- テザー(USDT)の時価総額は、過去3ヵ月で40%増
- 今年4月より、米ニューヨーク司法当局との管轄権などをめぐる裁判で揺れるテザー社であるが、BTCの高騰や世界経済不安を背景に、5月〜7月におけるUSDTの時価総額は40%以上増加している。
テザー(USDT)の時価総額は過去3ヵ月で40%増
仮想通貨データ分析サイトTokenInsightの7月に関する報告書によると、米ドルにペッグされるステーブルコイン市場において、テザー社が発行するUSDTは7月末までに80%以上のドミナンス(時価総額)を占めている。
ステーブルコイン市場で取引されている銘柄は、USDT以外に複数あるが、USDTに次ぐドミナンスの高い銘柄はUSDCに当たる。2位とは言え、たったの8%しか占めておらず、これはUSDTの10分の1の規模となる。
USDTとUSDCは、5月〜7月のビットコイン強気相場期間において、時価総額が共に増加し、各々42%、47%で拡大してきている。一方、最もドミナンスの少ないのは、取引所ジェミニが手がけるGUSDで、0.14%にすぎない。
USDCは、米取引所コインベースとサークル社が共同で立ち上げたコンソーシアムによって発行されるステーブルコインで、ニューヨーク州の規制当局に登録している。
ジェミニのGUSDも同様にニューヨーク州に登録しているいわゆる「合法的ステーブルコイン」ではあるが、ドミナンスを拡大したUSDCとは異なり、85%の大幅減少を記録した。なお、「DeFi」プラットフォームMakerDAOが発行する米ドルステーブルコイン「DAI」も同じ時期において時価総額を減らしていた。
ニューヨーク司法当局との管轄権判断争いも
特筆すべきは、USDTの状況だ。テザーUSDTは強気相場の間において、複数回でいわゆる「テザー砲」によって大量に発行され、ビットコインの買い資金に充当していたと見られている。
しかし、今年4月よりニューヨークの司法当局(NYAG)は、テザーにおける準備資金の8.5億ドルを不正で利用した疑惑があるとして、テザー社およびBitfinex・iFinexを無登録営業の調査対象にし、裁判沙汰に至っている。
テザー社とBitfinexはNYAGに対応しながらも、USDTの発行を続けていた。
しかし、2日前にはCohen裁判官はBitfinexとテザー社がNYAGの管轄権(取り締まり)の範囲に当たると判断し、NYAGが調査を続け、Bitfinexらに財務書類の開示を要求することを認めた。この判断を受けたBitfinex側は、上訴する書類を提出し、判断の撤回を求めるなど両者の主張は真っ向から対立している。
実際、書類開示判断の撤回が否定された場合、USDTの発行に当たる資金の監査に直面する可能性があるテザー社が、どのように対応していくかはまだ未知数ではある。USDTの時価総額、そしてビットコインの相場にもある程度影響が及ぶと懸念されている。
参考:TokenInsight