米議員ら、パウエル議長に書簡
暗号資産(仮想通貨)擁護派のトム・エマー議員をはじめとする米議員7名は28日、米FRB(連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長宛てに書簡を提出。米政府が発行を検討するCBDC(中銀デジタル通貨)や、仮想通貨規制の現状に関する見解を示すよう求めた。
書簡を提出したのは、超党派の米国連邦議員7名。ブロックチェーン党員集会に所属する共和党派トム・エマーやダレン・ソト議員のほか、民主党のロー・カナ議員やテッド・バッド議員らも署名した。カナ議員は、8月下旬にも仮想通貨関連の市場調査を任命する法案を提出した経緯がある。
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ブロックチェーン党員集会とは
第114回米国連邦議会で発足した超党派の党員グループ。ブロックチェーン・仮想通貨業界の将来性を評価し、黎明期のインターネットと同様に傍観主義的な規制のアプローチを推し進めている。
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書簡の内容
書簡では、米国政府によるデジタル・ドル(CBDC)発行に関する既存の仮想通貨規制や、米国におけるイノベーションへの悪影響に懸念を示し、以下の4点について見解を示すよう求め、回答期限は「2021年10月15日」までとしている。
- 米国の金融イノベーションにおける優位性を保つため、どのようにして関係省庁と連携するのか
- FRBは地方の連銀などとどのように連携し、仮想通貨カストディを望む銀行に規制の明確性を提示しているのか
- デジタル・ドルに関する研究成果の発表時期は。FRBは、民間の送金ネットワークを保全する重要性について言及する予定はあるのか
- CBDCは、仮想通貨やブロックチェーン技術の陳腐化につながると捉えているのか
その上で、「現在の米国は、SEC(証券取引委員会)やCFTC(商品先物取引委員会)、財務省傘下のFinCEN(金融犯罪捜査網)など、異なる省庁が規制しており、規制が不明確なまま取り締まりが先行している」と指摘。「このような状況が、イノベーションやブロックチェーン企業への雇用創出機会の流出につながりかねない」とした。
また、連邦政府が規制を明確にしていない影響により、ワイオミング州やテキサス州など、各州が独自に仮想通貨規制を導入しており、銀行の仮想通貨取り扱いも徐々に始まっている。
ただ、このような業務を行う場合、FRBの提供する決済レールへのアクセスも必要となる場合も想定されるため、どのような対応を取るのか明確化を求めた。
さらに、政府主導のCBDCという決済システムが仮に実現した場合、VisaやPayPalなど既存の民間決済・送金ネットワークへの影響をどのように捉えているか質問。また、当初の予定で2021年第3四半期に発表が予定されていたデジタル・ドルの研究成果の発表はいつになるのかを尋ねた。
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ボストン連邦準備銀行は、20年8月からマサチューセッツ工科大学(MIT)とデジタル・ドルに関する共同研究を進めてきた。当初の予定では、21年7月から9月(3Q)の間に2つのCBDCプロトタイプやコードを公開する計画があった。
さらに、パウエル議長の過去の発言について、今年7月にCBDCの導入理由として「仮想通貨やステーブルコインが不要になる」と述べていた点を疑問視。
今年3月に「ビットコインは、本質的にはドルではなく、ゴールド(金)の代替品である」と述べていた点を指摘し、ドル建てのCBDCが金の代わりにはならないことを考えると、これらの発言は矛盾しているのではないか?として、釈明を要求した。
また、CBDCとは違い、ブロックチェーン技術には分散化ID(DID)や分散化ファイル保管など決済手段以上の活用事例があるため、デジタル・ドルの導入が仮想通貨やブロックチェーン技術の陳腐化につながると考えるか伺った。
Emmer議員は、最後に分散化された仮想通貨やそのエコシステムが米国市民に金融包摂やイノベーション、雇用創出など、様々な機会を提供すると説明。FRBが関係省庁と連携して、米国内の仮想通貨イノベーションを支持することは必須であると呼びかけた。
米議員が米政府機関の官僚などに、書簡を介して仮想通貨やブロックチェーンに対する見解の詳しい説明を求めるのは今回が初めてではない。
7月には仮想通貨懐疑派のエリザベス・ウォーレン議員がSECのゲリー・ゲンスラー委員長宛てに書簡を提出。ウォーレン議員は米国の各政府機関が連携して仮想通貨規制を強めるべきだと呼びかけ、8月にはゲンスラー委員長が質問に回答する場面もあった。
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