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デリバティブ取引への損益通算の適用を議論 金融庁が金融所得課税についての報告書を公開

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

金融所得課税を議論

金融庁は7日、「金融所得課税の一体化に関する研究会」論点整理と題するレポートを公表。5月より計3回にわたり行われた、損益通算の対象をデリバティブ取引まで拡大することに伴う課題などについての議論をまとめたものだ。デリバティブ取引に時価評価課税を導入することも検討されている。

なお、暗号資産(仮想通貨)の税制に関する言及は見られなかった。

会議には、明治大学専門職大学院法務研究科 岩﨑政明氏、経済評論家 山崎元氏、早稲田大学法学学術院教授 渡辺徹也氏など6名の有識者が参加。オブザーバーには、オブザーバーには、日本商品先物振興協会、GMOクリック証券、農林水産省、経済産業省などが名を連ねた。

デリバティブ取引

デリバティブ取引とは、先物取引やオプション取引など、通貨、株式、為替などの原資産と呼ばれる金融商品から派生して生まれた取引のこと。

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損益通算と時価評価課税について

本レポート内では、金融所得課税の一体化について以下のように説明されている。

金融所得課税の一体化とは、金融商品の課税について、他の所得と区分したうえで、課税所得の計算上、所得と損失とを合算(損益通算)することを認めるものである。

金融商品間の課税の公平性・中立性を図り、個人投資家にとって簡素で分かりやすい税制を実現することを通じて、投資環境を整備するとの観点から、これまで金融所得課税の一体化の対象範囲の拡大を順次進めてきた。

デリバティブ取引については、個人投資家の投資手段を広げ家計の資産形成に繋がることが期待されるが、上場株式などとは異なり、現状は損益通算が適用されていない現状を指摘。課税の公平性や中立性、わかりやすさといった観点で、各金融商品における課税のルールを統一するために、デリバティブ取引においても損益通算を適用することの是非が議論された。

デリバティブ取引には市場デリバティブ取引と店頭デリバティブ取引があるが、損益通算を適用する場合、前述の公平性などの観点からデリバティブ取引全体とすることが望ましいとしつつも、金融機関や税務当局の実務への影響などを考慮し、まずは「有価証券市場デリバティブ取引」に適用して段階的に対象を広げていく可能性に言及している。

この場合、有価証券市場デリバティブ取引とその他のデリバティブ取引間で損益通算できなくなるというデメリットが生じるが、個人投資家の多くが株式取引をメインに行っていることを考えると、「デリバティブ取引内の損益通算より上場株式等との損益通算のほうが、全体として得られるメリットが大きいのではないか」と説明している。

一方で、デリバティブ取引において、損益通算を利用した租税回避行為を懸念する見方もある。いわゆる「ストラドル取引」と呼ばれる、「売り」と「買い」を両建てし、損失のあるポジションのみ実現損として損益通算する取引方法についてだ。これにより課税の繰り延べが可能になることから、防止策として時価評価課税簿導入も議論された。

時価評価課税を導入すれば、実現損だけでなく含み益に対しても課税されることになるため、ストラドル取引による租税回避を防止できるとしている。これについては、「デリバティブ取引の時価評価を事前に届け出た者のみ時価評価課税(損益通算)を認めるということで十分ではないか」といった意見や、「個人番号を提出している者に限って、損益通算を認めてはどうか」との意見も出たという。

関連:金融庁、金融所得課税について見解を表明 仮想通貨税制は?

仮想通貨の損益通算は?

デリバティブ取引同様、現状、仮想通貨にも損益通算は認められていない。

また、上場株式などの取引を行っていて損失が出た場合は、損失を最大3年間繰越すことができ、翌年以降の利益から控除することができるが、仮想通貨取引で発生した損失は、翌年以降に繰り越すことができないという決まりもある。

こういった現行の仮想通貨税制について、疑問を呈している有識者も少なくないが、日本維新の会の音喜多駿議員もその一人だ。音喜多議員は過去に複数回にわたり国会で仮想通貨税制について政府に改善するよう求めている。

20年6月の参議院の財政金融委員会では、麻生金融担当大臣に対し、最大税率55%とされている雑所得に区分される税制をあらためて、国際水準並みの税制にするべく金融庁が旗振り役となって要望するべきと考えると説明。分離課税にすること、損益通算、繰越控除を認めること、仮想通貨間の媒介や少額決済を非課税化することなど、金融庁として、税制改正要望をするべきだと求めた。

21年3月に行われた参議院の財政金融員会では、租税の公平性という観点から、株式取引やFXなど他の金融商品先物取引等の決済と同様に、「税率20%の分離課税」とすべきと考えるとし、金融庁の中島淳一金融庁企画市場局長に見解を尋ねている。

両氏の回答は以下の通りであり、仮想通貨税制の変更には否定的だ。

──麻生大臣

1900兆円の個人金融資産のうち950兆円ほどが現金預金である中で、各家庭に貯金より投資を勧めているが、政府の政策として暗号資産の税制を改めることは、一般家庭に暗号資産を家庭に勧めることにつながり、これは現時点では難しいのではないか。

──中島淳一金融庁企画市場局長

暗号資産の取引にかかる所得は、株式等の売却益が分離課税とされていることと異なり、雑所得として総合課税の対象となっている。

株式等の売却益が分離課税となっているのは、「家計の資産形成を後押しする」という政策的要請を考慮したものと認識しており、こうしたことを踏まえると暗号資産を株式等と同列に論じることについては、慎重に検討する必要があると考えている。

関連:音喜多議員、金融庁や麻生大臣に仮想通貨税制や規制問題について質疑

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