CoinPostで今最も読まれています

XRP(リップル)保有者向け通貨付与、日本の対応に遅れが生じる背景を考察

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

Flare Networks

「Flare Networksのような事例が続くと、正直厳しい・・・」

国内業界関係者から、このような声が漏れつつある。

Flare Networksとは、Ripple社の投資部門「Xpring」からの支援を受けており、仮想通貨XRP保有者向けにネイティブトークンSparkの付与(エアドロップ)を予定する企業のこと。12月12日に配布する数量を決定するスナップショット(権利確定日)が迫るなか、取扱い審査の厳しい日本国内では、顧客預かり資産のXRPに対する付与方針の決定について、事業者が四苦八苦している。

エアドロップとは、仮想通貨業界では度々起こる通貨が配られるイベントのことで、厳密には区分が異なるものの、通貨分裂(ハードフォーク)を伴うものや、企業がプロモーションの一環として通貨を配る方法などがあった。

有名な事例では、通貨付与後に10万円を超える値がついたビットコインキャッシュ(BCH)の分裂事件が挙がる。

なぜエアドロップのハードルが高いのか

では、なぜ今回のFlare Networksのエアドロップがここまで国内事業者を苦しませているのか?その理由は主に3点だ。

  • エアドロップ先のコントロールをFlare Networksが行う点
  • 国内のXRP保有者の多さ
  • Ripple社も関わる重要プロジェクト

この中でも最も重要なポイントが、1点目の「エアドロップ先のコントロール」だ。

通常の通貨付与(ハードフォークやエアドロップ)では、基本的に対象の仮想通貨を保有している人に対し、配られた通貨が得られる権利が公平に付与される。これは、個人のウォレットから顧客資産を預かる取引所も含めて同じだ。

権利自体は、公平に付与されることから、取引所も事後対応ができることも特徴にあがる。

一方、Flare Networksのケースでは、XRPの総発行量1000億枚と同量のSparkトークンが発行されるが、そのトークンを配る先を発行主体に当たるFlare Networks側が管理・コントロールしている点に相違点がある。

個人(ウォレット)保有のケースでは、それに該当しないが、リップル社及びリップル社関連のアカウントや、詐称・詐欺やスキャムなど不当な方法でXRPを受け取ったことが確認されているアカウントは付与対象から除外されるほか、取引所も自社で付与を受けるための事前申請が条件とされている。

この、取引所の事前申請が日本の取引所を苦しめる主な要因で、エアドロップ予定の12月12日が差し迫る中、臨時対応に追われている。

日本特有の事情とは

申請が必要であれば、行えばいいと思われがちだが、日本の場合、そう簡単にはいかない事情がある。

エアドロップのような通貨付与が行われるのは、一般的に日本で取り扱われていない「新規の仮想通貨」を取り扱うことになるが、取引サービスを提供せず、取引所ユーザー向けに付与された通貨自体を配ることに対しても、この取り扱うための申請が必要になるのが、現状の規制だ。

仮にこの申請が通らなかった場合や、取引所として該当通貨を扱わない方針である場合は、該当通貨を売却して日本円でユーザーに還元する仕組みを取ることもできる。

しかし、Flare Networksの場合は、Flare側の方針が影響して、日本円の付与ができないという。

Flare側の見解は国内ユーザーの質問に答える形で示されているため、一部内容を引用する。

日本ではどんな状況があっても、取引所が代わりにSparkを精算して円を付与することはない。

取引所が付与を代行しないSparkはバーンする(トークンを消滅する意味)

これは、取引所が取扱いの方針を示さないケースでは、トークン自体の受け取る権利が付与されないことを意味する。トークンを受け取ることができなければ、内部的に売却を行い、ユーザーに日本円を付与することはもちろん不可能だ。

ここから導き出される選択肢は、取引所としてSparkトークンを取り扱うか、取り扱うこと自体を断念するかの2択になる。

しかし、取り扱う場合は、前述の通り、日本のホワイトリスト申請に則った形の申請が必要となり、スナップショット日の12月12日までに確定ができないジレンマにあることは明らかだ。これが、日本の取引所が対応方針をすぐに出せない背景と一連の流れと考える。「対応が遅いのではなく、対応までのハードルが高い」、この言葉こそが、国内の事例を映すと言えるだろう。

劣勢に立たされる取引所の立場

無論、取引所としては「対応したい」のが本音だろう。

日本国内のXRP保有者の多さは、2016年から17年に見られた仮想通貨バブル時の盛り上がりを見ても明らかであり、対応しない方針を示すことは、自社のサービスから他社にユーザーが流れてしまうリスクを意味するためだ。国内全ての取引所が対応できずに顧客が海外に流れれば、金融庁が推し進める「顧客保護」の観点とは相反する。

そういった意味でも、方針を示したGMOコインの例や、国内の仮想通貨(暗号資産)事業者12社(オブザーバー1社)が先月25日に発表した、「Flare Networks Sparkトークン付与についての対応」について共同声明を採択し、Flare Networksとの協議を行なっている方向性と、その結果は重要なポイントになると言っても過言ではない。

また、今後同様の事例に対する対策も業界一丸となって行う必要がある。特にトークンの発行を行うプロジェクト側から、取引所に対する圧力をかけることができるとも捉えられるケースが続く可能性に、強い懸念感を示す業界関係者も多い。

解決策としては、取引所で上場するケースと、トークン付与のみを行うケースで、ホワイトリスト等の基準を大きく変更するなどの案があがるが、実際に適応できるルール化ができるかのハードルもある。

今回のFlareのように大型のプロジェクトではないケースで、民意が盛り上がった時の対応をどうするか。日本国内の規制方針との狭間に揺れる、仮想通貨取引所の苦悩は今後も続きそうだ。

関連:Flare Networkとは|XRP(リップル)と密接に関わるSparkトークンの将来性
CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
13:02
ビットコイン1000万円台割り込む、高騰していたアルト急反落にも警戒感
暗号資産(仮想通貨)相場ではビットコインが続落。日本円建て価格で1000万円台を割り込んだ。イーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)などアルトコイン相場の方が下げが顕著で警戒感が強まりつつある。
11:35
CZ氏、世界の子どもに向けた「Giggleアカデミー」を立ち上げ
仮想通貨取引所バイナンスのCZ前CEOは、世界の子どもに基礎教育を無料で提供するプログラム「Giggle Academy」を立ち上げると発表した。
11:00
アバランチ財団、ミームコイン5種の保有を発表 
アバランチ財団が暗号資産(仮想通貨)AVAXのエコシステム支援のため、Coq InuやTechなど5種類のミームコイン保有を公表。コミュニティ活性化の一環として選ばれた。
10:20
今後ビットコイン現物ETFにさらなる資金流入可能性 CoinShares分析
仮想通貨投資企業CoinSharesのアナリストは、ビットコインには今後数か月の間に需要急増が起こる可能性があるとの見解を述べた。
08:20
ミームコイン熱狂でソラナのGoogle検索数急増、2018年ICOブームに類似との懸念も
次にヒットするミームコインを探すトレーダーや投資家は「BOME」プレセール型ローンチをはじめ、さまざまなプレセール型ミームコインに資金を流入させ、その多くが「出口詐欺」であることが確認されている。
07:15
SCB銀、イーサリアム現物ETF承認の今後の影響を分析
仮想通貨イーサリアムの現物ETF承認なら最初の1年で6兆円超の資金が流入する可能性があると、英大手銀行のスタンダードチャータード銀行が分析。今後のイーサリアムやビットコインの価格予想もしている。
06:20
OKX、欧州でUSDT通貨ペアを廃止 MiCA法準拠で
USDTはOKXやバイナンス、Bybitなど集権型取引所の出来高の根幹となっているためUSDTペアの廃止は取引所の収益に打撃を与えることになる。
05:50
AI・DePIN関連銘柄「Akash」、コインベースに新規上場
半導体大手エヌビディアが今週「NVIDIA GTC AI 2024」を開催することから、思惑買いで先週末にAKTやRender、ワールドコインなどのAI仮想通貨銘柄は一時的に値上がりしたが、その後反落。
03/18 月曜日
19:46
プライバシー保護と相互運用性に特化した「Partisia Blockchain」の魅力とは 専門家が動画解説|WebX STUDIO
企業や自治体からも注目される、秘匿マルチパーティ計算(MPC)を用いてプライバシー保護と相互運用性に特化したPartisia Blockchainとは。コミュニティサポーター「ぐぬぐぬたい」氏がCoinPost YouTube番組「WebX STUDIO」に出演し動画解説を行なった。
15:25
「Web3の未来をリードするのはアジアの国々」Parity Asia製品工学トップが見解示す
ブロックチェーンインフラ企業Parity Technologies Asiaは、日本で昨年開催されたWebX2023実績などを踏まえ、アジア太平洋地域の国々がWeb3の未来を形作る上で主導権を握るとの考えを明らかにした。
12:47
米検察、FTXのサム前CEOに懲役40年以上を求刑
米検察当局は、22年11月に破綻した仮想通貨取引所FTXの前サム・バンクマン=フリードCEOに懲役40年から50年の判決をくだすよう裁判所に要請した。弁護側は緩和を求めている。
12:35
イーサリアム現物ETFが5月までに承認される確率は? 海外アナリスト6名が見解述べる
米各社のアナリストら6名は、暗号資産(仮想通貨)イーサリアム現物ETFが今年5月までに承認される見通しについて議論し見解を述べた。承認の上でのハードルなどについても意見している。
12:31
ビットコイン一時65000ドル割れも反発、ソラナは時価総額4位に浮上
暗号資産(仮想通貨)市場では週末にかけて急落していたビットコインが反発。前週比30%高のソラナ(SOL)はBNBを超え、時価総額4位に浮上した。
03/17 日曜日
11:00
週刊仮想通貨ニュース|ETHのDencunやBTCの7万ドル割れに高い関心
今週は仮想通貨イーサリアムの大型アップグレードDencunの完了、ビットコイン価格の急反落、米金融大手JPモルガンのビットコイン現物ETF分析に関する記事が最も関心を集めた。
03/16 土曜日
12:00
バイナンスのVC部門バイナンスラボ、グループから独立
大手仮想通貨取引所バイナンスのVC部門バイナンスラボが、今年初めにバイナンスグループから独立していたことが分かった。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
2024/03/22 18:30 ~ 21:00
東京 東京都江東区
2024/03/28 15:00 ~ 18:00
東京 東京日本橋タワーB2階
2024/04/06 ~ 2024/04/09
香港 香港コンベンション・アンド・エキシビション・センター3FG
重要指標
一覧
新着指標
一覧