ビットコイン相場と金融マーケット
10日の暗号資産(仮想通貨)市場。ビットコイン価格は、前日比+12.5%の406万円(37,000ドル)と急反騰した。
5月高値からの下落率やここ数週間の売り圧力の高まりに悲観論が台頭する中、23日の安値31,000ドルで反発して二番底を形成すると、断続的なショートカバーが発生。ここ数週間下落傾向にあった「米ニューヨーク時間」に大きく買われる形で、一時6,500ドル(約70万円幅)の大幅反発を果たした。一部米国勢が買い戻した可能性を示唆する。
一時的なリバウンドである可能性も否めず、依然として1BTC=30,000〜42,000ドルのレンジ内にはあることから底割れの予断を許さない状況にあるものの、ひとまずの急場は凌いだ格好だ。
ブルームバーグ・インテリジェンスのストラテジストであるマイク・マクグローン氏は、20年3月のコロナ・ショック水準まで下落したインジケーターを示しながら、急落時の3万ドル付近では過剰なまでの弱気感情が見られたと指摘。「潮目が変わった可能性がある」との見方を示した。
#Bitcoin Capitulation? $40,000 Appears More Likely Than $20,000 — The June 8 Bitcoin plunge and revisit of lower-end-range support around $30,000 had many of the earmarks of extreme bearish sentiment typical of more enduring bull-market bottoms. pic.twitter.com/mzaqs50Kjp
— Mike McGlone (@mikemcglone11) June 9, 2021
仮想通貨関連企業のDelphi Digitalも下落トレンドの弱まりを示唆した。根拠として、日足RSIにおける強気のダイバージェンスがある。
歴史的転換点を迎える
仮想通貨業界は日本時間21年6月9日15:20頃、中南米に位置するエルサルバドル共和国が「(同国で利用する米ドルと並ぶ)法定通貨の1つとして、ビットコインを採用する法案を議会で可決する」という前代未聞の事態を迎えた。議会で法案否決となる可能性も想定されたため、当初市場では慎重な見方もあったが、可決されたことにより90日後に法制化される見込みとなった。
速報
— CoinPost -仮想通貨情報サイト-【アプリ配信中】 (@coin_post) June 9, 2021
ビットコイン、エルサルバドルで正式な法定通貨に https://t.co/5ump99wBOh
法定通貨とは、日本円や米ドルなど国の法律によって認められた通貨のことを指す。これに伴い、ナジブ・ブケレ大統領は、活火山を使った地熱発電(再生可能エネルギー)でビットコインのボルケーノ・マイニングを行うため国営電力企業に指示を出した。同国の動きは非常に迅速であり、小国ならではの意思決定スピードの早さと入念な準備を示している。
I’ve just instructed the president of @LaGeoSV (our state-owned geothermal electric company), to put up a plan to offer facilities for #Bitcoin mining with very cheap, 100% clean, 100% renewable, 0 emissions energy from our volcanos 🌋
— Nayib Bukele 🇸🇻 (@nayibbukele) June 9, 2021
This is going to evolve fast! 🇸🇻 pic.twitter.com/1316DV4YwT
ビットコインを法定通貨化する法案は、米時間4日〜5日にかけて米マイアミで開催のビットコイン国際カンファレンス「Bitcoin 2021」で発表されたものだ。
関連:【全文】ビットコインの法定通貨検討、エルサルバドル大統領のスピーチを日本語で読む
発展途上国のエルサルバドルは、政情不安や経済難に長年悩まされており、金融インフラが貧弱なため、国民の約7割が「銀行口座」を持てていない。また、GDP(国内総生産)の多くを海外労働者の仕送りが占める中、国際送金問題のコスト面を解消するビットコインのレイヤー2・スケーリングソリューションである「Lighting Network(ライトニング・ネットワーク)」需要は極めて高く、一部地域では食料品の調達など私生活でも使われているとされる。
エルサルバドルの事例は、すでに同様の経済難や通貨のインフレ問題を抱える他国への影響も出始めており、国内外に大きな波紋を広げている。
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エルサルバドルのニュースに関連し、国内大手仮想通貨取引所bitFlyer創業者の加納裕三(@YuzoKano )氏は、「同国の規模からすると経済的なインパクトは限定的だろうが、国が法定通貨として認めたことは”ビットコインに信任を与える”という意味で極めて大きな意味を持つ。」「将来的には、全体のパイが広がることによって、ボラティリティが下がる(=通貨の安定性が高まる)ことが想定される。」などと指摘。
「フィアットとクリプトの世界がつながることで貿易が発展したり、大規模金融緩和のインフレ局面におけるオルタナティブ資産として、あるいは国の”準備金”としてビットコインを保有する必要があるかどうかなどの議論が促進される。金融インフラが脆弱な他国が追従し、さらに機関投資家が追従する可能性は十分考えられる」との見解を示した。
一方で、「外為法の外国通貨に該当する可能性が発生すると、事業者や利用者を含め暗号資産(仮想通貨)業界に大きな混乱を招きかねない」と懸念点も指摘しており、規制面や法的論点については、先進国を巻き込んだ新たな議論の必要性も生じている。
ハッシュレート一時急落
短期的な懸念材料は、やはり中国政府によるビットコインマイナー(採掘業者)に対する規制動向だろう。
中国大手マイニングプールAntPool、F2Pool、Poolin、BTC.comなどで9日、ハッシュレート(採掘速度)の大幅下落が確認された。
詳細:大手採掘プールのBTCハッシュレート急落、中国内2地域が事業禁止発表
中国では5月18日に、中国銀行業協会などが金融機関に対し、仮想通貨関連業務を禁ずる通知を再発令したほか、中国国務院の財務委員会が、ビットコインマイニング(採掘)及び取引活動の取り締まりを打ち出した。
大手マイナー含む中国事業者が、事業縮小及び撤退、保有ビットコインを処分せざるを得ない状況に追い込まれるリスクがある一方で、ハッシュレートの分散化・国際化が進めば、チャイナリスクの軽減にもつながることになるため、中・長期的にはポジティブと見る向きもある。