流通上の問題が生じると懸念
米メガバンクJPモルガンが、エルサルバドルが法定通貨として暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)を採用することについて、通貨流通上の問題が生じる可能性があると指摘した。Bloombergが報道した。
JPモルガンのアナリストは「ビットコインの取引量は通常、1日あたり400億ドル(約4.4兆円)から500億ドル(約5.5兆円)を超えているが、そのほとんどが大手取引所の中で行われている」と述べている。
ビットコインの大部分はリクイディティ(流動性)の低い場所に預けられており、その90%以上が1年以上取引されておらず「取引量の少ないウォレットに保有されている割合がかなり高い」という。
一方で、JPモルガンはエルサルバドルにおける1日の決済活動は「最近のチェーン上のビットコイン取引量の約4%」、また「過去1年間にウォレット間で交換されたビットコイン総額の1%以上に相当するだろう」と分析。
予想される取引量の多さに対して、流動性が低いために、エルサルバドルで広く取引が行われるようになれば、ビットコインの「交換手段としての可能性を大きく制限する可能性がある」とする格好だ。
米ドルとの兼ね合いも問題
さらに、エルサルバドルが不安定だった自国通貨コロンの流通を停止して、2001年より米ドルを法定通貨として導入していることも事態の複雑さを増すという。エルサルバドルではビットコインの使用は任意となり、米ドルとビットコインが両方とも法定通貨として使われるシステムが採用される見込みだ。
エルサルバドルは、国外からの送金に大きく依存しており、世界銀行によると2020年には、エルサルバドルのGDPの約24%が送金によるものだった。そして多くの場合は米ドルで送金されていた。
エルサルバドル政府は、国営銀行に1億5,000万ドル(約165億円)を準備して、ビットコインとドルとの交換性を保証するとしている。
だがJPモルガンは、政府のプラットフォーム上でビットコインと米ドルの交換需要の不均衡が続いた場合には「エルサルバドル国内の米ドル流動性も損ない」、最終的に財政や国際収支のリスクを引き起こしかねないと指摘した。
世論調査では否定的意見も
またJPモルガンは、エルサルバドル人の中でも、ビットコインを法定通貨にすることに批判的な意見が多いとした調査結果にも言及している。
調査会社Disruptivaが7月1日から4日にかけてエルサルバドル全土で1,233人を対象として行った世論調査によると、回答者の約54%がビットコインの採用を「まったく正しくない」と見なし、24%が「正しい面も少しだけある」と答えていた。
ビットコインのボラティリティ(価格変動)は、世界的な市場により決定するために、エルサルバドルがコントロールできるものではなく、人々の日常的な決済手段として普及するかどうかは不透明な状況だ。
ビットコインは、9月初旬よりエルサルバドルの法定通貨になる予定である。