiegogoやRepublicがICOを行ってもトークンを使ったり譲渡したり出来ないのは、こうした理由のためです。

認証ソリューションとしてはどうか

課題は暗号でなく、未だに人を妨げる機械の存在――1920年台の電話交換手と言えば伝わるでしょうか。

遠方の人に声を届けるためには、それには交換手に相手方の名前のスペルを伝えなくてはなりませんでした。

証券をトークン化する最大の障壁は、処理の完全な自動化が現時点では不可能という点にあります。

スマート・コントラクトに規制適合ICコードを埋め込む動き

もしそうだとしたら、持ち主の本人情報、国籍、収入ランクなどを運転免許書と同じ程度には他人に証明できる、一式の交換不可能なトークンがあるとしたらどうでしょうか。

ここから先は推測の域を出ませんが、規制当局がそのようなことを狙っている節があります。

スマート・コントラクトに規制コードを埋め込むことを示唆したのは、他でもない、SEC(米国証券取引委員会)の仮想通貨部門のトップ、バレリー・シュシェパニャク氏でした。

そして現実には、規制に適合したID(個人認証)プロトコルを開発するプロジェクトがすでに出てきています。

  • Polymath: STOs(セキュリティ・トークン・オファリング)の仕組みを開発するプロジェクト。認証済みアドレスを持つ認定投資家だけがトークンを保有できる。つい先日、不動産業界で実例が登場した。
  • Civic: 脱中央集権型の身元証明のエコシステムを開発するプロジェクト。
  • ERC-725: Civic同様に、脱中央集権型の身元証明の仕組みを開発するプロジェクト。
  • こうした動向を見ると、金融サービス企業がその気になれば、前述のメダリオン署名保証のブロックチェーン実装などはかなり早期に実現するのではないかと思えます。

    ブロックチェーン型証券が安全に取引出来るようになるまでにはまだ多くの準備と手入れが必要です。

    証券取引を本業とする人は、現在のブロックチェーンの透明性や取引の不可逆性を恐れて近寄ってこない可能性もあります。

    それでも、これまで幾多のICOが採用した風変わりなビジネスモデルと比べれば、証券取引はすでに仮想通貨の分野に十分に根を下ろしていると言えるでしょう。

    仮想通貨コミュニティがこれまでどれだけ多くの時間を使って「紙の証券」の世界に働きかけてきたかを考えてみれば、証券取引のブロックチェーン実装に向けた障壁は、ないに等しいはずです。

    参考記事: Blockchain Companies Are Terrified Of Their Own Killer App

    CoinPostの関連記事

    仮想通貨ICOの資金調達額が2018年最低記録を更新|その背景とは
    ICOBoxが仮想通貨のトークンセールやICOで調達された資金額が8月に1週間での合計の最低額を更新した。ICOの状況や各国の規制体制にも触れる。
    仮想通貨の爆発的な投機への関心から、実用性を追求する次なるステージへ=イーサリアム創業者
    9月8日に香港にて開催されたイーサリアム、ブロックチェーン会議にButerin氏が出席し「ブロックチェーン分野が頭打ちになって来ている」と主張し、今後1,000倍ほどの成長が見込めるチャンスはないと言及し、次なる一手としてButerin氏は、仮想通貨分野に関心を持つ人々を「関心から実用」に転換させる術が必要だと主張した。
    CoinPost App DL
    厳選・注目記事
    注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
    12/05 金曜日
    14:30
    チェーンリンク現物ETF、初日に64億円の流入で好調 ソラナETFからは最大流出
    仮想通貨チェーンリンク現物ETFの取引初日に64億円が流入し好調な滑り出しとなった。一方ソラナ現物ETFからは過去最大の資金流出があった。
    14:00
    国際通貨基金(IMF)、ステーブルコインの規制断片化に警鐘 
    国際通貨基金が今週、ステーブルコイン市場の評価報告書を公開し、各国の規制枠組みの断片化が金融安定性を脅かし監視を弱体化させ、国境を越えた決済の発展を遅らせていると警告した。
    13:30
    CZとピーター・シフが激論交わす、ビットコインvs金「どちらが真の価値保存手段か」
    バイナンス創設者CZ氏と金支持派エコノミストのシフ氏が4日、ドバイでビットコイン対トークン化金の討論を実施。金塊の真贋確認場面が話題となり、検証可能性や価値保存機能をめぐり対照的な見解を示した。
    12:00
    アジア最大級のWeb3カンファレンス「WebX2026」、チケット販売開始
    アジア最大級のWeb3カンファレンス「WebX2026」が2026年7月13日・14日にザ・プリンスパークタワー東京で開催。本日よりVIP Pass、Business Pass、Booth Passのチケット販売を開始。開幕セール価格は2月28日まで。
    11:52
    ビットコイン、政府系ファンドは8万ドル台で買い増し 日銀政策と円キャリートレードにも注目
    ブラックロックのフィンクCEOは、複数の政府系ファンドがビットコインの大幅下落局面で買い増していたことを明らかにした。一方、CryptoQuant CEOは2022年のような大暴落は起きにくいと分析。市場は12月の日銀政策決定に注目、円キャリートレードの動向がビットコイン含むリスク資産に影響を与える可能性を考察する。
    11:20
    「ストラテジー社は株価指数から除外されてもBTCを売却しないだろう」Bitwise
    Bitwiseのマット・ホーガン最高投資責任者は、ストラテジー社は株価指数から除外されてもビットコインは売却しないだろうとの見方を示した。その根拠を説明している。
    10:15
    XRPレジャーの流通速度が年間最高値を記録 オンチェーン活動が急増=CryptoQuant分析
    XRPレジャーの流通速度流通速度が12月2日に年間最高値0.0324を記録。大口保有者による2100億円規模の買い増しや取引所準備金の減少など、オンチェーン活動の活発化が確認された。CryptoQuant分析。
    10:05
    年末にかけての下落リスクを軽減する価格帯は? ビットコイン最新市場分析=Glassnode
    Glassnodeが仮想通貨ビットコイン市場の最新週間レポートを発表。需要低迷と含み損拡大の中、年末の下落リスクを抑える価格帯などを分析している。
    08:55
    JPモルガンがストラテジーのビットコイン売却回避能力を評価、「マイナーの動きより重要」
    JPモルガンのアナリストが、ストラテジーのビットコイン売却回避能力がBTC価格の短期見通しにおいてマイナー活動より重要だと分析した。
    08:20
    21シェアーズ、米国初のスイ(SUI)連動2倍レバレッジETFを上場
    21シェアーズが米国証券取引委員会の承認を得て、スイ(SUI)の価格に連動する初のレバレッジETFをナスダックに上場した。日次リターンの2倍を提供する商品で、スイエコシステムに関連する初のETFとなる。
    08:10
    「政府系ファンドは相場下落時にBTCを買い増し」ブラックロックのCEO
    ブラックロックのラリー・フィンクCEOは、複数の政府系ファンドが仮想通貨ビットコインを購入していると明かした。相場下落時に買い増ししている様子も伝えている。
    07:25
    ソラナとベース間ブリッジが稼働開始、チェーンリンクとコインベースが安全性確保
    レイヤー2ベースチェーンがソラナとのブリッジをメインネットで正式稼働。チェーンリンクCCIPを採用し、両チェーン間でのトークン移動と取引が可能になった。
    07:02
    メタがメタバース予算を最大30%削減検討、VR・ホライゾン・ワールズが対象=報道
    ザッカーバーグのメタ社がメタバース関連事業の予算を来年最大30%削減する検討を進めている。投資家から歓迎され株価が上昇した。
    06:25
    ロシアが仮想通貨マイニング収益の公式統計反映を検討、隠れた輸出として年間数千億円規模か
    ロシア大統領府のオレシュキン副長官が仮想通貨マイニング収益を貿易収支に計上すべきだと提案した。マイニング収益は1日約10億ルーブルに達し、隠れた輸出として外国為替市場に影響を与えているという。
    06:02
    ソフトバンクなど出資のビットコイン企業「21キャピタル」、12月9日から「XXI」で取引開始
    ビットコイン特化企業の21キャピタルとカンター・エクイティ・パートナーズの事業統合が株主承認を得た。ティッカーシンボル「XXI」として株式の取引を開始。
    通貨データ
    グローバル情報
    一覧
    プロジェクト
    アナウンス
    上場/ペア
    重要指標
    一覧
    新着指標
    一覧