ビットコイン相場と金融マーケット
週明け5日の暗号資産(仮想通貨)市場。ビットコイン価格は、前日比-0.44%の34,500ドル(382万円)と前週末より回復した。
先週金曜日に発表された6月の米雇用統計が、市場予想を大幅に上回って着地。米ダウ平均株価は5月7日以来約2ヶ月ぶりの高値を更新した。先のFOMC後のような市場関係者のネガティブサプライズによる動揺は見られず、投資家心理が改善した。
BTCは36,000ドルの上値抵抗線を抜けられず。7時以降に1500ドルほど下落するなど、足場の脆さも確認された。29,000〜42,000ドルのレンジを上下どちらかにブレイクするまで、トレンドレスな値動きが続く公算は高いか。
カナダで承認されたビットコインETFの需要が増加しており、機関投資家は引き続き強気姿勢を示している。
Canadian #Bitcoin ETF have been ramping up its holdings the last two weeks.
— Lex Moskovski (@mskvsk) July 3, 2021
Demand is still here. pic.twitter.com/QKbLnyHzFA
難易度調整と影響
日本時間2021年7月3日15時34分に実行されたビットコインの難易度(ディフィカルティ)調整は、-27.94%の大幅易化で完了した。
金融市場が暴落した20年3月のコロナ・ショック直後で-15.95%、ビットコインキャッシュの敵対的ハードフォークに伴うハッシュ戦争で相場が大混乱に陥った18年12月でも-15.1%だった。これまでの過去ワースト1位は、11年10月に調整した-18.03%。
今回の平均ブロック生成時間は「13分53秒」と、難易度のリターゲティング基準を遥かに上回る水準に達していた。20年11月に記録した過去ワースト2位(-16.05%)の平均ブロック生成時間は「11分55秒」だったことからも、記録的な遅延と言って良いだろう。
中国のマイニング事業者締め付けに伴う、大手マイナーの稼働停止・海外移転により、マイニング情勢はここ1〜2ヶ月で大きく変化しており、難易度調整は3連続の易化となった。ビットコインは、1ブロック生成あたり「約10分」の承認スピードを維持するよう設計されており、2週間に1度の難易度調整は、供給過多によるインフレ抑止力としても働く。
秒間計算能力を示すハッシュレートは、前日比+18.52%の91.2EH/sまで急回復した。当面様子を見る必要はあるが、熾烈なマイニング競争にさらされるマイナー(採掘業者)にとって難易度の大幅易化は、再稼働及び新規参入の契機となった可能性が高い。
大幅易化調整でもハッシュレートが続落した場合は、マイナーの撤退に歯止めがかからないことを示唆するため、マイナー主導の保有BTC売りは、市場の警戒要因となり得たが、現時点でこのシナリオは回避できている。
個別銘柄の動向
イーサリアム価格が前週比+28.4%と上昇した。
下落局面で劣勢に立たされていたETH/BTCは、反発局面では再び優勢に転じ、ビットコインの前週比+10.7%と比較してもパフォーマンス改善が見て取れる。
🥳 On a day that saw history be made with #Ethereum surpassing #Bitcoin in daily active addresses for the first time, #altcoins came to play. $KSM, $COMP, and $ZIL were among many projects to make an imprint on the markets, while $BTC ranged around $34.5k. https://t.co/cwjGvrLLeX pic.twitter.com/3AFQ0MHbcT
— Santiment (@santimentfeed) June 29, 2021
背景にあるのは、大型アップデートとDeFi市場の再興だ。
前週比+100%をマークした分散型金融プロトコルのCompound(COMP)を筆頭に、Maker(MKR)が前週比+41.8%、Aave(AAVE)が前週比+50.5%、Uniswap(UNI)が前週比+30.3%と、DeFiセクターをけん引する主力銘柄がいずれも強い。
COMPは、機関投資家向けに米ドル(USDC)市場で利用できる固定金利(年利4%)サービスを提供する「Compound Treasury」の設立などが材料視された。
関連:Compound Labs、USDCの固定金利をフィンテック企業に提供
7月下旬のアクティベートが予定されるイーサリアムの大型アップデート「ロンドン」では5つのイーサリアム改善案(EIP)が実装されるが、最も関心を集めるのが「EIP-1559」である。
EIP-1559は、本質的に現在の料金オークションシステムを変更し、ブロックに含まれている最低入札額だけを全員が支払うようにする提案だ。これまでユーザー側が設定していたGas代(ネットワーク手数料)の基本料金が、イーサリアムプロトコルによってネットワーク負荷と需要に応じて動的に調整され、接続されるサードパーティ・プロトコルが、より安価、かつ正確なGas代を自動設定できるようになるという。
基本料金となるベースフィーのバーン(焼却)メカニズムが組み込まれることから、デフレーションによる希少価値上昇が期待される一方で、収益減の見込まれるマイナーの一部が不支持を表明するなど物議を醸す。
EthHubの創設者であるAnthonySassano氏は、テストネットでどの程度のETHが燃焼されているかを表示するツールを共有した。現時点で約9万ETH、2億ドル(220億円)相当がバーン(焼却)されている。
より高いGas代を支払うユーザー取引処理が優先される従来のオークション形式は、イーサリアム価格の高騰やDeFi(分散型金融)市場の発展に伴い、1取引あたりのGas代は、10倍以上もの高騰を招いた。トランザクション詰まりなどのスケーラビティー(拡張性)問題は一般ユーザーの利用を遠ざけ、dApps(分散型アプリケーション)やNFT(非代替性資産)市場などでイーサリアム経済圏の発展を妨げるなど、大きな支障をきたしていた。
詳細:イーサリアム「ロンドン」アップグレード、今週テストネット実装へ
アップデート「ロンドン」は、6月24日にテストネットRopstenで実装されており、7月7日のテストネットRinkebyを経て、今月下旬を目処にメインネットで展開される見込みとされる。