
韓国の個人投資家の影響力
ビットコインテクノロジー企業JAN3のCEOであり、世界有数のビットコイン支持者としても知られるサムソン・モウ(Samson Mow)氏は、韓国の個人投資家の約60億ドル(9,000億円相当)に上る資金がイーサリアム価格上昇を牽引しており、イーサリアム・トレジャリー企業を支えていると主張した。
モウ氏は6日、Xへの投稿で「ETHのインフルエンサーらは、個人投資家へのマーケティングのためだけに韓国に飛んできている」と述べ、韓国でイーサリアムに対する熱狂が起きていると示唆した。
ここ数カ月、韓国の暗号資産(仮想通貨)取引所はイーサリアムの価格変動に大きく貢献してきた。韓国の個人投資家に人気の大手暗号資産取引所Upbitは、過去1週間のイーサリアム先物取引量で12億9,000万ドル(1,942億円)を記録し、中央集権型取引所の中で第10位にランクインした(CoinGlassデータ)。
韓国の個人投資家によるイーサリアムへの関心の高まりを示す重要な指標の一つが、他国・地域の取引所との仮想通貨価格差を指す「キムチプレミアム」だが、韓国の取引所でイーサリアムのキムチプレミアムが発生。CryptoQuantデータによると、5日には1.93に達し、7月中旬の-2.06から大幅な上昇を見せた。
また今年8月、韓国経済新聞は韓国の個人投資家が、テスラやアップル、アルファベットなどの米ハイテク株を売却し、仮想通貨関連銘柄へ資金を移動していると報じた。中でも最も多く購入されたのが、最大のイーサリアムトレジャリー企業ビットマイン社の株で、購入額は1ヶ月で約2億6,900万ドル(約405億円)に達した。
しかし、モウ氏は、これらの投資家は「ETH/BTCチャートを全く理解せずに、次なるストラテジー社を買っていると考えている」と批判し、「良い結末をもたらすことはないだろう」と警告した。
トム・リー氏の戦略を批判
モウ氏のイーサリアムトレジャリー企業投資に対する警告は、仮想通貨VCメカニズム・キャピタル(Mechanism Capital)の創設者アンドリュー・カン(Andrew Kang)氏が、ビットマイン社のトム・リー会長によるイーサリアムの将来性に関する強気の主張を、痛烈に批判した流れを受けたものだ。
カン氏は9月24日、「トム・リーのイーサリアム理論は馬鹿げている」と題したXへの長文の投稿で、イーサリアムの価値が大幅に上昇するというリー氏の五つの根拠について、データを用いて反論。リー氏のイーサリアムに対する高い評価は「主に金融リテラシーの欠如に起因している」と非難した。
まず、ステーブルコインとトークン化された現実資産(RWA)の取引量の急激な拡大(市場は100〜1,000倍成長)により、イーサリアムの手数料収益も大幅に増加するとリー氏は見込んでいるが、実際にはイーサリアムの手数料収益は2020年から横ばいであり、価値の蓄積は起きていないとカン氏は指摘。その背景として、他の競合ブロックチェーンの台頭を挙げた。
カン氏はまた、イーサリアムを「デジタルオイル」と比較する論調にも疑問を呈し、100年以上インフレ調整後に価格が横ばいの石油との類似性は、強気の理由とはならないと述べた。
次に機関投資家が、資産をトークン化したネットワークのセキュリティ向上と運転資金としてイーサリアムを購入し、ステーキングするという、リー氏の見方も否定した。大手銀行がイーサリアムをバランスシートに追加したという例はなく、その計画を発表している機関もない。銀行は、電気料金支払いと同じく、必要になった時にのみ、イーサリアムを購入し、支払いに充てるという考えを示した。
さらに、イーサリアムの価格が世界の金融インフラ企業の市場価値の総額を反映するようになるというリー氏の考えは、仮想通貨市場における価値形成の仕組みに関する根本的な誤解であると指摘した。
最後にカン氏は、テクニカル分析から「イーサリアムは数年にわたるレンジ相場にあり、抵抗線を突破できていない」と指摘。「広範なマクロ流動性によってイーサリアムの時価総額は何とか維持されているが、重大な組織的変革がない限り、今後も無期限にパフォーマンスが低迷する運命にあるだろう。」と結論づけた。
強気を維持
このような批判の中でも、ビットマイン社はイーサリアムの蓄積を継続している。
同社は6日、仮想通貨と現金を合わせた総保有額が134億ドル(2兆円相当)に達したと発表。5日時点でイーサリアム保有量は283万151ETH(17万ETH超を追加購入)、ビットコイン保有量は192BTCとなっている。
この発表を受けて、同社の株価は前日比で11.60%上昇。3日時点の1日のビットマイン株取引高(5日間平均)は25億ドルで、米国で28番目に取引量の多い銘柄となっている。
関連:トム・リー率いるビットマイン、1234億円相当のイーサリアム追加購入
著名投資家からのビットマイン社への投資事例もある。
キャシー・ウッド氏率いる米ヘッジファンド大手ARK Investは9月、同社の主力ETF商品を通じて、ビットマイン社の株式を38万7,000株、合計1,600万ドル(約24億855万円)相当を購入した。同社は7月に、ビットマインの普通株式477万3,444株(1.82億ドル相当)を取得している。
また、著名起業家で投資家ピーター・ティール氏は7月、同氏が率いる米VC「Founders Fund」を通じてビットマイン社の株式の9.1%を取得した。