FRB議長2期目に指名される
ホワイトハウスは22日、米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長に、現職のジェローム・パウエル氏を指名する方針を発表した。トランプ前政権が任命し、2018年2月に議長に就任したパウエル氏の任期は2022年2月まで。バイデン大統領の再任指名を上院が承認すれば、さらに4年間、米国の金融の舵取りがパウエル議長に委ねられる。
インフレ懸念が高まる米国で、パンデミック下の非常に困難な時期における同氏の経済管理の手腕とリーダーシップが評価されたようだ。
副議長にはFRB理事の一人であるラエル・ブレイナード氏が指名された。
バイデン大統領は声明で、パウエル議長およびブレイナード副議長が「インフレ率を低く抑え、物価を安定させ、また完全雇用を実現することに注力する」ことで、米国の経済がより強くなると確信していると述べた。
また、自身もFRB議長を務めた経歴を持つジャネット・イエレン財務長官は、今回の人事を称賛しており、新たなFRBトップチームが「最大雇用と物価安定の維持」というFRBの責務を果たすために、的確な判断を下すだろうとコメントした。
仮想通貨に対する見解
パウエル議長は9月30日に行われた下院金融サービス委員会の公聴会で、暗号資産(仮想通貨)を禁止するつもりはないと明言している。現行法ではFRBに仮想通貨を禁止する権限はない。しかし、FRBが議会に仮想通貨に関する提言を行うことは可能である点には、留意しておきたい。
一方、ステーブルコインや中央銀行デジタル通貨(CBDC)についての見解には、FRB内でも温度差があるようだ。
パウエル議長は、ステーブルコインには厳格な規制が必要だと重ねて言及している。
ステーブルコインはマネー・マーケット・ファンドのようなもので、銀行預金などと用途が酷似している。しかし、ある意味、規制の範囲外にあり、規制されることが望ましい。同じ活動には同じ規制が適用されるべきだ。
マネー・マーケット・ファンドとは
マネー・マーケット・ファンド(MMF)は、投資家の小口資金を集め、短期金融市場で運用する米国の投資信託のこと。具体的には米国の金融市場で流通している米国財務証券や譲渡可能定期預金証書、コマーシャル・ペーパーなどの小口資金(500〜1,000ドル程度)を短期証券で運用する。(コトバンク参照)
▶️仮想通貨用語集
FRBとしても、急速に普及しているステーブルコインがもたらすリスク、特に資金調達リスクについて、今月8日に金融安定性報告で警鐘を鳴らした。
しかしFRBのクリストファー・ウォーラー理事は17日、同報告書の判断の基盤となった金融市場作業部会(PWG)によるステーブルコイン規制の枠組みの一部に異議を唱えた。ウォーラー理事は、イノベーションには公平な競争の場が必要であるという立場から、ステーブルコインの発行者を従来型の銀行などに限定すべきという提案に反対した。
CBDC
パウエル議長はCBDCの導入に関しては一貫して、慎重な立場をとっている。9月にはデジタル・ ドルの必要性は認めているが、導入を急ぐ必要はないとの考えを明らかにした。
パブリックポリシーとテクノロジーの両面から、十分な情報に基づいてCBDCを形作るのが、私達の義務だと考えている。CBDCについて、いろいろな角度から研究する必要がある。そして、他のデジタル・イノベーションについては、コストやリスクを上回る明確なメリットがあるかが問題になる。
同月末、パウエル議長は上院銀行委員会の公聴会で、FRBは議会とデジタル・ドルについて幅広い協議を重ねることの重要性を指摘。その上で、最終的には議会が法案を作ることが最も望ましいとの考えを明らかにした。
一方、今回FRB副議長に指名されたラエル・ブレイナード氏は、2014年に現職であるFRB理事に就任。2016年に規制当局が仮想通貨に関与すべきだと発言した人物で、CBDCに対する積極的な姿勢で知られている。
ブレイナード理事はステーブルコインなど「デジタル化された民間通貨」が米国の決済システムに導入されていることに対して強い懸念を表明している点では、パウエル議長と同じ立場だといえる。
しかし、CBDCに関しては5月の仮想通貨イベント「Consensus 2021」で、一般消費者や企業がアクセス可能なCBDCを導入することで、カウンターパーティリスクや金融安定性に対するリスクを低減できると発表。CBDCの推進により熱心なようだ。
9月の全米ビジネス経済学会では、国際的な決済手段としてのCBDCの役割に言及し、基軸決済通貨としてのドルを持つ米国が「テーブルにつかないことは、想像できない」とコメントしていた。
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