ナバホ族、マイニングに活路
米国先住民のナバホ族が、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)のマイニング(採掘)に活路を見出している。
ナバホ族は、クリストファー・コロンブスらが北米大陸を発見する以前から、現アメリカ大陸に在住していた先住民族の一つ。米国政府との対立などを経て、現在はナバホ・ネイションと呼ばれる、ユタ州やアリゾナ州などに隣接する準自治領に追いやられているとされる。
現在も、米政府や米経済圏との関係は複雑であり、2019年には大手銀行グループのウェルズ・ファーゴが略奪行為を行なったとして、勝訴したばかり。2021年3月時点の統計では、ナバホ民族の失業率は48%を記録しており、およそ3割が貧困層にある状況だという。
また、居留地内でも土地の所有権は米政府が保有しているため、石炭などの豊富な天然資源を有しているにも関わらず、ナバホ民族の人々は恩恵を受けられない実態がある。炭鉱などもナバホ・ネイション内には多くあり、近年では太陽光発電も開始していたが、消費電力を利用できない状況が続いていた。
そこで、カナダの採掘企業Westblockがナバホ・ネイションの領地内でビットコインマイニングをする契約を締結。今夏も採掘設備を拡大し、現在は約3,000台のマイニング機器が稼働している。
領地内の発電に携わるナバホ民族公益事業局(NTUA)のWalter Haase会長によれば、電力供給量の6割に達した太陽光発電のエネルギーが使用されない時期もあったと説明。ビットコイン・マイニングが行われたことで、余剰電力が無駄にならないとした。また、仮想通貨マイニングの影響で、環境負荷の高い炭鉱に代わり、再生可能エネルギーの導入がインセンティブ化されていると説明している。
さらに、一般的には雇用機会が少ない領域内でも貴重な雇用創出もメリットの一つとして挙げている。
ナバホ族
ナバホ族は米国に多大な貢献をしていた先住民の1つだ。第2次世界大戦には計400人のナバホがコードトーカーとして従軍。その他にもチョクトー(Choctaw)、コマンチ(Comanche)、セミノール(Seminole)などの先住民が日本やドイツとの戦争に参加し、自分たちの言葉を駆使して暗号通信に携わっていた。(AFPBB参照)
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加速する北米マイニング
今年5月に中国政府が仮想通貨・マイニングの全面禁止令を発令して以降、ビットコイン・ネットワークのハッシュレート(採掘速度)情勢は急速に変化している。
ケンブリッジ大学の最新統計では、中国の事業撤退・および海外移転の影響で、今年7月から米国がハッシュレート首位に立ったことが判明。(2021年8月時点)これまで安価な電力コストや地理的な優位性を用いた中国が率いてきたハッシュレートは、米国と主役を交代した。
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特に米テキサス州では、日本の約2倍に及ぶ広大な面積と安価な電力コストを活かし、国内外の企業によるマイニング拠点設立が相次ぐ。今週には、米マイニング大手Genesis社が新たなデータセンターの建設を発表したばかりだ。
政策面でも、同州のテッド・クルーズ上院議員(共和党)がテキサスの州都で開催された仮想通貨カンファレンスでビットコイン・マイニングの優位性を語っている。
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また、ビットコインの認知度も米国では上がりつつある。今週ニューヨーク市の市長選に当選したエリック・アダムズ氏やテネシー州のジャクソン市のScott Conger市長、マイアミのフランシス・スアレズ市長らが給与をビットコインで受け取る意向を示している。
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