デジタル人民元による監視を懸念
複数の米上院議員は、2022年冬の北京オリンピック中に試運転が展開されるデジタル人民元(e-CNY)に警戒を高めており、米国のアスリートが使用することを禁止するよう求めた。特にデジタル通貨のシステムにより行動が監視されることを懸念しているという。
e-CNYは、中国人民銀行が発行する中央銀行デジタル通貨(CBDC)である。すでに中国の様々な都市で一般市民がショッピングなどに使用する実証実験が行われており、北京オリンピック中にも、競技場付近での無人販売カートに採用するなど新たな実験が実施される予定だ。
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CBDC(中央銀行デジタル通貨)
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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今回、三人の上院議員(Marsha Blackburn氏、Cynthia Lummis氏(ビットコイン推進派)、 Roger Wicker氏)が、米国オリンピック・パラリンピック委員会宛てに書簡を提出。同委員会に「北京オリンピック中にアメリカのアスリートがデジタル人民元を受け取ったり使用したりすることを禁止する」ことを要請した。また、次のように続けている。
デジタル人民元は、中国人民銀行によって完全にコントロールされており、追跡されている。中国政府はデジタル人民元に2014年から取り組んでいたが、最近その重要な機能を発表した。その中には、誰がどこで何を購入したかを正確に知ることができるというものも含まれている。
中国の共産党は、紙幣や硬貨のデジタル化が目的だと主張しているが、デジタル人民元は、中国の国民や中国を訪れる人々を大規模に監視するため使用される恐れがある。
さらに議員らは「中国のデジタル通貨がグローバルな商取引に組み込まれることは、プライバシーの面で多くの問題を抱えている」とも意見した。書簡の末尾では、この問題について「上院の商務・科学・運輸委員会が検討することを求める」としている。
e-CNYの匿名機能について、先週公開されたホワイトペーパーでは、「コントロールされた」匿名性を有して、「少額は匿名、多額は法に基づき追跡可能」という原則の下、少額決済は匿名で可能となるものの、多額の送金の際には、デジタル人民元が違法行為に使用されぬよう取引がマネーロンダリング防止およびテロ資金対策の要件に適合することを保証する必要がある、と記されている。
政府関係者は経済制裁への影響を注視か
Bloombergが以前報じたところによると、米バイデン政権はデジタル人民元を注視している。
関係筋によると、一部の米国政府関係者は、長期的にみて中国のCBDCが、世界の主要な基軸通貨というドルの立ち位置を揺るがす可能性があることを懸念。財務省、国務省、国防総省などの関係者は、デジタル人民元がおよぼす潜在的な影響力を把握しようとしているという。
また世界的な金融構造への直接的な影響よりは、むしろ米国が行う経済制裁への影響について警戒しているとも伝えられた。
現在、国際取引におけるドルの優位性が、米国に制裁対象となる国や組織のグローバルな金融システムへのアクセスを遮断する力を与えている。このため、デジタル人民元の台頭により、米国政府の経済制裁能力が低下することが懸念されている格好だ。
米国内では、CBDC開発の面で中国に遅れを取っていることを指摘する声も上がっている。これについて米連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長は4月に「いち早く発行することよりも、正しい方法で発行することが重要」だと説明した。また米ドルが世界で広く普及していることから、仮に中国がCBDCを正式に発行しても、それが国際的な覇権を取ることは難しいともコメントしている。
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