はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用 WebX
CoinPostで今最も読まれています

『ステーブルコインの現状と将来性』Facebookの仮想通貨リブラ、中銀デジタル通貨台頭で業界再編へ

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

存在感増すステーブルコイン

これまでテザー(USDT)に代表されるステーブルコインであったが、ここ数年はフェイスブックの主導する仮想通貨リブラの登場や、中央銀行デジタル通貨(CBDC)などの台頭で、仮想通貨(暗号資産)の中でも日々その存在感を増しつつある。

ステーブルコインとは、円やドルといった国の法定通貨など、実際のアセットに裏付けられた仮想通貨である。

例えば、米ドルであれば1ドル=1コインとして発行され、仮想通貨特有の激しいボラティリティやスケーラビティ問題が決済・送金分野での普及を阻害するなか、ステーブルコインにおける裏付け資産の価値の安定性、仮想通貨の利便性の双方を享受できるのがメリットだ。

ただし、テザー(USDT)を筆頭に、現状は米ドルのステーブルコインが市場の大半を占めている。

Cryptoslateによると、現在ステーブルコインに分類される仮想通貨を合わせると、時価総額にして80億ドルを超える規模になる。とりわけ、最も時価総額の多いステーブルコインのテザー(USDT)は、仮想通貨の時価総額ランキングで5位以内に入っている。

出典:Stablecoin Indexより

代表的なステーブルコイン

この他にも、時価総額の大きいものとしてPaxosやTrueUSDなどが存在する。最大手仮想通貨取引所のバイナンスやGemini、フォビでは、それぞれ独自にステーブルコインを発行している点も興味深い。

テザー(USDT)

テザー(USDT)は米テザー社が発行するステーブルコインだ。その発行額は、2020年5月時点で64億ドルとステーブルコインの中でも圧倒的なシェアを誇る。

大手取引所のOverbitが実施した調査では、比較的投資歴の長いトレーダーに人気のある仮想通貨の銘柄はBTC、ETHに続いてテザー(USDT)が3位にランクインするなど、下落局面で法定通貨に換金しなくても済むといった側面やUSDT建ての通貨ペアなど、その利便性から重宝されている現状が浮かび上がる。

関連:トレーダー調査、投資上級者ほど仮想通貨テザー(USDT)に明確な需要

USD Coin

USD Coinは、米大手取引所のコインベースが提供するステーブルコインだ。時価総額ではステーブルコインの中でUSDTに次いで大きく、米Circle社が共同で開発を行っている。

DAI

DeFiプロジェクトMakerDAOの提供する仮想通貨で、OpenSeaなどブロックチェーンゲームにおけるデジタル資産の取引などでも使用されることがある。Daiは、ETHなどを担保として借りることができるステーブルコインで、1DAI=1米ドルとなるよう設計されている。

関連:「MakerDAO」で損失を被った投資家、財団ら相手に集団訴訟

Tether Gold

テザーゴールドはテザー社が発行する金を裏付けとしたステーブルコイン。新型コロナウイルスで市場急落が起きた際、安全資産として俄かに注目を集めた。

関連:仮想通貨で「有事の金」 テザーゴールド、時価総額2500万ドル突破

ステーブルコインのメリット

前述の通り、ステーブルコインは、法定通貨の安定性と仮想通貨の利便性を両方備えている。

ビットコインなどは価格変動が激しさやトランザクション速度の遅さなどがボトルネックとなって日常的な決済への普及が進んでいない現状があり、比較的安定した価値を持つステーブルコインが、仮想通貨の決済利用の普及に貢献すると考えられている。

また、ステーブルコインは法定通貨とは違い、24時間365日取引されているという特徴がある。例えば、FX(外国為替証拠金取引)においてステーブルコイン間の取引ペアを用意すれば、常に取引が可能なサービスを提供することも可能だ。

バイナンスのCEOであるCZ氏はバーチャル・ブロックチェーン・ウィークに登壇し、ステーブルコインがこれまでの商習慣に溶け込みやすいとして、ステーブルコインの小売り業者への普及を可能性に挙げた。

CZ氏は、法定通貨建てのトークンは仮想通貨を持ちたいと思いつつも、未だに支払いは法定通貨で行われる必要がある個人や業者にとっての”譲歩案”になるとしている。

現状と、規制環境について

現在のところ、テザーなどのステーブルコインは、仮想通貨取引所における資金の保有手段、あるいはレンディングサービス利用のための保有などが主な利用用途となっている。

つまり、価値が安定しているという以外のメリットはあまり活用されていないのが現状と思われる。

一方で、金融安定理事会(FSB)は14日、米フェイスブックが主導する仮想通貨(暗号資産)リブラのように世界的な利用が想定されるグローバルステーブルコインについての勧告を発表した。

その仕組みや機能等について、利用者や関係者に包括的で透明性のある情報を提供することなどが示され、最終的な勧告は今年10月に発表される予定となっている。

関連:金融安定理事会、グローバルステーブルコインで規制案 技術革新の支持も表明

ステーブルコインは、世界の基軸通貨である米ドル建てが大半を占めており、Stasis Euro(EURS)など、ユーロなどに裏付けられたものも存在するが、発行額や種類においてその存在感は限定的だ。

米ドル以外のステーブルコインを多く提供している取引所の一つがバイナンスだ。4月16日にはインドネシアの法定通貨、ルピアのステーブルコインを上場させるなど積極的に取り扱い通貨を増やしている。

関連:バイナンス、インドネシア・ルピアのステーブルコインを上場へ

リブラやCBDC登場が起こすパラダイムシフト

現在最も普及するテザーの代替手段、あるいは競合となり得るとされるのが、フェイスブック主導の仮想通貨リブラや中央銀行の発行するデジタル通貨CBDCとの指摘も少なくない。

「金融包摂」を掲げるリブラは、フェイスブックなどが参加するリブラ協会によって開発される仮想通貨だ。金融包摂は「ファイナンシャル・インクルージョン」とも呼ばれ、貧困者や中小事業者など、これまで「信用、貯蓄、保険、決済、送金」などの基本的な金融サービスにアクセスすることが難しかった人々に対し、手頃なコストで金融サービスへのアクセス利用できるようにする取り組みを指す。

リブラは当初の計画では、複数の法定通貨などを裏付け資産とした仮想通貨だった。

しかし、紆余曲折を経て計画が変更され、リブラUSDやユーロUSDといった単一の法定通貨を裏付けとした通貨プランを示したことで、ステーブルコインのより直接的な競合となる可能性が出てきた。

なお、複数の資産を裏付けとする「バスケット型」も将来的に発行する余地を残している。

関連:仮想通貨リブラが変えるデジタル決済の未来 挑戦は始まったばかり

中国がCBDC開発でリード

CBDCはその名の通り、中央銀行が発行するデジタル通貨だ。中でも中国はCBDCの開発を積極的に進め、既に国内の主要都市で試験を行っており、実用レベルにおける最初のCBDC発行国となる可能性が高まっている。

関連:中国のマクドナルドやスターバックスなどで「デジタル人民元」試用か

また、国際決済銀行(BIS)の調査によって、発展途上国でのCBDC発行への意欲が高いことが明らかになっている。

発展途上国では先進国に比べ金融インフラで劣っているのが現状だが、同様のレベルのシステム構築には莫大な費用がかかる。

新しい技術の採用というリスクはあるもの、CBDCの発行は途上国にとって先進国との差を一気に埋め、金融包摂を推進できる可能性があるため、途上国の方が意欲が高いという結果になっている。

関連:国際決済銀行(BIS)調査、CBDC実証実験が加速

これらの競合は将来的にステーブルコインの勢力図を大きく変えていくと思われ、その場合、フェイスブックに関しては自社のSNSサービスの顧客基盤、中央銀行に関してはその信用力などが、競争力、シェア獲得の源となると考えられる。

また、当初のリブラがバスケット型を採用し、各国の法定通貨やCBDCとは相補的な関係になることが予想されていたが、単一通貨を担保とする計画へと変更されたことで、この両者間でも直接的な競合関係が成立しうる。

この懸念に対し、リブラの修正計画案では、中央銀行がデジタル通貨を発行した場合、それらのCBDCが直接リブラネットワークに統合されることを望むとの記載がある。

例として中央銀行がデジタル通貨を発行した場合、リブラ協会は該当する単一通貨ステーブルコイン(リブラUSDなど)をそのCBDCと置き換えることができる。

すなわち、リブラ協会はCBDCが発行された場合に国家と競合するものではなく、CBDCをサポートする側に回るという協調姿勢を示している。規制に全面的に従う方針が示されたことで、当初の革新的な思想が失われたと失望の声もあるが、一方で現実主義に転換したリブラローンチに対する現実味は増してたといえるだろう。

ステーブルコインの多様化

ステーブルコインというカテゴリは、これまでのテザーの独り勝ち状態から概ね変化のない状態が続いてきたが、CBDCやリブラの登場により大きく勢力図が塗り変わる可能性も生じている。

投機的な観点からは注目度の低いステーブルコインだが、仮想通貨の利便性を本当の意味で世に広める役目を追っているのは、ステーブルコインかもしれない。

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
10/05 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、BTC20万ドル到達分析や米国でXRPなどのETF個別申請が不要になど
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナといった主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン1700万円台後半に回復、米政府機関閉鎖で逃避資金流入|bitbankアナリスト寄稿
今週のビットコイン円相場は1775万円周辺まで反発。米政府機関閉鎖による逃避資金流入と利下げ期待の復活が支援材料に。ドル建て12万ドル回復で史上最高値更新の可能性を解説。
11:00
週刊仮想通貨ニュース|自称「IQ276」投資家のBTCへの全財産転換に高い関心
今週は、自称IQ276の投資家によるビットコインへの全財産転換、米政府閉鎖による仮想通貨ETF承認手続き停滞、バイナンスによるビッグトレンド分析に関する記事が最も関心を集めた。
10/04 土曜日
13:30
仮想通貨強気相場を加速か? トランプ米大統領が最大2000ドルの給付金を検討
米国のトランプ大統領が関税収入を基に最大2,000ドルの国民給付金を検討している。コロナ禍では給付金がビットコイン上昇を後押ししており仮想通貨市場への影響が注目される。
11:40
ビットコインマイニング大手MARA、BTC保有量が1兆円に迫る
Maraが発表した9月の生産実績によると、218ブロックを獲得し前月比5%増を記録した。ビットコイン保有量は52,850BTCに達し、上場企業の中でストラテジーに次ぐ第2位の保有額。
11:05
ウォルマート傘下のワンペイ、仮想通貨取引機能を年内追加へ
ウォルマートが過半数を所有するフィンテック企業ワンペイが年内にモバイルアプリで仮想通貨取引とカストディサービスを開始すると報じられた。
10:15
ビットコイン現物ETFへの週間流入が3300億円到達、「アップトーバー」の兆しか
米国の仮想通貨ビットコイン現物ETFへの週間流入額が3,300億円に到達した。過去データから10月の上昇傾向「アップトーバー」が注目されている。
09:50
テザーなど、金トークントレジャリー設立で2億ドル調達へ=報道
テザーとアンタルファがトークン化ゴールドを蓄積するトレジャリー会社設立のため2億ドル以上の資金調達を協議中とブルームバーグが報じた。
08:30
ビットコイン円建て史上最高値更新、米政府閉鎖で逃避資金が集中|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは4日、円建てで史上最高値を記録。米政府の閉鎖によって「無国籍資産」としてのビットコインの存在感が強まり、投資家心理は極めて強気である。
07:50
コインベースが連邦信託認可を申請、決済サービス拡大の狙いで
仮想通貨取引所大手コインベースが3日に通貨監督庁に国家信託会社認可を申請したと発表した。カストディ事業を拡大し決済関連サービスを提供する計画で、銀行になる意図はないと明言。
07:42
コインベースとSamsung、Galaxyスマホユーザーに仮想通貨体験を提供へ
コインベースとSamsungがパートナーシップを締結。まずは米国のGalaxyスマホユーザーがCoinbase Oneを試験利用できるようにして、仮想通貨の利用機会を提供する。
06:40
24銘柄以上の仮想通貨関連ETFが新規申請、米政府閉鎖で承認手続きに遅延
様々な投資運用会社が3日に24銘柄以上の仮想通貨ETFを新規申請したと報じられた。しかし米国政府閉鎖によりSECの審査プロセスが停止し、承認時期が不透明になっている。
06:10
BNBが1100ドル突破でBNBチェーン銘柄大幅高、CAKEが40%高騰
仮想通貨BNBが3日に1,100ドルを突破したことでBNBチェーンのネイティブプロトコルへの投資家関心が再び高まった。パンケーキスワップのCAKEトークンは24時間で約30%上昇。
05:45
イーサリアム財団、6.6億円相当ETHをステーブルコインに換金予定
イーサリアム財団が4日に1000ETH(6.6億円相当)を売却すると発表した。CoWSwapのTWAP機能を使用し、研究開発や助成金、寄付の資金調達を目的としている。
10/03 金曜日
18:27
野村HD傘下Laser Digital、暗号資産交換業登録を目指す
野村HD子会社Laser Digitalが、日本で暗号資産交換業者登録を目指し金融庁と協議中。スイス発の同社は国内金融機関向け事業展開を計画。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧