BitMEXがビットコイン出力時の精度レベルを分析
現在、ビットコイン取引における出金の70%以上が、利用可能な最高の精度である1 Satoshi(1BTCの1億分の一)単位を含んで行われていることが、BitMEXのリサーチ部門の最新研究で明らかになった。
研究者は、ビットコインネットワーク開始以降のすべてのトランザクションにおける出力データ13億件を、小数点以下の桁数で14のグループに振り分け、それぞれの精度を評価した。
対象となったトランザクションの合計は、54億BTCで、12兆ドルを超すという。小数点以下の桁数が多いほど、精度が高いとの評価を受ける。
精度が最も高いのが、最後の桁が1Satoshi(=0.00000001 BTC)がとなる出力で、最も低いものが100,000BTCと設定されている。(参照)
研究ではグラフに示されたいくつかの変則的な数値については次のように説明した。
1. 2009年および2010年の10BTCグループには、coinbaseによる出力が含まれると同時に、当時のブロック報酬は50BTCにも上ったことが影響
2. 2013年:10Satoshiグループの取引量の増加はSatoshi Diceというギャンブルゲームが影響
3. 2015年:1000Satoshiグループの出力の割合の増加は、2015年から2017年の間、ビットコインコミュニティが苦しめられた「ブロック戦争」に関連したいわゆる「flood」攻撃によるものだと説明
分析結果と考察
BitMEXはこの10年間で、ビットコイン出力の精度が大幅に上昇し、2012年には最高の精度の出力が40%程度だったのに対し、現在では70%を超えていると分析。
また、2012年には10%以上あった「整数」のビットコイン出力(1BTC単位以上の出力)は、2019年には、わずか0.6%へ落ち込んでいる。累積平均出力値は4.26BTCだという。
出力の精度が向上した理由として次のような要因をあげている。
1. ビットコインの初期のユースケースは実験的であり、技術的なテストやオンチェーンギャンブルなどでは、1BTC単位の支払いの可能性が高かった。
2. ビットコイン価格の大幅な上昇
3. ビットコインの一般経済への普及により、法定通貨の額に対応したビットコイン支払いの増加(米ドル建ての商業取引や投機目的など)
4. 2010年半ば以前にはビットコインの明確な現物価格がなかったため、精度の高さは求められなかった可能性
5. 歴史が長くなるにつれ、出力の一部が未使用のまま(UTXOと呼ばれる)累積していく。現在6500万UTXOを超え、累積総出力量の5.1%を占めているという。
導き出した結論
研究者は、通貨の持つ3つの役割(価値の交換手段、貯蔵手段、価値の尺度)に言及し、ビットコインが通貨として受け入れられる可能性について、議論を展開した。
研究者によると、ビットコインは「最初のステップ」である価値の交換手段としての地位を確立することにも苦戦しているだけでなく、「最終段階」の価値の尺度となるには、「精度レベルの低下が必要」なため、研究データがその真逆の動きを示しているビットコインが、一般的な会計単位として受け入れられるのは、まだまだ「夢物語」の域を出ないだろうと結論づけた。
ここでまず、疑問となるのは、通貨として確立される道筋として、価値の交換手段が第一前提となっていることだろう。歴史的に見た場合、通貨としての発達段階を、1.価値があるものとして社会で認知される、2.価値の保存手段、3.価値交換の媒体、4.価値の尺度とする経済学者も多く存在する。
価値が保存できるからこそ、交換する価値も生まれるのではないだろうか。
その意味では、現在ビットコインは第一段階から、第二段階である「価値の保存」へと移行する段階だと、エンジニアでビットコイン支持者のVijay Boyapati氏は説明。また、決済手段としてよりも、デジタルゴールドとしての認識が高まりつつある現状を鑑みると、ビットコインは着実に通貨としての発達段階を進んでいるようにも思える。
次に、「会計単位としての地位が達成されるか、より一般的になる場合、おそらく精度のレベルは増加するのではなく低下するはずだ」という前提については、研究者は具体的な論拠を示していない。
発行上限が決められたビットコインでは、1BTC単位で表記できない価値に対処するため、その1億分の一まで表記できるSatoshiという単位が設けられている。そのため、BTCではなく現在では一円の価値もないSatoshiが、将来的に会計単位となっても不都合はないかもしれない。
このような疑問を持ったツイッターユーザーのコメントに、BitMEXリサーチは、「その場合、ビットコインには分割可能性の問題が出てくる」と返答した。
参考:BitMEX