マイニングの余熱を再利用
カナダのビットコイン(BTC)マイニング企業MintGreenは14日、ノースバンクーバー市が所有するエネルギー会社Lonsdale Energy Corporation(LEC)との提携を発表。暗号資産(仮想通貨)マイニングで生まれた余熱を、2022年から同市の暖房や産業に利用することを計画している。
通常ビットコインのマイニング施設では大量の熱が発生するため、採掘企業はこの熱を除去する換気や冷却のインフラに投資してきた。そうした中、MintGreenは、この熱を回収して第三者に販売する独自のソリューションを構築している。
MintGreenによると、「デジタルボイラー」と呼ばれるこの技術により、ビットコインのマイニングに使用される電力の96%以上を熱エネルギーとして回収し、地域社会の暖房や産業に利用できるという。
また、マイニングマシンは1年中稼働するため、ノースバンクーバー市の地域エネルギーシステムに、安定して熱エネルギーを供給できると見込まれている。
温室効果ガス削減に貢献
背景としてノースバンクーバー市は2019年、温室効果ガス削減目標を定めており、2040年までに排出量を2007年比で80%削減、2050年までに実質ゼロにすることを目指している。
LEC社のKarsten Veng CEOは、MintGreenとの提携について「革新的でコスト競争力のあるプロジェクト」であり、市の大胆な温室効果ガス削減目標を助けるものになるとコメント。
MintGreenのColin Sullivan CEOも「ビットコインは過剰にエネルギーを消費すると語られることが多いが、そうした話をくつがえすチャンスを得ることができた」と話している。「契約上、エネルギーの96%を熱として供給することが義務付けられているが、それ以上のことができると考えている」と意欲を示した。
MintGreenは3月、英大手仮想通貨投資企業CoinSharesの投資部門が主導するシード資金調達ラウンドの完了を発表していた。
この際、CoinShares社の企業戦略責任者Meltem Demirors氏は、次のように説明している。
当社は、ビットコインがエネルギーとインフラの分野に根本的な変化をもたらすと信じている。北米のビットコインマイニング産業の成長に伴って、MintGreenのような革新的な企業が、ビットコインマイニング、産業用発電、持続可能性の架け橋となるだろう。
シードラウンドとは
創業前または創業間もない企業が行う、初期段階の資金調達のこと。エンジェル投資家やシードアクセレーターなどから投資を受けることがほとんどで、日本では、数百万円~数千万円規模となることが多い。
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ウイスキー醸造や製塩にも利用
MintGreenはすでにバンクーバー島で、いくつかの地域企業とも共同プロジェクトを行っている。
ウイスキー醸造所Shelter Point Distilleryでは、ウイスキーの醸造や熟成プロセスに、ビットコインマイニングで発生した熱を利用。また、Vancouver Island Sea Saltとのパートナーシップでは、料理用のフレーク塩を製造するための海水蒸発タンクを加熱している。
MintGreenによると、同社のシステムは天然ガスと比較して、地域エネルギーシステムの二酸化炭素排出量を1メガワットあたり年間1,700トン削減できるという。